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セカンドボールの回収:2022 J2 第27節 ツエーゲン金沢×アルビレックス新潟

首位を守るために一戦一戦確実に勝つという、サポーターにも伝わる試合前のプレッシャーだったが終わってみれば完勝という結果に。

この試合に限らずだが、完勝している時の新潟はとにかくセカンドボールを拾いまくって「ずっと俺達のターン」をやっているのでセカンドボールの回収数をカウントしてみた。

なお、ずっと俺達のターンを検証したいのでインターセプトもまとめてセカンドボール回収にカウントしている。

この試合で新潟が拾ったセカンドボール。矢印はボールを拾った時の体の向き。

手元集計で48本となり、この数字が他のチームと比べて多いのかどうかは分からないが、後半は金沢が攻撃的な対応をしてきたこともあり8割以上は前半での数字となる。

そうなると、前半に関してはほぼ1分に1本のペースでセカンドボールを回収している形になるので、圧倒的なセカンドボール回収率と言っても良いのではないかと思う。何よりも、多くの場合に前を向いてボールを回収できているというのが重要である。

良い距離感

では、どうしてここまでセカンドボールが回収できるのかということを紐解いていく必要があるのだが、これに関してはフォーメーション的な話はあまり関係なくて、いわゆる「選手の距離感が良い」という状態を試合を通じて維持できるようにしていると思われる。

誰かがボールにアタックしたら、必ずアタックした人の15m以内に複数人を配置しておきましょう、という感じで意識を合わしているのではないだろうかと考えている。

この15mという距離はプロ選手が転がるボールに反応してスプリントすれば1秒ちょっと辿り着ける距離で、かつ相手よりもボールに近い位置にいれば必ず拾えるという結果になる。

ボールにアタックする選手から15mを目安とする距離を皆で保つ新潟の守備。

前半12:45における自陣まで下がってきた鈴木孝司の落としを複数人でラグビーのように拾い続けて前進する一連のプレイは圧巻だったし、シュートまで繋げるだけではなく、その後のクリアボールも全て回収してずっと俺のターンを続けていた。

これを相手陣内高い位置で行ってショートカウンターで決め切るというのがリヴァプールに代表されるストーミング戦術になる訳だが、プロットを確認する限り新潟はハーフウェイラインから後方でボール奪取して自陣からビルドアップを再開するという方法を徹底しているし、そこでボールを回収できるようなプレスとブロックを併用していたりもする。

決め切るためではなく、ビルドアップを仕切り直しするためのセカンドボール回収というのが新潟の守備のスタイルとなる。

3点目のゴールなどは結果として相手のパスミスでしかないが、このようなパスミスを誘発させる守備が新潟の守備となり、一発で絡めて奪い切るというようりは、ボールに対してプレッシャーを掛けてこぼれ球を拾うという守備戦術が基本になってくる。

などなど、全体的な話はこのくらいにしておいて、個別プレイヤー毎にセカンドボール回収の特徴を確認してみよう。

藤原奏哉

新潟のセカンドボール回収王に俺はなる!という勢い。

相手ゴールキックの跳ね返しからタックルしたこぼれ球を即時回収して前進や藤原ロールでペナルティエリアの外にスタンバイしてボールを吸い寄せてからのアタックなど、攻守においてセカンドボールを回収する。

ほぼ出ずっぱりの藤原だが、過労死しないように気をつけてほしい。藤原のバックアップに不安が大きいのでハセタクはもっと頑張れ。

右サイド縦に広い範囲をカバーする藤原。シュートチャンス創出も。

堀米悠斗

左サイドのセカンドボール回収は俺に任せろ!なゴメス。

藤原同様に相手ゴールキックをキッチリ跳ね返したり、ルーズボールを前に向いた状態で拾ってそのまま攻撃へポジティブ・トランジションするのが素晴らしい。

相手にドリブル突破されそうになっても絶対に突破させないマンとして君臨するどころかボールを直接奪取してしまう。頼れる俺達のキャプテン。

常に前を向いてボールを回収するゴメス。ボールを直接奪い切るシーンも多い。

舞行龍ジェームズ

相手がアバウトに蹴飛ばしたボールをキッチリ収めて後ろに戻すのがマイケルのセカンドボール回収タスク。

結果的にクリアボールが裏ポンになってしまうような相手のロングキックもキッチリ対応してボールを渡さずビルドアップに繋げる。

チャンスと判断すれば回収したままドリブルで攻め上がることもあって、この試合ではストライカーか!と総ツッコミを受ける攻めあがりを見せていた。

最終ラインで回収してキッチリと繋げるマイケル。

島田譲

ピッチ中央のルーズボールを回収するのが島田の役割となる。

回収したあとは無理せず後ろに戻してやり直しという形に繋げて、ずっと俺達のターンを体現する。新潟の中心に陣取るリンクマン。本当に中央でボールを捌く姿が良く似合う。

ピッチ中央でボール回収して攻撃に繋げる繋げる島田。無理なら後方にボールを戻す。

高宇洋

圧倒的ボール回収王。ピッチの端から端までボール拾いすぎ。

とにかくボールを拾いまくるヤンだが、ヤンのセカンドボール回収の特徴はなんと言ってもペナルティエリア外での拾い方になる。

ヤンがここまで上がった状態というのは新潟全体が押し込んでいる状態なので、この位置でセカンドボールを回収し続けていれば理論上相手は何もできない。相手が蹴飛ばしたとしても後ろのマイケルが全部回収する。ずっと俺達のターンである。

圧倒的なボール回収能力のヤン。ゴール前で拾えばシュートチャンスも生まれる。

この試合では、都市伝説になりかけていたヤンのミドルシュートがセカンドボール回収から見事に炸裂したりして本当に理想通りの展開。人のいない場所に蹴るのは大事ですね!エクセレント!

ヤンはこの形をずっと続けられるようにシュート練習に励んでほしい。

セカンドボールをいかにして拾うか、拾うエリアはどこかというところに注目しながら観戦すると新潟の守備戦術への理解が深まるのではないでしょうか。

シーズンも終盤戦が見えてきたので、攻守ともに新潟スタイルで一戦一戦確実に勝ち点を積み重ねてもらいましょう。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。