見出し画像

楔のパス:2022 J2 第33節 いわてグルージャ盛岡×アルビレックス新潟

前半に押し込みながらもゴールが決まらずヤキモキした展開からのPK与えて頭抱えながら小島がビッグセーブして伊藤の芸術点満点のゴール。痺れる。

このゴールが生まれる流れもそうだが、この試合では楔と呼ばれるパスの打ち込みがゴール前で頻出していた印象が強かったので楔について解説する。

なお、この試合の戦術としては楔メインというよりは5バックを外から破壊するためにミドルを中心とした試合の組み立てとなっていた。ミドルを撃つための手段として楔を用いる形。

前線の選手に出す鋭い縦パス

楔とは、「ゴールを背負った前線の選手に出す鋭い縦パス」のことを言う。楔のパスが入ると観ている方はグッとゴールの期待値が上がる。体感xGが爆上がりする。俺はこれを感情xGと呼んでいる。今思いついた。

ゴールに近いか遠いかはあんまり関係なくて、中央レーンにスタンバってる前線の選手に出す鋭いパスなら楔と言って良いと思う。明確な定義はない。

楔という用語、これは日本独自のものらしく他の国には一言で表現する言葉が存在しないらしい。初めて知った。

それでは実際にこの試合で打ち込まれた楔の状況を確認してみよう。

盛岡戦における新潟の楔パス分布。斜めのパスを中央に差し込む形が多い。

当然のことではあるが楔にボールを打ち込んでもゴールに打ち込まなければ得点とはならない。したがって、楔はゴールを奪うための布石というプレイになる。

具体的にどのような選択肢が用意されているのかも確認していこう。

楔を打ち込んだ後の選択肢

楔を打ち込んでからのシュート

まずはゴール前中央に楔を打ち込んで振り向きシュートを狙う形。

屈強なフィジカルを持つセンターフォワードなんかはこの選択肢が多くなる。新潟なら谷口。

前半33:35のシーン。伊藤から松田に斜め楔を入れてからレイオフ(落としのパス)して伊藤がミドルを撃つが守備のブロックに弾かれる。弾かれたものの形としては理想的なアタッキングサードだった。

レイオフすると落としのパスを受けるレシーバーが助走をつけながら前を向いてボールを受けることができるので強烈なミドルを撃つことが可能になる。

楔を打ち込んでからレイオフしてミドルシュートを狙う。

前半41:40のシーン。伊藤から高木へ長距離の楔が入って高木は受けた後にターンしてシュートのイメージだったと思うが守備に阻まれてしまう。高木のターンで躱せることができれば残る守備はキーパーただ一人だったので感情xG爆上がりだった。

ワンタッチで叩いて守備外し

楔を入れて守備の意識をボールに集中させてから素早くワンタッチで叩いて守備を撹乱させるプレイ。新潟はこういうのが超得意だし観ているほうもワクワクする。アヤックス的なプレイ。

前半28:40のシーン、伊藤から松田に斜め楔を打ち込んで松田は素早く叩いてサイドに流れている谷口にボールを確保してもらう。実際には守備の寄せに耐えられず苦し紛れだったとは思うが、ゴール前で守備を意図的に動かすことができるのが楔のメリットでもある。

前半31:10にはデンから谷口に楔を入れるが守備の寄せが早くてターンできなかったので藤原へパスして谷口は即ランする。藤原が守備をうまくピン留めできれば谷口はボックス内にフリーで侵入できる。

楔からワンタッチで叩いて即ラン。フリーでボックス内に侵入できる。

同じ狙いとして前半38:20のシーン。 藤原から松田に長距離の楔を打ち込んで、受けた松田はワンタッチで叩いて裏に抜け出す動きをする。この形になれば裏抜け松田を狙うこともできるし高木が正面から直接ミドルを撃つこともできる。

楔を打ち込んで守備を集めてから裏抜けを狙う。ワンタッチパスのレシーバーが直接シュートも狙える。

前半35:15のシーンではゴメスから秋山に楔を打ち込んで、秋山はボディフェイントで守備を躱して中央にランしてきた藤原へラストパスを優しく供給して藤原ミドルを放ったり、後半52:35のシーンではデンを起点とした秋山から高木へのワンタッチ楔が素早く入って高木は更に素早くフリックして谷口の裏抜けに合わせるという超絶美技な複合プレイを魅せてくれたりもする。

高木に楔が入ってキープかターンか判断つかない間にフリックで谷口が裏抜けに走る。

そして、これら楔を用いた複合的なプレイの結晶が伊藤のスーペルゴラッソである。『このゴールが凄い!2022』にノミネート。何度でも見たい。

これら以外にも印象的なシーンを抜き出しておくと、

後半46:50のシーン。ゴメスから谷口にチャレンジングな斜め楔が入るも谷口が受けきれずロスト、なのだがセカンドボールを高木が回収してずっと俺たちのターン。

後半47:15のシーン。秋山が伊藤に向けて右アウトサイドでスパーン!とノールック楔。確かに伊藤はフリーだったが、あんなタイミングであんなキックでパスが飛んでくるとは誰も想像できないので結果受けきれず。秋山のパスが異次元すぎて困る。

後半55:30のシーン。デンから伊藤へ楔が入ると伊藤は走り込んできた島田にレイオフしたかたと思うと島田はワンタッチで伊藤に返して伊藤にボール保持のフリースペースを与える。とにかく一連の流れが美しかったシーン。さらにこの流れから秋山が高木に楔を打ち込んで走ってくる島田にレイオフする。スムーズすぎてヤバい。

後半56:15のシーン。秋山から高木に斜め楔が入ると高木ターンからの伊藤→高木→谷口のワンタッチ地獄で盛岡何もできず。こういう状況からゴールが決まれば動画再生バズること間違いなし。

などなど、楔をトリガーにしたゴール前がとにかく魅力的な新潟なので、この流れからゴール量産して昇格を決めましょう。

オープンチャットでのリアルタイム試合解説

試合開始前

予想外にスタメン弄ってきました。デンと両SBは怪我や出場停止がない限り最後まで固定するような気がします。

今日は伊藤が左サイドなので中央から崩す形になるでしょうか。

岩手の守備は前回ペンタゴンで一定の効果も出ていました。今回はどのような守備を敷いてくるかというのがまずはチェックポイントとなります。

ペンタゴンや442ブロックを伊藤と谷口の落ちる動きで揺さぶる流れとなりますでしょうか。

前回はとにかく岩手のモレラトが最前線で献身的に守備も攻撃もやってメチャクチャしんどい顔してたのが印象的で好感度MAXでしたので今日も楽しみにしています。

左サイドの伊藤は基本noteに書いた仕組みになります。中央ビルドアップに参加しつつ偽9番と入れ替わりで最前線に顔を出すという動きで守備ブロックを揺さぶるでしょうか。

そんなところをチェックポイントにすると面白いかもしれません。

とはいえ、皆さん今日見たいのは谷口の恩返し弾以外にないかと思いますので谷口に期待しましょう。

これは前回の岩手守備戦術です。ペンタゴンをシーズン通してやるチームは無いので、今回も同じことをやってくるかどうかというのを開始15分でチェックすることになります。

今日はリアルタイム観戦できませんが、勝ち点3を持ち帰ってくれることに期待します。

試合終了後

岩手は541でしたが全く統制が取れておらず守備戦術レスという状態でした。

541セットから近くにいるやつみんなでボールホルダーにアタックしろ!という作戦だったのかもしれませんが全く機能していません。小島のビッグセーブが多くありましたが負ける要素は無かったと思います。岩手はもう残留の思いだけで個人各自が体を張っている印象が強かったです。個人的には秋田監督の手腕に疑問符が付きました。岩手の奥山は若いですしプレイも派手なので観ていて楽しいですね。

新潟は前半のうちに1点でも決めて流れを掴み切って欲しかったですが決めきれず、PKセーブからの芸術点満点の伊藤のゴールです。これは痺れましたしDAZNの映像で新潟サポが全員飛び跳ねている光景が輝いていました。

攻撃の形としてはアタッキングサードで外からペナ前中央に斜め楔を打ってミドルということを多くやっていましたがなかなか決まらなかったですね。

この斜め楔でブロックを中央に密集させてから外にロブ上げて大外からサイドバックやサイドハーフを走らせるという海外リーグでよく見る形でのゴールとか決まると夢が膨らむので、実現しないかなぁなどと思いながら観ていました。

今日は仙台が負けたので勝ち点差10となり、誰もが昇格を疑わない状況となりましたが最後まで緊張感を持って一戦一戦勝ち点を積み重ねてほしいですね。

「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。