記事一覧
創作大賞2024の参加作品、なんとか書き上げることができました。読んでくださる皆様のスキや温かいコメントのおかげです。この場をお借りして御礼を言わせてください。ありがとうございました。noteで書いていて本当に良かったなと思います。
https://note.com/hiroshi_jiromaru/n/n4d75bbbee403
色とりどりのメシの種【第一話】 #創作大賞2024
【第一話】メシの種との出会い
腹が減ったら飯を食べる。至極当然のことだ。
その飯は誰が用意してくれるか。
未成年の子供の場合は、お母さん。お父さんが用意してくれる家も多いだろう。
でも、これは当たり前のことではないと知っている。
ウチの場合、ばあちゃんが飯を用意してくれていた。
俺達には両親がいない。生きているか死んでいるかも分からない。ある日、目の前からいなくなってしまったのだ。
だから、じ
海のピ #毎週ショートショートnote
暇だったので数年前まで海だったところに行ってみた。
ある日、そこは海じゃなくなったのだ。海水がなくなり、たこ焼き器の型みたいな巨大な穴がぽっかり空いて、そこから黒くて深い溝が遠くまで続いている。原因はよくわかっていないらしい。
その巨大な穴の奥底をじっと見つめていると、空飛ぶ何かがグングン目の前に迫ってきて、あっという間に目の前に降り立った。
全身白タイツで顔も真っ白。白粉を塗っているわけで
夏は夜が好き(140字)#シロクマ文芸部
夏は夜が来るとほっとする。風呂に入って冷房の効いた部屋で枝豆とビール。特に見たいわけじゃないけど、テレビをつけてスポーツ中継を流す。なんてことはない話をして、たまに笑う。〆に素麺か何か啜って眠る。
翌日、やっぱり朝が来る。もうギラギラしている。何をそんなに怒っているのか。暑いなあ。
※シロクマ文芸部に参加させていただきました
#シロクマ文芸部 #夏は夜 #思い浮かんだことを140字で #小説は
彦星誘拐 #毎週ショートショートnote
年に一度の七夕の前日。織姫の家の電話が鳴った。
「はい、もしもし」
「もしもし、織姫さんか?落ち着いて聞けよ?彦星を誘拐した」
「なんですって!」
「だから落ち着けって。明日、会いたいよな?俺の言うことを聞けば彦星は無事に返してやるよ」
「お金ならいくらでも払うから彦星を返して!」
「へへへ、そう来なくっちゃ。金額は……」
「なーんちゃって」
「え?」
「彦星とは年一で会ってるけ
一方通行風呂 #毎週ショートショートnote
「おーい、カヨ、帰ったぞ。風呂に入りてぇなぁ」
「もう。わざわざ私に言わなくていいから。勝手に入ってください」
「おお、珍しい!今日は返事してくれるんか。いつもは何も言ってくれないのに」
「何言ってるの。私は毎回返事してますよ、面倒くさいけど。私の返事に反応するアンタの方が珍しいわ、こっちからしたら」
「そっかそっか、悪かったな。
……久しぶりに一緒に入らないか?」
「何言ってるのよ!
天ぷら不眠 #毎週ショートショートnote
和食の職人になって20年。
たいていのものは上手く作れる。
だが、天ぷらだけは満足のいく出来にならない。
それを客に出している自分が許せない。
最近は眠れないほど悩むようになっていた。
尊敬する天ぷら職人に恥を忍んでコツを聞いてみた。
「どんなものでもそうだけどタイミングが大事だ」
そうなのだ。
天ぷらは油から上げるタイミングが重要なのだ。
同じ素材で作るなら、違いはそこしかないはずだ。
創作大賞2024の参加作品、なんとか書き上げることができました。読んでくださる皆様のスキや温かいコメントのおかげです。この場をお借りして御礼を言わせてください。ありがとうございました。noteで書いていて本当に良かったなと思います。
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色とりどりのメシの種【最終話】 #創作大賞2024
月曜日を憂鬱に思わない人なんていない。
そう思って生きてきたけど、目の前にいる男は月曜日が好きらしい。道理で話が合わないと思った。
「さて、サトシ君、いよいよだよ」
「何がですか?」
「最終決戦だ」
「は?」
月曜日の朝早くからやってきたと思ったら、マツダはよく分からないことを言い出した。
「マツダさん、ごめんなさい。何を言ってるか分かりません」
「そうだろうとも!僕もそうだった。あ
隔週警察 #毎週ショートショートnote
面倒くさい世の中になったもんだ。
警察になりたい奴が減っちまって、今じゃ誰もが隔週で警察になる法律ができちまった。
俺なんか大きな声では言えないが、人の弱みにつけ込んで儲けているんだよ。今週もいつもの調子で善良な市民を騙して儲けたんだけど、来週どのツラ下げて警察やればいいんだ?ククク。
自慢じゃないけど悪いことやってる奴は見たらすぐ分かるんだ。仲間も多いしな。でも、警察の週だからって仲間は逮捕
色とりどりのメシの種【第八話】 #創作大賞2024
紫陽花を見ると、あの日の事を思い出す。
動かなくなったサトシを抱っこ紐で背負い、泣き叫ぶユイを抱き抱えながら、森を抜けてタクシーを拾った。行き先を告げた覚えはないが、タクシーは実家に着いた。
玄関に青い紫陽花が飾ってあったことだけは覚えている。たぶん母さんに色々聞かれたと思うが、放心して何も言わなかったに違いない。気づいた時は朝ごはんの納豆をかき混ぜていた。
「母さん、サトシは?」
一番気に
友情の総重量 #毎週ショートショートnote
私、元々は友達が少なくて本ばっかり読んでいたんだけど、このままじゃ駄目だと思って高校入学と同時に変わったの。
友達100人作る勢いで社交的になった。
そしたら、だんだん身体が重くなってきたんだよね。
「ねえ、あの子とあんまり仲良くしないで。私達、友達でしょう」
う、うん。
「ねえ、修学旅行、どのコースにする?Bコース以外、考えられないよね?」
う、うん。
「ねえ、優子、もしかして小林君
色とりどりのメシの種【第七話】 #創作大賞2024
雨を聴く余裕もなく、とある神社の裏の森を僕達は歩いている。
僕がひとりで行くと言ったら君は嫌だと言った。
危険なところにひとりで行って勝手にいなくなるのは許せない。あなたがやろうとしていることを私は最後まで見届けたいの。この子も知っておくべきよ。だから私達も一緒に行く。
君はそう言って譲らなかった。
「この子はまだ二歳だよ?」とか言って反論することもできたけど、君を知る僕はそんな事を言っても
てるてる坊主のラブレター #毎週ショートショートnote
ねえ。
見えてる?
僕の後頭部。
ちゃんと見てよね。
ちょっとそそっかしくて気まぐれだけど、とっても良い子なんだ。
初めて作ったんだって、てるてる坊主。
僕が第一号なんだよ、この子にとっての。
光栄だな。
みんな作ってくれなくなるじゃない?
なんだろね、僕達の力を信じなくなっていくのかな、大人になると。
僕達がちゃんと仕事をすれば晴れるのにね。
仕事というか君とこうやって通信するってことなんだ