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色とりどりのメシの種【第三話】 #創作大賞2024
「風薫る、いい季節になったね」
買い出しの帰り道、ユイが言った。
「そうだねって、兄ちゃんは言えないよ。ユイ、お前いくつなんだよ」
「知らないの?十二歳。小学六年生です」
「いや、知ってるけど。発言が風流過ぎるんだよ」
「いろいろあったもの。経験が人を作るのよ」
「そうですか」
束の間の、穏やかな時間。
生活が落ち着いたら祖父母の家を出て、ユイと二人、穏やかに暮らしたい。
今の望みは
放課後ランプ #毎週ショートショートnote
高校に進学したけど毎日つまらない。昼休みに図書館に行って面白そうな本を探すのが最近の唯一の楽しみ。
今日は自然と一冊の本が目に入った。
『放課後ランプ』
手に取って中を見るとタイトル以外は白紙で、最後のページにこう書いてあった。
チャイムが鳴ったので本を借りて図書館を出た。
ランプのある所って……。
午後の授業は何も頭に入らなかった。
放課後、理科室に行ってみたけど誰もいなかった。な
色とりどりのメシの種【第二話】 #創作大賞2024
子供の日って子供が働く日だったっけ。
むなしい自問自答。
俺は一緒に行きたいというユイに留守番を命じて、ひとりで放火魔の両親の家に向かった。
少し緊張してインターフォンを押す。
「はーい」
「あ、すみません、『何でもヘルプ屋マツダ』です」
「あ、はーい」
優しそうな女の人の声で安心した。
玄関のドアが開いて60代くらいの女性が出てきた。
マツダに言われた通り、挨拶をする。
「こんにちは
色とりどりのメシの種【第一話】 #創作大賞2024
【第一話】メシの種との出会い
腹が減ったら飯を食べる。至極当然のことだ。
その飯は誰が用意してくれるか。
未成年の子供の場合は、お母さん。お父さんが用意してくれる家も多いだろう。
でも、これは当たり前のことではないと知っている。
ウチの場合、ばあちゃんが飯を用意してくれていた。
俺達には両親がいない。生きているか死んでいるかも分からない。ある日、目の前からいなくなってしまったのだ。
だから、じ
創作大賞2024にチャレンジしてみようと思います。心折れて2万字に到達できないかもしれませんが、温かい目で見守っていただけると幸いです🙇♂️
トラネキサム酸笑顔 #毎週ショートショートnote
「オイ、ゴホン、オマエ、ゴホゴホ、起キロ」
え?誰?
「オイ、ゴホン、起キロッテバ」
嫌だ、怖い。寝た振りしよう。
「寝タ振リヲシテモ無駄ダ。俺ハ宇宙人ダゾ」
ガーン。
風邪ひいてるならマスクしてよ。
宇宙の風邪ってヤバそう。
「宇宙ノ風邪デハナイ。地球ノ風邪ダ」
本当に?
「本当ダ。何トカシロ」
病院行け。
「病院?テ言ウカ、ソロソロ直接話セ」
仕方なく起き上がると、いかに
春ギター #毎週ショートショートnote
♪
これが
これこそが
俺がお前に
見せたかった
春の風景
♪
「どう?」
曲が出来るといつも最初にミー子に聴いてもらう。
「うーん、なんだろ、全然春って感じがしないのよね……あ、わかった!ギターの音が春っぽくないのよ。日本海が目の前に広がってる感じ。寒い」
「春の音を出せばいいんだな」
「駅前にギター教室できてたよ。行ってみたら」
そう言ってミー子がビラを渡してきた。
「春ギター教室
花冷え全員集合 #毎週ショートショートnote
「お父さん、今日なんか寒いね。桜も咲いたのに」
三女の夏子が帰ってきた。
高校生にもなれば父親となんか話したくもないだろうに、毎日何かしら声をかけてくれる。
「花冷えっていうらしいぞ。風邪引くなよ」
「何それ、知らない」
「俺も今日知ったよ」
「なーんだ」
呼び鈴が鳴った。
玄関のドアを開けると、長男の春生が立っていた。今年の春から大学生で一人暮らしをしている。
「なんだ、何しに帰っ
深煎り入学式 #毎週ショートショートnote
ちょっと遠くの国の、ちょっと昔の話。
珈琲好きの三兄弟がいた。
どのくらい好きかと言うと、珈琲の神様がご褒美をあげたくなるほどだった。
「お前たち、明日は入学式なんだろ?俺が思い出に残る入学式にしてやるよ」
「やったー!どんなやつ?」
一番下のオチョイが神様に聞いた。
「お前は小さいから浅煎りだ」
オチョイが入学式に行くと、かわいい女の子に出会って甘酸っぱい恋をした。
次は次男のチチョイ