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迷える手/ナチョスの短編

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短編小説『迷える手』をまとめました。 天才で変態な整体師のお話です。フィクションです。
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#小説

迷える手 Ep.4/ナチョスの短編

迷える手 Ep.4/ナチョスの短編

来るパーティー当日。

想像した光景が目の前に広がると思うと胸騒ぎがした。

パーティーに潜入する時はそれなりに綺麗な格好をした方が馴染みやすいが、それでは意味がなかった。

いつも家で着ている、高校時代の体育着の紺のジャージに身を包んで彼は家を出た。

電車を乗り継ぎ、パーティー会場に行く道中、彼は人々の視線を感じるかと思っていたが、思っていたよりも東京は変な奴に慣れていた。

パーティー会場は

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迷える手 Ep.3/ナチョスの短編

迷える手 Ep.3/ナチョスの短編

大学を卒業した男は、バイト先にそのまま整体師として働くことになった。

内向的な性格は性格は変わらず、お客からは無愛想で評判はイマイチだった。

医院長にもクレームが入ることはないでもなかったが、腕は文句のつけようがなかったので目を瞑っていた。

実際、無駄なコミュニケーションがなくていいという声もあった。

彼の欲求は仕事で満たされるはずだった。

しかし、彼の中で大学の時の一度きりの犯行の快感

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迷える手 Ep.2/ナチョスの短編

迷える手 Ep.2/ナチョスの短編

ある日男がキャンパスを歩いていると、どうしても治したい、背骨が曲がった女子学生を見つけてしまった。

俺が施術してやれるなら、彼女を苦しみから救ってやれるのに。

しかし、彼と彼女に面識はなく、さらに陰気な性格になっていた彼には声をかける勇気はなかった。

第一、どう声をかけるというのだ。

「背骨が曲がっているから、横になれるところに行きませんか」

「背中の痛み、辛くないですか」

「すいませ

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迷える手 Ep.1/ナチョスの短編

迷える手 Ep.1/ナチョスの短編

これは実在していたのか定かではない奇妙な整体師の男の話。

彼は小学生の頃、サッカー部に所属していた。

当時は無邪気にもプロサッカー選手になるという夢を持っていた。

しかし運動神経よりも周囲の目を見る方に長けていた彼は、すぐさまサッカー選手はおろかスタメンで活躍するという目標も自分には無理だと理解した。 

動物というものは生存本能的に場所を探し求めるもので、彼は選手ではないところで自分の場所

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