ヒロミ@医療系ウエブライター

歯科医師ライセンスを持つ医療系ウェブライター。得意分野はクチコミサイト、いじめ、医療、…

ヒロミ@医療系ウエブライター

歯科医師ライセンスを持つ医療系ウェブライター。得意分野はクチコミサイト、いじめ、医療、介護、ペットですが、そろそろ古巣の歯科のことも書いていく予定です。 アスペルガー傾向があり、居心地の良い仕事がなかなか見つからないのが目下の悩みです。

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新学期は雷鳴とともに/最後の不登校

教育現場での私は、常にいじめられっ子だった。 自分の何がどうで、いじめの対象になっていたかなんて、まったく心当たりがない。そもそも、いじめられっ子のほとんどが、自分がいじめを受ける理由なんて知らないし、身に覚えもないと思う。 それでも高校生になったある日を境に、その理由がなんとなくわかるようになってきた。いや、謎が解けたと表現した方が正しい。 わたしは他の子と違っていた。 成績は上位の方だったし、善悪の分別や礼節はきちんと身についていたはずだ。容姿だって普通だと思う。だっ

    • ゴースト・リンク①

      あらすじ 富士見医大の学生、白倉東子は落水事故をきっかけに、自らが自在に幽体離脱できる体質であること知る。そんな時、親友の麻里絵から深刻なストーカー被害を相談されるが、それは生身の人間が薬剤の力で幽霊化した「赤い悪霊」の仕業なのだった。幽霊化を促す薬は、亡き父親が命懸けで開発した麻酔薬の一種でもあった。幽体離脱して親友を苦しめる悪霊を追い詰める東子だったが、やがて国家機関を巻き込んだ薬の争奪戦に翻弄されていく。  第一章  臨死体験 大学病院に幽霊が出るという噂は、数年前か

      • ゴースト・リンク③

        ○ 第三章  輪廻の予感 おまえたちが大人になったら、必ず帰ってくるからね──  パパが死の間際に残した言葉は、今でも耳に焼きついています。きっと、まだ幼かった弟を気づかった、罪のない嘘だったんだと思います。本当はもっと、家族になにかを伝えたかったのかもしれません。だけど、それっきりでした。すぐに大勢の先生がやってきて脳死の判定が下ると、臓器提供への同意書と引き換えに、パパはどこかへと運ばれていきました。医学部の教授ともなれば、脳死移植への理解を率先して示さなきゃならない、

        • ゴースト・リンク④

          ○ 第四章  堕ちた霊能者 ハチローがどういう経緯でやって来たのか、本当のところはよく知りませんでした。  パパが亡くなって一年が過ぎた、ある日曜の朝のことです。玄関から誰かの気配が届いていました。ドアを開けると、庭先でママがビーグルの仔犬を抱いて立っていたんです。 「どうしたの?」  って私が聞いたら、 「いいじゃない、飼ってあげようよ」  と、久しぶりに見る笑顔でママは言いました。新しく家族に迎えた仔犬が、彼女を癒してくれていたことは間違いありません。だからママが、“ハチ

        • 固定された記事

        新学期は雷鳴とともに/最後の不登校

          ゴースト・リンク⑤

          ○ 第五章  犠牲者たち 両親の馴れ初めがどんなだったか、誰だって少しくらいは興味があると思います。だけどママに尋ねても、笑ってごまかされていました。それほどパパとママは、自分たちの出会いについては口をつぐむことが多かったんです。  ある日ママは、祭壇の遺影に向かって問いかけていました。 「出会った時のあなたは、赤い色をしていなかった」  ドアの陰で聞き耳を立ててたわたしには、ぜんぜん意味がわかりませんでした。 「私と出会わなかったら、あなたは……」  たぶん泣いていたんだと

          ゴースト・リンク⑥

          ○ 第六章  汚 名 パパは横領の発覚を苦にして、附属病院の屋上から身を投げたことになっています。だから私も普通じゃあない目で見られることがあります。朝日がパパを毛嫌いするようになったのは、きっと周囲から何か言われたせいなんでしょう。  だけど最近、わたしは信じられるようになりました。パパが最期の力を振り絞ってこの世に残した、“おまえたちが大人になったら、パパは必ず帰ってくるからね”という言葉を。だって、石戸さんは断言してくれたんです。姿は見えないけど、パパはいまだに私たち家

          ゴースト・リンク⑦

          ○ 第七章  闇に棲む者 附属病院で目撃された幽霊は、比嘉先生の魂なんかじゃないと思います。  彼女の心は、病室とも呼べない狭い空間に閉じ込められていますし、幽霊の目撃談を語る人は皆、一様に言うんだそうです。“赤い色の幽霊を見た”と。  わたし思うんです。附属病院、いえ、艇庫を含めた富士見大の施設、そのすべてに、なにか特別な存在がうろついているんじゃないのか、それは死者の魂なんかではなく、何者かの肉体を抜け出した邪な精神じゃないのかって。  いったい誰が、なんのために?  そ

          ゴースト・リンク②

          ○ 第二章  悪 霊 幼い頃、パパとママが“新型の麻酔薬”という言葉をしきりと口にしていたのを覚えています。だけど、パパがなにを研究していたのか、どうして大学病院の屋上から転落したのか、ママは涙でさえぎって教えてくれません。一周忌のあと、ママは人前では泣かなくなりましたけど、私雨が尋ねるたびに悲しそうな目で見つめ返します。そう、“赤い色をした霊”のことをはじめて告げた時と同じ眼差しで。                    1  夜が怖かった。  眠るたびに意識が身体を抜け

          ゴースト・リンク⑧

          ○ 第八章  果たされた約束 霊前のお供え物って、無駄だと思っていました。  この世に身体のない人が、どうやって味わうというのでしょう。だけどママは、パパの月命日には、大好きだったティラミスを欠かしたことがありません。 「どうして?」  ってわたしか訊いたら、ママは必ず、 「今にきっとわかるわよ」  と言って、お供え物のティラミスを、私と朝日に振る舞うのです。  甘くほろ苦い味が幸せな気分にさせてくれるのは確かです。たぶんパパの想い出には、グランメがよく作ってくれた、うんと素

          食えない歯医者の食えないボンビー話

          殆ど知られていない歯科勤務医の現実 歯医者という仕事につきまとうイメージは、高級車を乗り回し、夜は繁華街の端から端までを網羅するように遊び、毎日ように懐石料理やフレンチに舌鼓を打つ。また一方では、患者に平気で痛みを与え、病気の快癒を質にとり、挙げ句は高額な治療費を請求する、そんなネガなイメージをもたれる方も多いだろう。だから歯医者で治療して家に帰ってくると、 「今日は歯を抜かれた」とか「麻酔の注射を打たれた」というふうに被害者意識が芽生えるのかもしれない。願わくば、歯を抜いて

          食えない歯医者の食えないボンビー話

          良い歯医者は看板でわかる?

          人心はイメージしだいなんだよ  春や秋になると自動車メーカー各社から、一斉に新型のクルマがリリースされます。そのイメージキャラクターに起用されるイケメンは、ちょっと前までは福山雅治さん、佐藤浩市さん、最近ではキムタクや菅田将暉さんといったところでしょうか。いいですよねえ彼ら、才能だけでメシが食える……。えっ、なんの才能? と首を傾げたあなた、才能とは生まれつき備わっている能力のこと。ですからイケメン、美女に生まれたというだけで才能をひとつ持っているということ。うらやましい…

          良い歯医者は看板でわかる?

          イケメン、美人で売る歯医者は危ない?

          看板にウソ偽りを書いてはいけないどうして先生は、看板に『痛くない』とか、『○○治療なら当診療所にお任せ!』なんて書かないの?」  と、定期健診にいらした男性患者に真顔で尋ねられたことがあります。彼が言うには、看板に電話番号と診療科目、受付時間だけでは勿体ないというわけですな。たしかにわたくし、痛みを取り除くということについては頑張っているほうだと思う。そして治療に伴う痛みも極力ちいさくすべく努力しているつもり。彼も、その恩恵に浴しているからこそ定期健診に応じるし、わたくしに

          イケメン、美人で売る歯医者は危ない?

          歯科医師会々員であることは良い歯医者の条件なのか?

          弁護士会所属イコール、良心的な弁護士? ここ数年、テレビやラジオを通じて、過払い金という言葉を耳にしない日はありません。遡ること約5年、当時、テレビに頻出していたタレント弁護士のI氏が、グレーゾーン金利で儲けすぎた消費者金融へ乗り込んで、半ば恫喝気味にお金を取り返す姿を、まるで正義の味方であるかのように見ていたのだけれど、あの行動は純粋にカネ儲けだったんだなということに今さらながらに気づきました。でなければ今、「過払い金のご相談は○○法律事務所へ!」なんてセールストークがわ

          歯科医師会々員であることは良い歯医者の条件なのか?

          わたしにエロティックなノリを教えてくれたサザン

           はじめて買ったCDはサザンオールスターズの『ステレオ太陽族』でした。このアルバムが発売されたのは、わたしがCDを購入する数年前。アナログ盤のリメイクというわけです。当時はCDの黎明期で、まだまだCDプレーヤーも高価で図体もビデオデッキくらいの大きさがありました。そんなわけで、裕福でも音楽好きでもない私の家にCDプレーヤーがやってくるのはずっとあとのことでした。 プレーヤーもないのにCDを買った理由 このお題 #はじめて買ったCDに参加している方の多くも書かれていますが、最

          わたしにエロティックなノリを教えてくれたサザン

          別居以上、離婚未満

          「きみが美味そうにビールを飲むのを眺めるのが好きなんだ」  と、別居中の夫は言った。  彼は酒がまったく飲めない。  下戸なんてもんじゃなく、店頭にあるアルコール消毒薬でさえ、量を誤れば腕の内側に赤みがさす。  だから最初にグラスをかち合わせる際は、わたしが生ビール、彼がノンアルコールビールというのがルーチンだった。  少し前までは、夫が最初に口に運ぶ液体は、真冬でもアイス烏龍茶だったが、それがノンアルビールに変っただけで、ずいぶんと乾杯の雰囲気が高まるのが面白かったのだけれ