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良い歯医者は看板でわかる?

人心はイメージしだいなんだよ

 春や秋になると自動車メーカー各社から、一斉に新型のクルマがリリースされます。そのイメージキャラクターに起用されるイケメンは、ちょっと前までは福山雅治さん、佐藤浩市さん、最近ではキムタクや菅田将暉さんといったところでしょうか。いいですよねえ彼ら、才能だけでメシが食える……。えっ、なんの才能? と首を傾げたあなた、才能とは生まれつき備わっている能力のこと。ですからイケメン、美女に生まれたというだけで才能をひとつ持っているということ。うらやましい……。

先生が美男美女にこしたことはないのだが……

このイメージ戦略、歯医者では特に露骨であるような気がいたします。ホームページでは院長とは何の関係もない美男美女がにっこり微笑んでいるなんてのは珍しくない。多いのは医院の看板にキャラクターが描いてあるもの。擬人化された奥歯が歯ブラシ片手にVサイン、という芸のないのがもっとも多く、動物でしたらワニ、サメ、シャチといったいかにもバリバリ噛めるイメージのもの、ネコやウサギのような優しさと可愛さを狙ったものなど様々ですが、その診療所の実態を看板が反映しているなんてことは滅多にございません。クルマはどうなんだろう? 福山さん、プリウスにマジで乗っているのかな?
前の記事で悪い看板の例を挙げました。それについては、こちらを参照されてください

では良い歯医者の看板はどういったものか……。これがなかなか難しい。こんなことが書いてあったら良医、という絶対条件がないのです。

とにかく数が多くてデカイのは論外!、派手で奇をてらったもの、甘いセールストークが並ぶのはダメ!!!

裏を返せば良医の看板は地味、質素、平凡ということになるのかな。だけどね、行列のできるラーメン屋なんかこれですよ。歯医者のよりはずっとデカイかもしれないけど、決して派手じゃあないし数も少ない。ポッと出てすぐ消えていく店のとは、やはり一味違います。ラーメン屋とひとくちに言っても醤油、味噌、塩、とんこつとベースの味は様々ですし、博多とんこつ系なのか札幌みそ系、はたまた喜多方醤油系なんて地方色もある。厚切りチャーシューが売りの店、九条ネギのラーメンがイチオシ、激辛ならウチにまかせろ、つけ麺が得意だとか、看板のどこかにアピールが見られる場合が多いのではないでしょうか。わたくし、味噌も醤油も塩もあるし、チャーシュー麺や激辛麺もあるんだよ、というなんでも屋的な店が繁盛している例を知りません。逆に、ウチはつけ麺だとか、ウチはとんこつ醤油一本のように少ないメニューに注力した店に行列ができている気がするのです。

行列のできるラーメン屋は宣伝しない

 これが歯医者なら、さしずめ歯科、小児歯科、矯正歯科、口腔外科がメニューになります。そしてなんと、この四つは標榜科目としてすべて掲げてヨロシイことに法律で定められております。そう、得意不得意にかかわらず歯医者の免許があったらすべてメニューとして掲げていいんです。眼科や整形外科なんかと違って認定制度もありません。だから情けないことに、患者をたくさん集めたいから、とりあえずなんでも書いておけ的な先生も少なくない。おかげで小児歯科の標榜がある歯医者に行ったのに「泣いたから今日はおしまい」とか「ちいさい虫歯だから、痛くなってから来て」なんて言われた例をたびたび耳にします。また、数回のセミナーを受講しただけで矯正歯科を名乗っている先生もいる。インプラントもしかり。数回のセミナー受講で、いとも簡単に修了証を発行してしまう無責任な組織、それをなんのためらいもなく利用する浅はかな歯医者がいるから恐ろしい。また、難しい抜歯や、顎関節症、舌や粘膜の病気を扱ったこともないのに口腔外科を掲げても法的にはなんら問題ありません。
 でもね、「小児歯科でも口腔外科でもなんでもやる」と看板に掲げている歯医者は「味噌でもとんこつでもなんでもあるラーメン屋」と似たりなんですよ。
 わたくし、少なくとも口腔外科と小児歯科の両方が得意だ、という先生を知りません。旭川醤油と博多とんこつを両方出しているラーメン屋みたいなものだと思ってくれていい……かな? ちょっと例えが悪いかも(笑)。
 泣き叫ぶ乳幼児をコントロールする自信がなかったら「小児歯科」と掲げるべきではないし、見た目だけででなく噛み合わせまでキッチリ構築する自信がなければ「矯正歯科」を名乗るべきではない。これには豊富な知識と経験がなければできないこと。逆手に取るならば「小児歯科」、「矯正歯科」と単独で掲げている診療所は、その分野に特化している、治療に自信があると考えて間違いございません。まあ「小児」と書いてあるのに入れ歯をなんとかしようと思う患者さんはいないでしょうけどね。

しかし、専門医としての広告は可能。得意、不得意を判断するなら「専門医」の表記に注目!

上記の他に、歯周病、歯科麻酔、歯科放射線の専門医であることは広告してもよいことになっております。そのためには、中立的な期間で厳然たる審査、承認を経てのことになりますが。(下記リンク参照)

 稀に小児歯科と口腔外科の両方が掲げてあって、しかもマトモというところがあります。この場合は奥さん先生が小児歯科を、ダンナのほうが口腔外科といった具合に複数の歯医者がいる診療所、こういうケースがありますので事前にご確認を(だけど、大勢の歯医者がいてチェーン展開している診療所は要注意かも。これ、後日書きます)。あ、それと悪い看板の項でも書きましたけど

「一般歯科」という標榜科目はありえませんからね。

書くなら「歯科」が正しいわけですけど、「一般」を付け加えたって“平凡”、“並”のイメージを補強するだけです。だいいち法律違反だし。
 それと、一番NGなのが「審美歯科」、「インプラント歯科」、「総合歯科」。これが書いてある歯医者には行かないほうがよろしいかと思います。後者2つは検討中ですが、ま、永久に認められないでしょうな。そしてなにより法律違反です。良い歯医者ならば例え審美をウリにしていなくても保険外診療の歯の色等に関してはとことんつきあってくれると思います。但し保険診療の歯の色に関しては使用可能な材料が決まっているので、多少色が合わなくてもご容赦ください。
 だけどなあ「入れ歯専門」くらいは法律で認めてくれてもいいと思うんだけどなあ。
(つづく)

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