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2017年とにかく聞いた曲 5曲 ( その4 ) - 小さな世界の大爆発

こんにちは!

ついに最後です!
いやー、2017年聞きまくった音楽について好きなことを書けて本当に楽しかった
最後の曲はこれです!

BGM : Christian Fennesz / Alma 712

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僕がこの曲に惹かれた理由は、この曲から感じる「小さな大爆発」です。
是非この曲を聴いて体感してみてください!

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まずは曲を再生して、曲の中にいくつ音があるか数えてみてください。

・"フワァーン" という小さなシンセのような音
・"ポォーン" っていう木琴みたいな音

・ギターのコード
・ギターに続く "シャリャーン" っていう音

・時々ある "ブォンブォンブォン" っていう低音
・水滴の音や後半の時計の音 (環境音)

それぞれ見つけられましたか?
僕が見落としている音があるかもしれませんが、大体これくらいの音で、この曲全体が構成されています。

ビートもない、たったこれだけ。

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多くの曲には、曲が一番盛り上がるピークがあります。

例えば EDM 音楽なんかすごく分かりですよね。
"ドゥードゥードゥードゥー" ってなった後の「キター!!」っていう感じです。
(文字で書くと笑っちゃうくらい伝わらないですね)

この Alma712 の中で、ほぼ最初から最後まで入っているこのギターの音は、柔らかくコード全体を弾いたり、一本一本の弦をつまんで弾いたり(アルペジオと言います)、激しく全体を弾いたりします。

この曲は、この強弱だけで、曲の盛り上がりを表現しています。

この曲にピークは、ギターのコードを "ジャアアーン" って弾いただけなんです。
( 3:08 くらいのところです )

たったこれだけで。
たったギターの弾き方ひとつだけで、この曲は抑揚を表現しているんです。
この小さな変化が、この世界の全域を変えているんです。

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生活している中で、何かをきっかけに目の前の物事の見え方がガラッと変わる瞬間があります。

簡単に言うと "閃き" になってしまうかも知れないんだけど、もっと息を呑むような、物事の真意が理解できたような感覚です。
恐らく、皆さんも体験したことがあるんじゃないかと思います。

この曲は、あの小さなピークで、僕にこの感覚を与えてくれました。

この感覚を僕は "カタルシス" だと思っていて、5年前くらい、iPod を使っていた僕は「ボタンひとつでカタルシス」という言葉を携帯にメモしていました。

しかし、どうやらこれが誤用らしいと気づきます。

ネットで "カタルシス" という言葉を検索してみると、言葉の意味を説明しているページが沢山出てきます。

それらを見ていると、どうやら "カタルシス" という言葉は
「小説などフィクションの作品の中に自分の生活を繋ぎ合わせて問題点などを認識する (そして浄化する)」
という行為らしいです。

なんだか難しいです。
でも、僕が感じている感覚と違うということは分かります。

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じゃあ僕のあの体験は、言葉では何と表現するのかな?

先月、モントリオールにいた時に仲が良かったカナディアンの友達が仕事でロンドンに来ていて、久しぶりの再会を果たしました。

部屋でピザを食べている時、僕は彼女にニューヨークで体験したある話をしました。

それは僕がニューヨークで極貧旅行をしていた時です。

朝からほぼ休まず 10時間くらいニューヨークの街を歩きまわっていて、疲れがピークに達した時、凄く小さな出来事をきっかけに、僕に閃光のような閃きが走ったんです。

その閃きの後、僕はニューヨークの街のど真ん中で号泣してしまいました。
(この時僕はニューヨークに $16 で三日滞在するという偉業を達成しました。この旅についてもまた書く機会があれば良いなと思います)

この話をした時に彼女は "epiphany" という単語を教えてくれました。

彼女が帰った後、ephiphanyという言葉の意味を改めて辞書で調べてみます。
それは、まさに僕の経験を言葉にしたような言葉です。

"epiphany" という言葉の意味は
「日常のなんでもないことや単純なことをきっかけに、現実の核心に気づくような感覚」
らしいです。

「凄いな、世の中にはこんな現象まで説明する言葉があるのか 」と感心しました。

それでも、この言葉も、僕が Christian Fennesz の音楽を聞いて感じる感覚とは違う気がします。
僕は、今もこの感覚にぴったりくる言葉を探しています。

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曲の説明を少しします。
この曲は "Music for a dying star" というコンピレーションアルバム ( いろんなアーティストが参加しているCD ) に収録されている曲です。

"Music for a dying star" は、タイトルの通り「消えゆく星に捧げる音楽」 をテーマにしたアルバムです。

この中で Christian Fennesz の Alma 712 はアルバムのラストを飾っています。

僕はこの曲が、このアルバムの意義を本当に素晴らしく体現していると感じてます。
 

曲全体で出現するギターの弦を弾く音、その音を追うように、直後にチラチラした音が左右に鳴って散らばって消えていく。

まさしく "消えゆく星" を音で表現していると思いませんか?
聴き込めば聴き込むほど「まさに」という感じで、何度聞いても「すげぇな」って感じます。

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Christian Fennesz を僕が初めて聞いたのは "Fennesz + Sakamoto" 名義で作られた、坂本龍一さんとの共作 "Flumina" です。


その次に縁があったのは去年のクリスマスでした。

去年のクリスマス、 僕は仕事終わりに自分へのクリスマスプレゼントとして、CD を確か、16枚くらい買って帰ったんです。
新宿のディスクユニオンです。

沢山 CD を買った帰りの電車では、いつも手で袋の中の CD の枚数を探って、買った CD を一枚一枚思い出すというゲームをします。

ここ数年あまり CD にお金を掛けていなかったので物凄く久しぶりに沢山の CD を抱えて帰るこの感じに「やっぱいいなー」って感じました。

その中の一枚が、イギリスのミュージシャン David Sylvian と Christian Fennesz の共作です。

タイトルは "There is a light that enters houses with no other house in sight"
邦題は「いくつかの家に射し込む光」です。


このアルバムは一曲 / 64 分で、詩の朗読で展開されるアルバムです。

この CD はそこまで聞き込めていないので感想は書きません。
日本版アマゾンにある "行ってしまいました。" っていうレビューが「くすっ」とくる内容で大好きです。

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Christian Fennesz は僕にとって、ミュージシャンというよりも "音の研究者" という印象です。

Alma 712 では、「あのギターと "シャラーン" という音は繋がっているのか?」と僕に疑問を持たせてくれました。
時々、こうやって音の構造なんかに意識を向けてみると、新たな発見があったりします。
おすすめです!

( もうなんか頭使う音楽ばかりに疲れて今は Touché Amoré っていうハードコアバンドを聞いています。超かっこいい )

Apple Music
Christian Fennesz / Alma 712
fennesz + sakamoto / Flumina
David Sylvian / There is a light that enters houses with no other house in sight
Touché Amoré / Rapture

Amazon
V.A. / Music for a dying star
David Sylvian / There is a light that enters houses with no other house in sight

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今回5曲のレビューを書いて本当に楽しかったです!
実際に言葉に起こすって、すごく大切だなと感じました。
しかもそれをこうしてネット上に書くことで、誰かの発見になり得るかもしれないなんて
あの時の僕の感動や発見や安らぎを誰かと共有できるなんんて!
こんなに嬉しいことはありません!

是非気になった曲があったら実際に音楽を聞いてみてください!
また好きな音楽について書く機会があれば嬉しいです!
ありがとうございました!

2017年とにかく聞いた曲 5曲
その1- 躍動感溢れるピアノの連なり ( haruka nakamura / nowhere, SIN )
その2- 35分 音だけで再現する "銀河鉄道の夜" の世界 ( Kashiwa Daisuke / Stella )
その3- L と R 2つのチャンネルで創造する音の近づき ( Penguin cafe orchestra / Perpetuum mobile )
その4- 小さな世界の大爆発 ( Christian Fennesz / Alma 712 )

しかし坂本龍一さんはすごい。
坂本龍一さんの曲を、一曲も選んだことがないのに何度も坂本龍一さんの名前が出てきた。
坂本龍一さんは本当にずっとアクティブに活動しているんだと実感しました。
今年発売された坂本龍一さんのアルバム "Async" も素晴らしかったです。

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