冬のホント、贈りもの。
師走。
師たちは、我々の前を走っています。
でも、ときどき転ぶかもしれない。
師たちだって、おんなじ人間ですわ。
あるいは、ずっと走り続けられるのかもしれない。
ちょっと前まで「読書の秋」でしたが、「冬も読書するよね」ということで、先人や先輩の言葉、というか作品を紹介してみます。私個人がパッと思いついたやつを。
テーマは、冬です。
冬の言葉、ウィンターソング。
【三好達治選『萩原朔太郎詩集』(岩波文庫)】
誰か助けてください!
というパワーワードでおなじみなのは、セカチュー(『世界の中心で愛を叫ぶ』)の主人公、サクちゃん。
そのサクちゃんの由来が、萩原朔太郎です。
朔太郎は、『月に吠える』という、やけにカッコイイ(あるいは気取ってるっぽい)タイトルの詩集によって、文語定型詩から口語自由詩を「当たり前」にしちゃった人ですな。
簡単に言うと、イノベーションってことですわ。
で、『月に吠える』には、「竹」という作品がありまして、その内容は、冬に触れています。ちょっと引用してみますねー。
ますぐなるもの地面に生え、
するどき青きもの地面に生え、
凍れる冬をつらぬきて、
「竹が地面から生えている」ということを伝えているわけですが、ものすごくリズミカルです。そして、「凍れる冬」も貫いてしまう竹。
おっと。
画像の右側の本は、岩波文庫の『萩原朔太郎詩集』ですが、左側の本は、朔太郎作品の英訳版です。
『月に吠える』を英訳すると、
Howling at the Moon
ってなる。
英語にしても、なんかカッコイイじゃん。
誰か助けてください!
I wish forever!
【穂村弘『ラインマーカーズ』(小学館)】
歌人・穂村弘さんも、朔太郎のようにイノベーター。
短歌の世界についてそんなに詳しくないですが、短歌の世界では、”穂村弘さん以前・穂村弘さん以後”みたいになるような、イノベーションを起こした方のはずです。ちなみに私個人は、
■新しいスタイルの短歌
■独自の方法論による批評
■おもろエッセイ作る人
みたいな印象の方ですかね。賢さとおもろさと狂気が、混ざっている感じ。あと、若者世代っぽい価値観を持ってそうな方でもあります。
で、自選ベスト歌集となっている『ラインマーカーズ』から、穂村弘さんの冬の作品を引用してみましょう。
体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ
口に体温計を加えているから、「雪だ」が「ゆひら」になるっていう。
1990年代の作品のため、その頃は、体温計を口にくわえて体温を測っていたわけです。
今は、体温計って、おでこに「ピッ」ってやるだけ。
雪には騒がないけど、テクノロジーの進化には、驚きっぱなしの筆者です。
あ、穂村弘さんは、今も活躍されていますよー。
【岩崎俊一『幸福を見つめるコピー』東急エージェンシー】
コピーライターの岩崎俊一さんの本です。
岩崎俊一さんは2014年に亡くなっていますが、業界では、有名な方だと思います。
この『幸福を見つめるコピー』は、
人は弱い生きものである
という箴言からスタートし、ご自身の作ったキャッチコピーとエッセイで彩られています。
で、岩崎俊一さんの冬に関するコピーと言えば、これやね。引用します。
年賀状は、贈り物だと思う。
今となれば、年始の挨拶である「あけおめ」「ことよろ」は、LINEとかSNSとかで済ませられますが、かつては年賀状を送ったりすることが一般的で、その年賀状が「贈り物」だと伝えている。
つまり、「ただの年始の挨拶」である年賀状に、別の価値を与えている、っていうね。
このコピーもまた、イノベーションかもしれない。
「ただの年始の挨拶」を、「贈り物=贅沢な何か」に価値転換しているから。
そういえば、ひさしくプレゼント交換とかやってないな。
ここ数年、社会的に色々とあったものね。人と接するのNG、みたいな事象。
「誰か助けてください!」とか思ったり、体温計をおでこにピッてしたり、色々とあったわ。
冬は、冬だからこそ、プレゼントを贈ろう。
寒いから、ポカポカしたものが欲しいもんよ。
(了)
※トップ画像をのぞき、記事内の画像は、すべての筆者による撮影です。あと全部、私物です。
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