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短編小説「甘くて、苦くて、」
「ありがとうございました」
お客様を見送って、軽く店頭を整える。
「じゃあ、あがろうか」
店長に声をかけられ、もうそんな時間かとちらりと時計に目を向ける。
「お疲れ様でした」
バックヤードに入り、仕事着を脱ぐ。今日も一日なんとなく頑張ったなと思い、椅子に腰掛ける。ここでギリギリまで電車を待つか、駅のホームに行くか数秒悩んだ後、結局電車を逃してしまうのが嫌で、駅のホームで待つことにす
300字SS「咲いた、咲いた、」
「あ!!」
大変だ、大変だ。
写真、撮らなきゃ。タブレット、持ってこなきゃ。
早く早くと思うのに、足がもつれて階段で転びそうになる。
いつもは動画を見ているけど、今日は違う。だって今日は……。
「ねぇ、何してるの?」
「おかーさん! 見て、綺麗でしょ!!」
画面いっぱいに映る朝顔に、お母さんは「ほんとだね」と笑ってぼくの頭を撫でた。朝顔も撫でた。
嬉しくなって、何枚も何枚も写真を撮った