人生7周目らしい私と、30周目くらいの彼。


会うと不思議な気持ちになる人がいる。

彼とは昔共通の友人を通じて知り合った。
10才以上年上の彼は、映像やデザインの仕事をしていて、音楽でもプレイヤーとして活躍する、字面だけで書くととてもキラキラした世界の人だ。

でも実際は、キラキラしたオーラはいい意味であまりなく、見かけると気軽に話しかけてくれたり、ずっと昔から知っている関係の深い友人のようにふいっと芯をついた話をふってきたりする。

真剣な話をしても圧迫感のような重い雰囲気はなく、心地よく流れる音楽のようにゆらゆらと揺れるような空気感を纏う、ちょっと不思議で気さくな人だった。


数年前に一度、一緒に仕事をしたことがある。
私が無理を承知でお願いしたため、そういうのはやっていないと言われたり、破格の依頼料金がかかったりするかなとビクビクしながらダメ元で聞いたところ、彼は二つ返事で「面白そうじゃん、やろう。」といつもの調子で言ってくれた。

おそらくその仕事をきっかけにして、友人の知り合いくらいだった彼とは少し距離が近くなった。


彼からはいつも不意に連絡が来たりする。
「今度こんなことをやるんだけど、好きそうだったら見においでよ」とか、「そういえばだいぶ前に立ち話してた時に教えてくれた地元の町の名前、なんていうんだっけ?」とか。
勉強になる話から、なぜそれを?というようななんの脈絡もない話が突然飛んでくる。


先日も、たまたま連絡が来て食事に行くことになった。
お互いが向かうのにちょうどよいと思われた場所で落ち合い、駅の前で待ち合わせをする。
彼は小さなワゴンのような車を停め、駅前で待っていた。
彼の移動手段は基本的に車だ。お酒も一切飲まない。

偶然どこかで遭遇して、ついでに食事に行ったことはあったが食事をするために会ったのは初めてだ。
どこか適当な店に入って、各々好きなものを頼む。
なんだかちょっと緊張したのも手伝って(というのを言い訳に)私は「お酒、飲んでもいいですか?」と聞いた。「俺は飲まないけど。どうぞどうぞ。」と言う彼。


彼の最近の仕事の話を聞いたり、私の近況の話をしたり。
色々な人生経験があり、知識も豊富な彼と話すのはとても面白い。
そうかと思うと、いきなり「コンビニのポプラはどこに本社があって第一号店は何県だと思う?」なんて謎のクイズが始まったり、話の流れでたまたま出てきた私の両親の話をテーマに、2人がどうやって出会ったかを勝手に想像したでたらめなエピソードを聞かされたり。
訳のわからない話をしていても、なんだか不思議と楽しい。

そしてある程度食べ終わったかなという頃、彼は唐突に言った。


「よし、じゃあこれからスタジオ入ろう。」

「え?今からですか?2人で?」

「そう、行こ。」

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