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【風呂酒日和133-2】 鳥八

【風呂酒日和(フロサケびより)】
どこかで銭湯を見つけると、つい寄り道したくなる。
銭湯から出ると、つい一杯飲みたくなる。
そんな私がふらりと立ち寄った、心と体とお腹を満たす、銭湯と居酒屋をまとめたマガジン。


来た道とは違う方の大きな通りに出て、駅を目指す。

えっあれ何だろう。富士急ハイランドのミニチュアみたいなのが屋上についているビルを発見。

富士急行東京本社ビルだってさ。なーるほど。
あぁ、ジェットコースター乗りたいなぁ。(いくつになっても絶叫系の乗り物大好き。絶叫はしないんだけど)

横の緑道っぽいところを歩いていると小さなお店がいくつか並ぶ一角を発見。ふむむ、気になるけどこじんまりとした感じでちょっとローカル感強め。ロビールなしの今日のコンディションだと勇気が出なくて、そのまま駅の方に進む。


マップで目星をつけていた鳥八に到着。うんうん、よさそう。カラカラと扉を開ける。おっ結構混んでるぞ。座れるかな...?
厨房には白い調理服を着た板さん的な店員さんが2名。奥からさらに年配の白髪で眼鏡をかけたおじさんが現れた。

「1人です」と人差し指のジェスチャーとともに言うと、私と同じくらいの小さな声と同じジェスチャーで「1人?じゃここへ」とカウンターを案内してくれる。

最後のカウンター席をゲット。よかった。
左隣のスーツのおじさんがさりげなく椅子を左に寄せ、無言でカウンターの下にあったメニューを出してくれる。

ありがとうございます。無言でぺこり。
ふふふ、いい感じな気がするぞ〜。
私に搭載されている「ホッとする居酒屋さん」レーダーが好反応を示している。


店内はカウンター席が6つと奥にテーブル席が1つ。入口手前に階段があったから2階席もあるっぽい。店員さん3人もいるしね。
先ほど席に促してくれた人がホールをまとめ役兼店長さんという感じだろうか。

さて何食べようかな。
カウンターの上にはガラスのショーケースがあり串打ちされたお肉や野菜などが入っている。鳥八だからね、ここはやっぱり1本くらいは焼き鳥を食べるのが礼儀かしら。でもそのほかのメニューも美味しそう。そして私好み。
綺麗な手書きの文字で書かれたお品書きにはサラダや冷やしトマト、梅きゅうもろきゅうなどの野菜系から肉じゃが、煮込み、じゃがバター、茄子キムチ炒めなどのほっこりおかず系、揚げ物、焼き魚、お造りもある。いいねぇ。

店長さんがおしぼりとお通しを持ってきてくれたタイミングで瓶ビールを注文。ここはサッポロクラシックラガー。お通しは豆もやしのナムルだ。
引き続きメニューを眺めながら早速ビールをぐび、お通しぱく。
うむ、ピリ辛でしょっぱすっぱくてうま。


よし、今日のチョイス、決まりました。
心の中でそう思った直後、ちょうどいいタイミングで店長さんがすいっと席にやって来た。

「お決まりですか?」

すごい、エスパー?熟練の勘?

「えーとねぎまを1本と、カレイの煮付け、あとほうれん草のおひたし下さい」

「はい、ねぎまは塩、タレは?」

「タレで!」

「はい」

「酒は天下の大平山」と書かれた紺色のはっぴ(と言うのだろうか...)を着た店長さん。かっこいい。私のロマンスグレー好きが発動する。
細身で言葉数が少なくて、所作がスマートというかがちゃがちゃしてないおじさま、素敵。

うしろのテーブルにはおばちゃん6人組。ご近所さんかな、だいぶ盛り上がっていてとても楽しそうだ。
右隣は外国人と男性と日本人の女性のカップル。日本語と英語半々くらいで話しているのだが、私にはなかなか聞き取りにくい発音。どこの英語だろう。

「はい、おひたし。あったかいうちにどうぞ」

「あ、ありがとうございます」

ほうれん草が到着。
ん?今あったかいうちにって言ってた...?見た目は普通のおひたしだ。
ゆでたてとかそういうこと?疑問に思いながらもぱくり。こ、これは…!
めっちゃ普通に冷たい。だよね?おひたしだもんね?
確かに「あったかいうちに」と言った気がしたが聞き間違いだったのだろうかと、とんでもない勘違いに1人笑いそうになる。
店長さん、じゃあさっきなんて言ったんだろう?それとも本当にあったかいうちにと言っていて「はい、お会計300万円ね」みたいな感じのジョークだったのだろうか。あんなにスーンとした表情でそんなことできるとしたら相当なやり手である。(なんの?)
まぁ、やっぱり私の聞き間違いかな。冷たかったけど、もちろん美味しいほうれん草。


おや、隣のカップルがなんだかちょっと揉め始めた。

「でもin Australiaもそうでしょ?」

「Noo!ナ〜ンデー!」

あぁなるほど、オーストラリアか。
オージーイングリッシュ、確かに難しい。昔オーストラリアに行った時、まるで聞き取れなくて「えぇーこれ英語だよね?どうしよう全然わからない...!」とオロオロしたのが懐かしい。
argumentという言葉が聞こえて来たりしばらく言い合っていたのだが、最後に「...opportunity?」と言って2人が笑い出した。
どんな機会があったのかはわからぬが、とりあえず仲直りしたようでよかった。
というか大きめの声で議論していただけで、そもそもケンカではなかったのかもしれない。

「はい、お待たせしました。ねぎまね」

やきとりが来た。わーい!速攻でぱくり。
うむ、よい。見た目も味もまさに想像していた通りのねぎまである。続いて間髪入れずにカレイの煮付けも到着。仕事が早い。
あっという間に頼んだものが揃った。

じゃあカレイもいただきます。
箸を入れるとほろほろに柔らかくなった身がすっと取れる。
うーん、しみうま〜。ほっとする煮付けの味。大きな生姜も嬉しいね。


順調に食べ飲み進めて、ビールを飲み終わった。おつまみはまだもうちょっとある。もう1本?いや、ハイボール?
ちまちま系おつまみを追加するのもいいけど、焼きおにぎり…食べたいかも…。

いやいやでもでも。どの方向性にしてもちょうどいいおつまみが多すぎて悩む。
...いや、よし。今日はあとハイボール1杯で、今あるおつまみでちまちまいこう。最近また食べすぎ呑みすぎで体が疲れてる気がするんだよな。目が食べたくて体に必要な量以上に食べてしまっているというか。
空腹のあまりスピーディで食べすぎて満腹に気づく前に次のものを頼んじゃって結果的に頑張って食べるハメになるという日も多い。
多分、これを食べ終わったら腹八分目くらい。ハイボールでもう十分になるはずだ。


そう思ってハイボールを注文し、煮付けとおひたしを交互に食べる。うん、いいね、この感じ。
自分の食べるスピードや量、ちょうどいい具合を覚えておこう。
多分これを守ってお酒を飲む分には一生楽しく飲める気がする。(結論:一生飲みたい)

ざわざわと賑やかな店内、おばちゃんたちの笑い声、カップルの討論、無言で焼き鳥を食べるおじさん、そして同じく無言でその場を楽しむ私。うん、いいわぁ。なんかこの店の一部になれてる気がする。
1人で引っかけるのもだいぶ板についてきたんじゃなかろうか。

風呂酒日和も130回を超えた。ということは、130回以上一人で居酒屋さんに入ったということだ。
お酒は好きだけどお店で一人飲みなんてほとんどしたことがなかったし最初はびくびくしてたけど、人間100回以上やれば何事も慣れるもんだなぁ。
いやはや、実に厄介で幸せな趣味を見つけてしまったぜ。

【鳥八】
住所: 〒151-0061 東京都渋谷区初台1-37-15
電話: 03-3379-0884
アクセス: 京王新線「初台」駅下車、徒歩1分


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