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「 僕らは生きている。 」エピソード1





































大抵の人間たちは僕を見て
「気持ち悪い」と言う。

それは僕がこんな姿だから
だろうか…












人間とは違って手足が沢山あるし
色も緑色で、角があって
ムクムクしている。


だから「気持ち悪い」と
人間たちは僕を見て言うんだ。


僕に心がないと思っているからか、
平気で傷つく言葉を言う


でもさ、生き物にはみんな心があるんだ。


僕の悲しいことはね


気持ちを伝えることが
できないことなんだ。



表情だって少ないし


涙だって流せない

言葉も話すことができない


だから人間に僕の気持ちなんて
一生解ってもらえないんだ。


ある人間は僕を平気で踏みつぶす


でも、僕だって生きているから
傷つけられれば体液がでる


痛いんだ。

心も体も痛いんだ。


傷ついて
それでも生きようともがく姿を
人間たちはまた「気持ち悪い」と僕に言う。




生きるって悲しい。






そんなことを思っていたある日のこと。




僕に近づいて来る人間がいた


また僕を傷つけにきたのか
人間なんていなくなってしまえばいいのに…


そう思った瞬間
その人間は僕を見てこう言った。






「わぁ〜可愛いオオムラサキの幼虫さん!」






その人間は僕を見て微笑み
優しく僕を掴んで掌に乗せた



初めての人間の掌。



こんなにも温かいのか
こんなにも柔らかいのか……。



その人間は僕を虫かごに入れて
育て始めた

毎日僕を見ては微笑んでくれた
大切にしてくれた


「 あぁ…このままずっと…
この人間の側にいたいなぁ…、ずっと…。 」


僕はこの気持ちを
人間に伝えられないことがとても悲しかった



「 僕は初めて人間の君を好きになったよ

僕は言葉を話せないから

君に僕の気持ちを
伝えることができないんだ。

君の顔を

優しい瞳を見ることしかできないんだ。

君が悲しんでいるときに
慰めることすらできない…、ごめんね。 」



そして僕は立派な蝶になった。



すると君は森林へ僕を運び
葉っぱに乗せた。




君は言う

「 ありがとう。元気でね。 」



僕は言う
 
「 僕が死んでもし生まれ変われるならば
また君に会いたい。

僕は君に出会って

初めて人間が好きになったよ

初めて人間になりたいと思ったよ。

人間になれれば君と話すことができるから

ありがとう…美しい君よ。さようなら…。 」




君は少し悲しげな顔で
飛び立つ僕の後ろ姿を見ていた。


それを見た僕は
初めて、見えない涙を流したんだ。


「 生まれ変わったら…またいつか…。」





※この作品は生き物の気持ちを表現した作品です。すべての生き物には心があると私は思っています。生き物たちを大切にしてほしいという気持ちや願いから、自分なりに考え生まれた作品です。最後まで読んで頂きありがとうございました。





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