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負の出来事から学ぶ 育児の在り方

2015年9月、国立成育医療研究センター こころの診療部奥山先生のお話を聴いてきました。日本子ども虐待防止学会理事長でもある先生です。

コメント 2020-05-09 195958

子どもの虐待についてでした。

現在、STAYHOMEと広く呼びかけられていますが、STAYHOMEがSTAYSAFEにならない現状があることも報道されています。改めて振り返りたいと思ったのです。

子どもの虐待阻止とは

子どもの虐待を阻止することとは、親を罰することではなく、子どもを心身の危険から守ること。

わかっていたけど、改めて言葉にされると深い納得を得ることが出来ました。虐待という事実を通して親を罰することが目的ではないんですよね。子どもを心身の危険から守ることを意味するのが解決の第一歩。

支援者でもこの視点がブレてしまうことが本当に多くあります。子どもが可愛いからこそ、人として正義を前面に出して保護者を非難してしまうのです。

必要なのは支援者としての視点です。子どものためには本来、保護者を犯罪者にしてしまうのもつらいものです。

また、虐待をしてしまう養育者も虐待経験があったり、何かしらの原因があって心から憎くてやっているのではないというのは本当あります。自分のふがいなさに衝動的に虐待をしてしまうという「ふがいないと感じさせる環境」が要因としてあったりします。

公演の中のキーワードとしてアタッチメント行動があったのですが

子どもが疲れたり、眠かったり、お腹がすいた時に出す行動(泣く等)は養育者に気持ちを受け入れて欲しい、なぐさめてほしい……という気持ちから養育者を求めます。
ここで受け入れられる経験から、その養育者を安全基地として、次は探索行動を始めます。
この行動を繰り返す中で探索行動への満足を得て、発達が進みます。

とありました。
よく保護者からの相談でも「抱きぐせはつきますか?」や「甘えはどこまで保証すればいいですか?」という質問があります。

その子の欲求にきちんと付き合う場面があり、その欲求が達成された時にはその姿はなくなっていく

こう、お話ししていました。抱っこもいつまでもしてもらっている大人がいないのと同様で、親から自立したいという気持ちを育てるためには、その子その子が安心できる反応を養育者が返していくことが必要だそうです。

ではアタッチメント行動が必要なわけとは

アタッチメントが作られていないと、心から安心できる愛着対象と一緒にいることができる枠組み、その子にとっての「安全基地」がないため、無謀な行動をとってしまうのです。他人を求めるのですが、信頼できないというジレンマを抱え、周囲が不快になったりどうしてよいかわからない接し方しかできず、ぶつかることも多くなったり、自分をコントロールできずにかっとなると燃え上がってしまう傾向があったりします。

引用:奥山眞紀子先生インタビュー「ようやく子どもの世界にも革命が起こせた」

子どもにとって満たしたいものを別のもので満たそうとする(代替)のは、簡単に受け入れられないということです。それゆえにどんなに支援者が一生懸命に関わっても、保護者を求めるのでしょう。

早急に親と放して施設に入ってしまえばいい!という人もいます。一時的に児童相談所で保護されたのちに、家庭に戻ることへ非難が集中することもあります。

親子関係を離すか否か

家庭に居れば、親子関係がたとえ不完全であったとしても、アタッチメント形成そのものはあるわけです。子どもを叩くのは良くありませんし、体罰はなくしていくべき大きな課題ですが、少なくとも育児をするなかで、一対一の関係性があって起きてくることです。私は虐待をする親のところに居るより施設に居た方がいいと思っていましたが、そうとは言えないケースもあると考えるようになりました。

引用:奥山眞紀子先生インタビュー「ようやく子どもの世界にも革命が起こせた」

近年はペアレントトレーニングという保護者と子ども間へ介入をし、関わりを指導するケースをよく耳にします。ただ引き離すだけでなく、戻れる家庭環境を作る方への支援も必要とされています。

欧州ではベビーシッターを家庭に受け入れ、一緒に育児をすることが一般家庭でも行われています。保育園や幼稚園が無償化はしましたが、ただ親と離れるだけが子どもの成長ではありません。

アタッチメント・愛着の強弱も連続性の中にあり、養育者を強く求める子もいればそうでない子もいます。子どもや親に合わせた支援の取捨選択がたくさん出来るような一律からダイバシティへ移行できるようになればと思います。

働き方や家の時間の過ごし方などを考え直すきっかけとなっている今、育児の環境についても考えたいものです。



お掃除係の実習を体験した保育士さん、きちんとした指導・教育を受けられずも頑張る支援者さん…など現場に困り感を持っている方へサポートすることで、子どもたちに還元されるものがあるのではと信じています。よろしくお願いします。