刹那の快感と天麩羅と
遊就館でひとときを過ごしたドクトルはすっかり、日本武士道のインスピレーションに打たれた気持ちになり、しかし一方で、特に書物や講義にて勉学に励むことなく博物館にて感銘を受けた自分をやや安直な人間だとも感じながら、とにかく次の目的地に移動しようと、神社に一礼して通りへ出て、最寄の停留所から新橋行きの電車に乗った。電車は、新春のまだ蕾も現れない吉野桜の並木を縫い、快速で麹町の通りを抜けた。半蔵門外を過ぎて、皇居の外堀に目を向ければ、枯芝の上まで水鳥の大群が賑やかに場所を占拠していた