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魔王も勇者もいないファンタジー。灰色の美術館。

NHKの大河ドラマ「光る君へ」を
観ています。
(30)つながる言の葉の回。

都が深刻な干ばつに襲われます。

左大臣の藤原道長が
陰陽師の晴明のもとを訪れて

雨ごいを頼みこむ
シーンがあります。

晴明「雨ごいなど、体がもちませぬ」

道長「陰陽寮には力のある者がおらぬ。
   なんとかそなたに
   やってもらいたい」

晴明「こうしてお話をするだけでも
   喉が渇きますのに
   祈とうなぞ」

道長「頼む」

晴明「何をくださいますか?
   私だけがこの身を
   ささげるのではなく

   左大臣様も何かを
   差し出してくださらねば
   嫌でございます」

光る君へより

道長「私の寿命‥‥
   10年やろう」
晴明「まことに奪いますぞ」
道長「よい」

光る君へより

「私の寿命‥10年やろう」という言葉に
ゾクゾクしました。

私は、願いを叶える代償として
大切なもの(寿命とか)を
犠牲にするお話が好きで
印象に残っています。


いったいどれほどの代償を払ったら
これほどの美しい文章を
紡げるようになるのか

そう思わずにいられない。
世界に出会いました。

田崎礼さんです。

革命の話をしよう。
『レーエンデ国物語』の虜になり

つづいて出会った
『叡智の図書館と十の謎』

私にとって忘れられない
一冊になりました。

白い砂漠に立つ
六角錐の真っ白な塔。

塔を封印する
10本の鎖。

時間も空間も
超越した

万智の殿堂。

無限に等しい書架

「叡智の図書館」

神の建造物のように
私の心をひきつけます。

まるでゲーム「ファイナルファンタジー」の
世界です。

きっと中には、伝説の武器とか
召喚獣とか・・

頭の中は、冒険に出かけています。

世界観とあわせて
魅力的なのが

宝石のように
散りばめられた

言葉の数々です。

私はnoteでは難しい言葉は
さけて書くようにしていますが

田崎さんの作品は、どこを開いても
少しだけ難しい言葉が並んでいます。

ちょっとご紹介します。

双眸 憤怒 知啓
灰褐色 暗灰色 薄闇 消し炭色

「叡智の図書館と十の謎」に登場する言葉

とくに印象的なのが、色の描写です。

「灰褐色」「暗灰色」
「薄闇」「消し炭色」

灰色や黒に近い色一つとっても
様々な表情を見せてくれます。

まるで灰色の美術館です。


日常ではあまり使わない言葉が
散りばめられているのに

読む手が止まったり
引っ掛かったりすることは
ありません。

書けない漢字でも
意味やニュアンスが
なんとなく分かること。

あまりにも自然で
違和感がなくて

むしろ世界をより一層深く
色濃くしてくれて

本に没頭する
手助けをしてくれます。

言葉の錬金術です。

一つ一つの言葉選びが
たまらないのですが
文章になると

月が草原を
照らしている

塔は星河を
縫い止めている

深更の闇、夜風が
草の海を渡っていく

「叡智の図書館と十の謎」の一節より

小説の一行一行が
吟遊詩人の調べのように

静かで広大な月夜を
わたしの心に描いていきます。

世界ってこんなにも美しいんだ。

幻想世界があたかも
実在しているかのような
圧倒的な描写です。

いったいどれほどの
時間をかけて

文字を集め
言葉を選び

紡いできたのでしょうか。

田崎礼さんが
何十年も書きつづけて

辿り着いた世界に
ページをめくるたびに
幸せな溜め息がでます。

読んでいると、私も本の世界の
住人になったように思えて。

日常を忘れ、ただただ言葉の
世界に浸りたい、そんな気持ちになります。

「叡智の図書館」の
タイトルに相応しく

あらゆる知的好奇心を
刺激するように

本という叡智に
触れる楽しみに
満ちています。

そして人と物語。

「十の謎」

noteで「二十四節気七十二候」に
出会ったとき美しさに
衝撃を受けたのですが

田崎礼さんの世界に
洗礼を受けています。

以前、書く能力を失ってもと書いたけれど
その一方で、美しい言葉を
紡げるようになりたい。
なんて夢見ています。

最後までお読みいただき
ありがとうございます。

みなさんの本の時間が
素晴らしいものでありますように。

『レーエンデ国物語』は
美しい反面、残酷な面も多いのですが

『叡智の図書館と十の謎』は
少なめです。

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最後まで読んで頂いて、本当にありがとうございます! 少しでも、あなたの心に残ったのなら嬉しいです。