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【エッセイ】祖父との思い出
小学生の時、道徳の授業で第二次世界大戦について触れた。
「戦争は恐ろしいのです」
熱意がこもる先生の瞳。あまりの迫力に私の背筋は凍った。
涙目になって怯える子、窓の外を眺める子、先生の形相を茶化して笑う子。クラスメイトの様子はさまざまだった。
隣の席の子が落ち着かない様子で「俺のおじいちゃん、戦争に行ったらしい」と話しかけてきた。私の祖父も戦時中、ちょうど十代〜二十代前半だったはずだ。戦争
【読書感想】どうしても生きてる(著:朝井リョウ)
じくじくと痛みを感じる短編集だった。
痛いといっても、刃物で切りつけたような鋭い痛みではない。
毒を食らって、静かに、穏やかに、確実に内蔵をやられているような、体の内から感じる鈍痛。
初めて朝井リョウさんの作品を読んだのだが、誰でも一度は感じたことのあるだろう『自分では変えようのない、人生の上手くいかなさに対するモヤモヤ』を描くのが上手な作家さんだと思った。
朝井さんの作品は、生きにくさを感じる現
【読書感想】本屋さんのダイアナ(著:柚木麻子)
あらすじにあるように、貧富の差がある女の子二人が主役の物語。
私に共通点が多いのは、貧しい家庭に育ったダイアナの方なのだが(母子家庭、母親が水商売勤めなど)感情移入をしたのは意外にも裕福な家庭で育つ彩子の方だった。
彩子はとても魅力的な女の子だと思う。
彩子はこうなりたい、こうしたいという夢や希望に溢れている。
やりたいことは沢山あるのに、ほんの少し勇気が足りなくて足踏みしてしまったり。
やりた
【読書感想】暗いところで待ち合わせ(著:乙一)
表紙が怖い感じだが、読後感が爽やかな純愛小説。
『人は孤独では生きられない』というのが作品のテーマの一つだと思う。
自分のことを理解してくれる人が居るはずがない、と半ば諦めているミチルとアキヒロ。ひょんなことから同居生活が始まった二人。
そこで生まれた心の触れ合い、人の温かさを知ってしまった時の戸惑い。
それがふとした拍子に無くなってしまった時の怖さ。
繊細で柔い心の描写が巧みに描かれていて、つい