【読書感想】本屋さんのダイアナ(著:柚木麻子)

私の名は、大穴(ダイアナ)。おかしな名前も、キャバクラ勤めの母が染めた金髪も、はしばみ色の瞳も大嫌い。けれど、小学三年生で出会った彩子がそのすべてを褒めてくれた――。正反対の二人だったが、共通点は本が大好きなこと。地元の公立と名門私立、中学で離れても心はひとつと信じていたのに、思いがけない別れ道が……。少女から大人に変わる十余年を描く、最強のガール・ミーツ・ガール小説。

新潮社より

あらすじにあるように、貧富の差がある女の子二人が主役の物語。
私に共通点が多いのは、貧しい家庭に育ったダイアナの方なのだが(母子家庭、母親が水商売勤めなど)感情移入をしたのは意外にも裕福な家庭で育つ彩子の方だった。
彩子はとても魅力的な女の子だと思う。

彩子はこうなりたい、こうしたいという夢や希望に溢れている。
やりたいことは沢山あるのに、ほんの少し勇気が足りなくて足踏みしてしまったり。
やりたいことが沢山あるからこそ、他に気になることができて、色んなことが中途半端になってしまったり。
なんとももどかしい。
彩子のような人は、結構居るのではないかと思う。
やりたい気持ちはあるのに、何をすればいいのか分からない。一歩踏み出してみたいけど、勇気が出ない。
私は決して裕福な生まれではないのだけれど、彩子のもどかしいところに共感を覚えたのかもしれない。

また、彩子に対して「残酷だなぁ」と思った瞬間があった。
彩子は小学生の時点で自分の置かれている恵まれた環境に退屈を感じている。
少し変わった母親がいる母子家庭の日常。ダイアナの生活に「物語性」を感じてワクワクする気持ちを止められない彩子。
ダイアナにとっての「普通」に非日常性を感じて「娯楽」のように捉える彩子は、無意識な傲慢だなと思った。

小学生の頃、ダイアナが男子と居るのを見て嫌悪感が湧き、ダイアナとの縁を切ってしまう彩子。
その後、15歳の彩子は先生に淡いトキメキを抱く。
彩子は普通に成長しているだけなんだけれど、なんとなく身勝手に見えてしまう。

いつも前を向いているダイアナに対しては安心感を持って読めたのだけど、不安定にフラフラとどこへ行くか分からない彩子に目が離せない。

手放しで「好き」とは言えないんだけど、気になってしょうがない。
少しの嫉妬を持ってしまうんだけれど、つまづいている時は手を貸してあげたくなる。
彩子はそんな魅力のある女の子だと思った。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?