見出し画像

人の話を聞けない=聞いてもらってないから ~失った「聞く」を取り戻そう~

あなたは、人の話を聞けていますか?
この質問に自信を持って答える人はどれくらいいるだろうか?

私がキャリアコンサルタントの勉強で「聞く」訓練をしていたため気になったのかもしれないが、「聞く」「傾聴」に関する書籍や情報が非常に多いことに驚く。
つまり、それだけ「聞く」という行為に困っている人が多いということ。

色々な本がある中で、この書籍の記事が目にとまった。
臨床心理学者による本書は、他の本と何か違うテイストがあると感じた。

聞く技術 聞いてもらう技術(東畑開人)

読売新聞の書評より

11月にキャリアコンサルタントの実技試験を終えて、勉強も実技訓練も一休みの状態であったが、復習になるかとも思い迷わず購入(電子書籍)。

noteでは感じたことだけをピックアップして語ることが多いが、この本に関しては少し要約を先に記したい。

《こんなことが書いてあります》
聞くためには聞いてもらうことが大切。
「話す」ではなく「聞いてもらうこと?」実はこれが難しい。
人に話を聞いてもらえて初めて人の話を聞くことができる。
まずは「聞いてもらう」ことから始めよう。
「助けて」と言えない時は「ちょっと聞いて」と言う。
それも言えない時は、聞いてもらう技術を使って周りを心配させて声をかけてもらうように誘導する。
(つまり、S.O.Sを出す→「何かあったの?」と問いかけてもらう)

この著書のユニークな点は「聞く」という行為は本来、人が持っているもので「得るもの」ではなく「失うもの(あるいは失ってしまったもの)と説明している点である。だから、「聞く」を回復することが大切なのだ、と。

「聞く」は本来生活に溶け込んでいるものであったが、新自由主義の名のもとで「自己責任」が強調されて人間関係の悪化を誘発し、人は「孤独」になっていく。そうなると人は話を聞けなくなる。
確かに、自分のことを思えば、孤独でなくても忙しい時や心に余裕がない時は人の話を聞いているとは思えない(聞けない)。それで知らず知らずのうちに人を孤独にしたことがあるのかもしれない。

何だか切ない話である。

そのために誰かが聞いて心のスペースを作ってあげなくてはならない
そこに翻訳者であるカウンセラーの役割が重要なのである。

そして、自分自身がキャリアコンサルタントの勉強を通じて感じたこととも一致して著者の言うことが腹落ちする。

実技試験の練習では、少なくとも10名以上の方々にキャリアコンサルタント役になってもらい、自分が相談者役で話を聞いてもらった。転職活動をしていたため、私の相談はかなりリアルなものであった。その際、多くの人は一生懸命質問することに気持ちが傾いている様子で、相談というよりもインタビューを受けているようだった。相談ポイントの重要なワードを言っても「あ、スルーされた」「あ、もう次の質問?」と思うことが多く「聞いてないよなあ」と感じることも多かった(自分がキャリコン役の時はそう思われていただろう💦)。一方で上手な方と組んだ時は、こちらの語りたいことを「よくぞ聞いてくれた」という気持ちでベラベラと自分の経験代謝ができた。後者の経験が自分自身のロープレでの傾聴技術を高めてくれたという実感があった。「聞いてもらえた」と実感した時の気持ちよさは忘れがたく、その逆ができればいい、と理解した。

そう、「聞いてもらう」ことができれば「聞ける」ようになるのである。
(少なくとも経験でそう思った)
最も学んだこと(気づき)は・・・

「聞く技術/聞いてもらう技術」で「聞く心」を体得すべし


本来、「聞く」と「聞いてもらう」ことは、ぐるぐると循環していくもの。
それが自然に戻る、つまり「聞く」を回復する社会にしなければならない

最後に、著者のメッセージを引用

あなたが話を聞けないのは、あなたの話を聞いてもらっていないからです。心が追い詰められ、脅かされているときは、彼らは人の話を聞けません。

▼ 以下、著書要旨▼

🔹「聴く」より「聞く」の方が難しい
・話を聞けないのは、話を聞いてもらっていないから
 心が追い詰められたとき人の話は聞けない
 「聞く」は「聞いてもらう」に支えられる
・相手の切実な事情が聞かれていない
・世の聞く技術の本=余計なことを言わず適切な質問
 「余計」「適切」どう判断する?
・聞くことの本質=相手との関係性
 話を聞けない=相手との関係悪悪化(互いが悪魔化)
 まず「聞いてもらう」から
🔹なぜ聞けなくなるのか
・社会に欠ける「聞く」=互いに「聞いてもらえない」状態
 慢性的な欠乏状態→関係悪化/孤独で「聞く」崩壊
・「聞く」の中核=孤独の問題=人の真の痛み
 「聞く」ことで孤独の痛みをなぐさめる
 例)メルケル元首相の演説(国民の痛みを理解)
話を聞くためには話を聞いてもらう必要(支えてくれる仲間)
🔹孤立から孤独へ
・つながりの希薄化→暴力的孤独(不登校、Sマザー等)
 新自由主義→個人に負担かかりすぎ→孤立
・孤立でなく孤独になれば聞く力が戻る
・心の治療=つながりの回復
 メンタルケア=時間をかける(時間を信じる)
・社会のあらゆる場所が透明化、元気な人しかいられない組織
 スーパーマンしか残れない→個人が隠れる場所を残す
・聞いてもらう技術=つながりの連鎖(心配される技術)
🔹聞くことの力、心配の力
・カウンセリングー誰がやってもいい(世間知)
・泰斗クラインマンーヘルス・ケアシステム理論
 民間セクター(世間知)/専門職セクター/民俗セクター
 *ケアの主役は民間セクター(友人/家族/先生/上司/自分)
・スクールカウンセラーが必要な時=世間知で手に負えない時(孤立)
・専門知は世間知に溶けやすい必要(×専門家任せ)
・カウンセラーの仕事は通訳(本人→家族or本人→本人)
理解には愛情を引き起こす力がある、エイリアンを人に戻す。
・聞くことの力
 =みんなが聞こうとしている、本人も聞いてもらうことを恐れない。
 →心の回復
・誰が聞くのか→横に立つ善き第三者
 リソースが限られる社会(分断)で対話をできる状態にすること
・聞く技術の本質=聞いてもらう技術を使って声をかける
 「聞く」の循環で社会は成り立つ
 「聞く」「聞いてもらう」どちらからでも

2023年、最初の投稿を最後まで読んでいただきありがとうございました。
キャリアコンサルタント資格試験に合格した今、今年はこの資格を自分の人生でどう生かすか考え、学ぶ年にしたいと思っています。そのため「聞く」ことの本質を自分なりに追及していきます。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?