勝木 淳~やけに考えすぎる競馬研究室所属~

競馬ライターの勝木 淳です。やけに競馬に詳しい男になりたかった男。優駿エッセイ賞201…

勝木 淳~やけに考えすぎる競馬研究室所属~

競馬ライターの勝木 淳です。やけに競馬に詳しい男になりたかった男。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。活動場所『SPAIA』、競馬雑誌『優駿』、競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』など。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ(星海社新書)。

マガジン

  • 回顧という名の反省会、未来にいかせる過去がある。

    毎週月曜日に週末の重賞について回顧しつつの反省会。終わったレースを見直すことで次の機会にいかせる情報が発見できる。レースの攻略法から各馬の長所や短所といった適性まで、とにかく未来に役立てようというポジティブ思考です。

記事一覧

【天皇賞(春)予想】真のステイヤーはステイヤーっぽい馬には負けない

どんなジャンルであっても、行きすぎはよくない。この世はなんとなく不安定で、上手にバランスをとって渡っていく世界。だから、ちょっとしたことで、崩れ、躓き、心身を乱…

【皐月賞予想】迷うのも自分、断ち切るのも自分。信頼と疑念の交差点にて

皐月賞馬とは。昔は速い馬と評されることがあった。内回りの芝2000mは速力と機動性が問われるからだ。今もなお、その格言は生きている。だが、昭和の格言が令和の世で生き…

【大阪杯】正体不明な不安との戦い

四十も半ばを過ぎ、いよいよ五十代の舞台が目の前にチラつくようになる。よくもまあ、こんなフラフラな生き方をしてここまできたものだと我ながら思う。一方で、五十の壁が…

【高松宮記念】雨が阻む連勝という壁

戦国三大奇襲のひとつ桶狭間の戦いは1560年6月12日に織田信長が海道一の弓取り今川義元を破り、下克上を果たした一戦として有名だ。最近は奇襲でもなんでもなく、情報戦に…

【フェブラリーS予想】つながるもの、つながらないもの

なるべく毎日、同じがいい。 驚くほどのルーティン男がいま、毎日まったく違う日々を過ごす。なぜ、自分は同じ道を歩みたがるのか。不安定な日々のなか、それを考えてみた…

【AJCC予想】令和の異界ウインズに集うもの

競馬場に行く理由には想像が及ぶが、ウインズに通う動機が見えない。有料とはいえ、視聴環境が整い、馬券も場所を問わず買えるようになった。コロナ禍では閉鎖状態だったウ…

【有馬記念予想】歪んだ夢をみる。3倍以上の1番人気は主役じゃない。

「最近の有馬記念には夢がない」 男は予告なしにやってきたクリスマス寒波によって底冷えするアパートの一室でそうぼやく。煌びやかな街並み、年の瀬へ向かう高揚感、そし…

【朝日杯FS予想】後悔こそ我が人生、展開待ちに魅かれる理由

今さらながら後悔することがある。人生は希望と後悔が交互にやってくるから仕方ない。一生、後悔だ。悔いても時は決して戻らないが、やり直せることもある。だったら、やり…

【チャンピオンズC予想】男は深夜の川面に闇をみる

日付が変わり、時計の針が2周ほどすれば、川沿いの幹線道路も束の間の静寂のときを迎える。黒いダウンジャケットをまとい、闇に紛れるようにして男は川沿いを歩く。春は水…

【ジャパンカップ予想】高台の縁に住む男

男は天井の影を見ていた。 タバコの紫煙の向こうにぼんやりと広がる染みのような影だ。ペンダント型の電灯は板張りの天井までは照らさない。闇をすべてなくしてしまうシー…

【マイルチャンピオンシップ予想】真実を覆い尽くす印象という霧を振り払う

昨年に続き、年末から正月にかけて落ち着かないようだ。半分フリーという中途半端な足場に立つ人間はバランスボールの上で原稿を書いているようなもので、懸命に傾くことを…

【エリザベス女王杯予想】M体質、女王様にひざまずく

エリザベス女王杯とくれば、当然、女王陛下を指す。来日を記念して創られたレースであり、その前提に異論はない。それを承知で、女王という言葉にむず痒さを感じる。真性の…

【アルゼンチン共和国杯予想】スペシャリスト志向から見えるユーティリティの罠

スペシャリストかユーティリティか。人材の価値は時の移ろいとともに変わり、流行の影響も受ける。かつて職人が支えたこの国はスペシャリストの世界だった。それぞれがなに…

【みやこS予想】道をハズした男、王道へ迷い込む

いつも人生の裏街道を行き、王道を避けてきた私だが、秋の三連休初日に遠出するというみんなと同じことをした。JBCに後ろ髪を引かれつつ、向かった先は山梨県。かつての甲…

名探偵にはほど遠く。富士を目指して、無人の野を進む。ノースブリッジに託す

こうもまざまざと見立てと推理を間違っていては、金田一耕助ならぬ加藤武さんの警部ぐらいしか務まるまい。胃薬でも飲んで、粉まみれになるしかない。普段はデータやらなん…

ゴールまで長いダービー、ゴール板が遠い菊花賞。3000m戦の存在証明

ちょっとだけトレーニングしたい人向けのジムに入会した。築地市場を去って6年、肉体労働を辞めた反動かもしれないが、一切、体を動かさなくなってしまった。おまけにこの…

【天皇賞(春)予想】真のステイヤーはステイヤーっぽい馬には負けない

【天皇賞(春)予想】真のステイヤーはステイヤーっぽい馬には負けない

どんなジャンルであっても、行きすぎはよくない。この世はなんとなく不安定で、上手にバランスをとって渡っていく世界。だから、ちょっとしたことで、崩れ、躓き、心身を乱す。世の中の天秤は時に大きく傾く。そのとき、自分の天秤はどう変化するのか。気をつけていないと、一緒になって大きく傾く。右に左にと世の中の移ろいに合わせて傾くと、必ず自分を失う。

そんな傾きのなかで、もっとも怖いことが神格化だ。ある対象を上

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【皐月賞予想】迷うのも自分、断ち切るのも自分。信頼と疑念の交差点にて

【皐月賞予想】迷うのも自分、断ち切るのも自分。信頼と疑念の交差点にて

皐月賞馬とは。昔は速い馬と評されることがあった。内回りの芝2000mは速力と機動性が問われるからだ。今もなお、その格言は生きている。だが、昭和の格言が令和の世で生き残るには、ちょっとした変化を加えないといけない。時代とは元号では区切れない。時間を区切るのは便宜上のことであり、時は永遠に途切れることなく、刻まれていく。時の刻みは決して止まることも変わることもない。変わるとすれば、表現であったり、味付

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【大阪杯】正体不明な不安との戦い

【大阪杯】正体不明な不安との戦い

四十も半ばを過ぎ、いよいよ五十代の舞台が目の前にチラつくようになる。よくもまあ、こんなフラフラな生き方をしてここまできたものだと我ながら思う。一方で、五十の壁が見えてくると、なんだかんだと変わってくるものがある。まず、これまでそこまで心配しなかった健康について悩みはじめる。おかげさまで大病もなく、ここまで生きてこられたが、ここにきて静かに健康の危機が訪れつつある予感がある。まだ戦うべき相手がなんな

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【高松宮記念】雨が阻む連勝という壁

【高松宮記念】雨が阻む連勝という壁

戦国三大奇襲のひとつ桶狭間の戦いは1560年6月12日に織田信長が海道一の弓取り今川義元を破り、下克上を果たした一戦として有名だ。最近は奇襲でもなんでもなく、情報戦による正面突破説が有力だが、今川軍の行軍を足止めしたであろう雨も信長の勝利に加担したといわれる。大軍ゆえに一気に動けなかった今川軍は侵攻が順調だったことと雨を理由にひと休みした。今のように灯りがない時代、山中での休憩に不安はなかったのか

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【フェブラリーS予想】つながるもの、つながらないもの

【フェブラリーS予想】つながるもの、つながらないもの

なるべく毎日、同じがいい。

驚くほどのルーティン男がいま、毎日まったく違う日々を過ごす。なぜ、自分は同じ道を歩みたがるのか。不安定な日々のなか、それを考えてみた。これまで繰り返しの連続を求めたのは、安心感に依存していたからだろう。なにも考えず、アイディアをひねり出すことを切り捨て、体が動くままに染みついた動作を繰り返す「無」に安心する。流れ作業は大好物で、決まった時間に決まった場所へ行き、同じ電

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【AJCC予想】令和の異界ウインズに集うもの

【AJCC予想】令和の異界ウインズに集うもの

競馬場に行く理由には想像が及ぶが、ウインズに通う動機が見えない。有料とはいえ、視聴環境が整い、馬券も場所を問わず買えるようになった。コロナ禍では閉鎖状態だったウインズは、もはやその役目を終えようとしているのではないか。そんな想いからウインズを訪れた。

なぜ、ウインズに通うのか。

ウインズは令和の世にあらわれた異界である。ウインズ後楽園はご存じの通り、東京ドームの隣にある。敷地内のホールではウル

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【有馬記念予想】歪んだ夢をみる。3倍以上の1番人気は主役じゃない。

【有馬記念予想】歪んだ夢をみる。3倍以上の1番人気は主役じゃない。

「最近の有馬記念には夢がない」

男は予告なしにやってきたクリスマス寒波によって底冷えするアパートの一室でそうぼやく。煌びやかな街並み、年の瀬へ向かう高揚感、そして次から次へとやってくるギャンブルの大一番を前に、男は不満を募らせる。人の幸せに背を向けて生きると決めてから、長い時を過ごした。裏路地の隅にある古びたアパートを根城するにする男にとって、ギャンブルは荒れてこそなのだ。

だが、最近の有馬記

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【朝日杯FS予想】後悔こそ我が人生、展開待ちに魅かれる理由

【朝日杯FS予想】後悔こそ我が人生、展開待ちに魅かれる理由

今さらながら後悔することがある。人生は希望と後悔が交互にやってくるから仕方ない。一生、後悔だ。悔いても時は決して戻らないが、やり直せることもある。だったら、やり直したほうがいい。やらなければ、記憶は変わらず、悔恨を引きつづったままになる。

青春がない人生だった。正確には青春の時はあったわけだが、そこに浸かることを拒否した自分がいた。コンプレックスばかり意識するような自意識過剰な青春を過ごしたため

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【チャンピオンズC予想】男は深夜の川面に闇をみる

【チャンピオンズC予想】男は深夜の川面に闇をみる

日付が変わり、時計の針が2周ほどすれば、川沿いの幹線道路も束の間の静寂のときを迎える。黒いダウンジャケットをまとい、闇に紛れるようにして男は川沿いを歩く。春は水面に映る桜が明るく染め上げるが、この季節は漆黒のなかに、くすんだ落ち葉が漂うだけ。色を失う季節は足早にやってくる。男は背を丸め、漂う落ち葉を眺めていた。あの葉は決して海にはたどり着けない。川はいつか海へ向かうが、そこを漂うものはどこかで消え

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【ジャパンカップ予想】高台の縁に住む男

【ジャパンカップ予想】高台の縁に住む男

男は天井の影を見ていた。
タバコの紫煙の向こうにぼんやりと広がる染みのような影だ。ペンダント型の電灯は板張りの天井までは照らさない。闇をすべてなくしてしまうシーリングライトは苦手だ。
遠くで救急車のサイレンが響く。東京の西にある高台の縁にある古びたアパートは、地名に馬がつくという理由だけで選んだ。北と南を幹線道路に挟まれ、急な坂がそれらをつなぐ一帯に住宅街が広がる。坂を上がれば、ちょっとした歓楽街

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【マイルチャンピオンシップ予想】真実を覆い尽くす印象という霧を振り払う

【マイルチャンピオンシップ予想】真実を覆い尽くす印象という霧を振り払う

昨年に続き、年末から正月にかけて落ち着かないようだ。半分フリーという中途半端な足場に立つ人間はバランスボールの上で原稿を書いているようなもので、懸命に傾くことを我慢しなければいけない。右へ行けば左へ、左へ行けば右へ。直立できるほどのバランスもない。体幹を鍛えろとはよく言うが、私の場合、まずは人生の幹をどうにかしないといけない。なぜ、こうも柔く育ったものか。振り返って、これまでしてきた選択を責める。

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【エリザベス女王杯予想】M体質、女王様にひざまずく

【エリザベス女王杯予想】M体質、女王様にひざまずく

エリザベス女王杯とくれば、当然、女王陛下を指す。来日を記念して創られたレースであり、その前提に異論はない。それを承知で、女王という言葉にむず痒さを感じる。真性のM体質にとって、どうやっても女王様にしか変換できない。そういえば、かなり若い頃の話だ。大学生のくせにコンビニ夜勤週5という恐らく、私史上もっとも労働に励んだ時期があった。実家通いの大学生が週5夜中仕事すれば、お金はどうやっても貯まる。使い切

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【アルゼンチン共和国杯予想】スペシャリスト志向から見えるユーティリティの罠

【アルゼンチン共和国杯予想】スペシャリスト志向から見えるユーティリティの罠

スペシャリストかユーティリティか。人材の価値は時の移ろいとともに変わり、流行の影響も受ける。かつて職人が支えたこの国はスペシャリストの世界だった。それぞれがなにか一つを探求し、極め、愚直で不器用ながら、秀でたなにかを武器に世を渡っていた。だが、縦割りという言葉が批判的に使われるようになり、世界を横断できるフットワークの軽さ、それぞれの世界をつないでいく調整力が評価され、ユーティリティなプレイヤーこ

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【みやこS予想】道をハズした男、王道へ迷い込む

【みやこS予想】道をハズした男、王道へ迷い込む

いつも人生の裏街道を行き、王道を避けてきた私だが、秋の三連休初日に遠出するというみんなと同じことをした。JBCに後ろ髪を引かれつつ、向かった先は山梨県。かつての甲斐国だ。当然、中央道を使う。右に競馬場。帰りはレースに向かう関西馬が乗ったと思われる馬運車にも遭遇した。秋の三連休初日、中央道は王道がすぎた。西へ行く道は基本すべて登り勾配であり、さらに峠を進むからか、道は片側2車線と狭い。自然渋滞が発生

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名探偵にはほど遠く。富士を目指して、無人の野を進む。ノースブリッジに託す

名探偵にはほど遠く。富士を目指して、無人の野を進む。ノースブリッジに託す

こうもまざまざと見立てと推理を間違っていては、金田一耕助ならぬ加藤武さんの警部ぐらいしか務まるまい。胃薬でも飲んで、粉まみれになるしかない。普段はデータやらなんやらを駆使するが、ここは見立てと推理と思い込みを繰り広げる場なので、ご容赦いただきたい。憧れの名探偵・金田一耕助は自身の悔いを胸にしまい、地道に事件の背景をひもとき、名推理を組み立て、それとなく犯人を暴いていく。身なりとは裏腹な品のある繊細

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ゴールまで長いダービー、ゴール板が遠い菊花賞。3000m戦の存在証明

ゴールまで長いダービー、ゴール板が遠い菊花賞。3000m戦の存在証明

ちょっとだけトレーニングしたい人向けのジムに入会した。築地市場を去って6年、肉体労働を辞めた反動かもしれないが、一切、体を動かさなくなってしまった。おまけにこの春から家から一歩も出ない生活を手に入れた。世の中、制限がなくなり、日常が戻ってきたというのに、隔離生活がはじまった。なんなら、去年の方がウロウロしていたぐらい。みんなが外に出るようになると、家に閉じこもる。実にひねくれ者である。

そうなれ

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