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【マイルチャンピオンシップ予想】真実を覆い尽くす印象という霧を振り払う

昨年に続き、年末から正月にかけて落ち着かないようだ。半分フリーという中途半端な足場に立つ人間はバランスボールの上で原稿を書いているようなもので、懸命に傾くことを我慢しなければいけない。右へ行けば左へ、左へ行けば右へ。直立できるほどのバランスもない。体幹を鍛えろとはよく言うが、私の場合、まずは人生の幹をどうにかしないといけない。なぜ、こうも柔く育ったものか。振り返って、これまでしてきた選択を責める。だが、それはあまり意味がない。責めたところで、今の私は変わらない。時空を行き来するような特殊能力があってこそ、過去を責める意義はあるというもの。樹木にも色々ある。真っ直ぐ天空へ突き立つだけではない。うねりながら、その土地に合った形で枝葉を伸ばして生き続けるものもあるのだ。

この秋のGⅠは川田さん、ルメールさん、そしてノーザンFしか勝っていない。まるで天にそびえる大樹のようだ。もう手は届かないし、追いつけもしない。切り倒せるだけの武器も見つからない。だったら、その幹に寄りかかり、雨を避けるほかないのか。いや、それは自分の過去の選択を過ちだと決めてしまうようなものだ。だいたい、だからって今さら頼ったところで、透かされるかもしれない。どうせ3者に頼るなら、人気がない馬にしよう。これが私の精一杯の抵抗というものだ。トライアングルの一角でも崩せるなら、それでよしとしたい。

京都のマイルチャンピオンシップは趣きが違う。この秋、最後の京都GⅠでもあり、横一線に駆けてくるサラブレッドたちが、秋深い陽ざしに照らされ、一層美しくなる。まさに晩秋の光景だ。ジャパンカップは私にはちょっと眩しい。この横一線が京都外回りの風情だ。800m標識を境に上り下りと移る京都マイルは、無謀な先陣争いは起きない。目の前に上り坂があって、加速するような馬はそうはいない。上りの手前でスパートをかけるランナーがいないのと同じだ。3コーナーの丘を駆け下りる残り800mからが勝負。ブレーキをじっくり緩める感覚で下りる。今回の改装で改善された4コーナー、いわゆる生垣の向こうはそれでも角度はつく。車の運転でもっとも難しいのは、下り坂の急カーブだ。アクセルを踏まず、エンジンブレーキを使って、対向車線をまたがないよう、ハンドルを操作する。何もしなければ加速する下りで、この操作を的確なタイミングで行うのはテクニックがいる。これは競馬とて似たものがあるだろう。上りから下りに変わり、楽になったサラブレッドはブレーキを緩められれば、気分よく加速する。この加速の加減とコーナーリングをバランスよくこなせないと、外に膨らむことになる。京都はインが開く、京都の直線は横一線に広がる。外回り4コーナーが見せる風情はこうして生まれる。

横一線の叩き合いなら、決め手がなければ上位には食い込めない。逃げも差しも最後の平坦で末脚がないと、しのげない。ただ、出走馬のうち、今年重賞で上がり最速を記録したのは、ジャスティンカフェ、シュネルマイスター、レッドモンレーヴの3頭。前走上がり最速はレッドモンレーヴだけ。2、3歳限定戦を除き、京都外回りマイルで前走上がり最速だった馬の次走は【6-7-6-21】勝率15.0%、複勝率は47.5%もある。直前で速い上がりを使えた馬なら、馬券圏内は十分ある。なお、このデータ、GⅠに限ると【1-1-0-1】。当然、すべてマイルチャンピオンシップだ。

ノーザンFの人気薄レッドモンレーヴは今年、京王杯SCを勝ち、安田記念6着。1400巧者などと決めるのは早くはないか。昇級まではむしろマイルで勝ちあがってきた。安田記念6着は安田記念だからだろう。中距離もこなせる我慢強さが求められる安田記念と純粋なベストマイラーが走るマイルチャンピオンシップでは微妙にニュアンスが違う。だからこそ、安田記念0.6差はレッドモンレーヴが1800mをこなせない証であり、1400m巧者を示すものではない。休み明けの富士Sでは上がり最速を記録しており、どうやっても1400mまでには見えない。ベストマイラーにふさわしい京都マイルはレッドモンレーヴがその潜在能力を開花させる舞台だ。適性を感じず、好走イメージが湧かないと、切ってしまっていいんだろうか。印象こそ、疑ってしかるべき。名探偵を目指すためにも、印象という霧に覆われた真実をあぶり出してみたいものだ。

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