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室内装飾織物がたり

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横浜能楽堂の室内装飾織物のお話

横浜能楽堂の室内装飾織物のお話

約150年の歴史ある能舞台のある横浜能楽堂。大規模改修工事のため長期休館する前の最後の特別施設見学に行ってきました。

横浜能楽堂は、鏡板と柱にこだわりのある歴史ある能舞台はもちろん、石と木が調和した屋外や内部空間、一文字葺きの銅板の屋根とその形状などなど建築そのものがとても素晴らしいです。ですが、私は何よりも内部空間の装飾に使われている錦の織物を見納めておかねばならないとの思いでした。内装の随所

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着物をまとった電子ピアノ

着物をまとった電子ピアノ

息子が保育園の頃にピアノを習いたいと言い出し、10年ほど続けていました。保育園の保育時間中にピアノの先生が来てくれるシステムで、働く親としては習い事の送り迎えができないためとても助かっていました。保育園卒園後も息子は保育園にピアノを習いに。小学校高学年の時に一度だけピアノを辞めたいと言い出したので先生に相談したところ、辞めるのはいつでもできるから自分で辞めたい理由を言えるようになったら辞めましょう

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幻の早雲寺裂

幻の早雲寺裂

早雲寺裂について初めて知ったのは、神奈川県立博物館の常設展でした。文台と硯箱に渋い草花紋の銀爛の名物裂が張られたものです。草花紋の銀爛をぜひ本物で見たい、文台はもちろん硯箱にまでなぜ銀爛を貼ったのか知りたい、と興味津々でした。復元品でしたのでいつかは箱根湯本にある早雲寺を訪れてみたいと思っていたのですが、なかなか機会がなかったところ、神奈川県立博物館で昨年度「早雲寺展」が開催された折に鑑賞してきま

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切手のはがき屏風仕立て

切手のはがき屏風仕立て

友人のお母様が集めていたという民家切手シリーズ、1997(平成9)年11月から1999(平成11)年5月に5回に分けて記念切手として発行されたもので、10種はいずれも国指定重要文化財ばかりの大変貴重な住宅です。
住宅を一覧にするとこんな感じ。

切手をしまい込むのではなく、眺められる方法はないものかと思い、表装してはがき屏風に仕立ててみました。表装はいつもの経師店の職人さんにお願いしました。
表は

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母の色紙のための2色の裂の掛軸

母の色紙のための2色の裂の掛軸

母が手持ちの色紙を掛軸に飾りたいということで、着物の裂を使った掛軸を制作しました。選んだ裂はいくつかの候補の中から2種類に決めました。

深い朱色のものは、競馬好きだった父が、めずらしく馬券が当たった時にたった一度だけ母に作ってくれた道行の残り裂。当時住んでいた松本の呉服店で誂えたしっかりとした地厚の生地です。多分50年近く前のことで、道行はもう母の手元にはなく、仕立てた時の残り裂だけが私の手元に

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よせぎれ表装_息子の書き初め

よせぎれ表装_息子の書き初め

25歳になりました息子の中学生時代の書き初めがあります。中一の時の「輝く生命」、中二の時の「平和の鐘」。決して上手とは言えない文字なのですが、10年以上寝かせておきました。捨てることは簡単ですが、何かアップサイクルデザインした作品にできないか・・・いろいろ考えた結果、母方の祖母の着ていた着物の裂で表装して掛け軸にすることにしました。
祖母は息子が生まれるずっと前に亡くなりましたので、もちろん二人は

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よせぎれ表装_早春の海

よせぎれ表装_早春の海

今からかれこれ半世紀前に書いた書き初めがあります。文字は早春の海、学年は小三、そして私の旧姓の氏名が書いてあります。私は小学校3年生の秋に東京から松本に転校したため、書き初めは松本で書いたものと思われますが、書いた時の記憶は全くありません。自分の氏名の文字は見慣れたものであるため、多分私の書き初めなのでしょう。母は子どもたちの絵でも書でも作文でもなんでもかんでも捨てずに保存しておいてくれました。私

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金襴緞子の貼り付け箱

金襴緞子の貼り付け箱

それは本当にひょんなことから生まれたアイデアでした。家族の名前の書の表装をお願いした経具屋の職人さんとの会話中でのことです。古い着物の裂のことをあれこれお話していたら、職人さんがお寺の表装のお仕事の際に残った金襴と緞子を見せてくださいました。「何に使っていいかわからないんだよ。」とおっしゃるので「箱に貼ってはどうですか?」ということで私が手持ちの箱をお持ちしました。もともと箱好きなのものでなんとな

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よせぎれ表装_家族の名前

よせぎれ表装_家族の名前

ずいぶん前に母が知人にお願いして制作してもらった風炉さき屏風がありました。屏風には家族の名前の一文字ずつが書かれていました。その後、母が手狭なマンションに移り住んだ際に屏風を解体して片方は額として飾り、もう片方は我が家のマンションにしまいこんでいました。

知人による書には次のような文字解説がついています
「此の屏風の六つの文字は右から「孝」「和」「仁」「伸」「智」「晴」です 依頼者の要請で家族の

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