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幻の早雲寺裂

早雲寺裂について初めて知ったのは、神奈川県立博物館の常設展でした。文台と硯箱に渋い草花紋の銀爛の名物裂が張られたものです。草花紋の銀爛をぜひ本物で見たい、文台はもちろん硯箱にまでなぜ銀爛を貼ったのか知りたい、と興味津々でした。復元品でしたのでいつかは箱根湯本にある早雲寺を訪れてみたいと思っていたのですが、なかなか機会がなかったところ、神奈川県立博物館で昨年度「早雲寺展」が開催された折に鑑賞してきました。

展示室に入るといきなり展示NO.1に早雲寺裂が!!!やはり早雲寺のキラーコンテンツなのだと思いました。その裂はとても品格のある色・柄で、また、特に文台の脚の部分の裂は草花紋が大きくとても立体的な織でした。やっと出会えた!!と感激もひとしおでしたが、キャプションをよく見ると展示の前期はオリジナル、後期は復元品とありました。私は後期に行きましたので、目の前にあるそれは復元品・・・。

早雲寺裂について『早雲寺-小田原北条氏菩提所の歴史と文化-』(1990.3 神奈川新聞社)に次のような説明があります。

織物張文台及硯箱(国指定重要文化財)
「この文台と硯箱は、室町時代後期かに江戸時代初めにかけて盛んであった連歌の会席に用いられたものである。
 中略
この文台と硯箱には、二つの特色がある。一つは「早雲寺裂」と呼ばれる「名物裂」が張ってあること、もう一つは、文台の甲板と硯箱の蓋が、寄木細工のように、桐の小板の縦と横の木目を、交互に接ぎ合わせて、一枚の板を作られていることである。
中略
文台は、室町時代末期から江戸初期にかけてのものが、三十二点(うち九点が国重分)残っているが、蒔絵を施したものが多く、織物を張ったものは、この一点しかないという極めて貴重なものである。」

また、復元品の裂についてですが、龍村平藏(初代)が復元した名物裂の中に早雲寺裂も含まれているそうです。『京都近代美術工芸のネットワーク』(2017.3 思文閣出版)によると、平藏が復元した70種類の名物裂の中に「国宝早雲寺文台裂」があるとのこと。大正12年に販売、昭和32年に再頒布された名物裂の頒布裂帳の中にあるようです。展示品はこの復元した名物裂が張られたということでしょうか・・・。

やはりいつか早雲寺を訪れて織物張文台及硯箱(国指定重要文化財)のオリジナルを鑑賞したい、私にとっては幻の早雲寺裂物語です。

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