着物をまとった電子ピアノ
息子が保育園の頃にピアノを習いたいと言い出し、10年ほど続けていました。保育園の保育時間中にピアノの先生が来てくれるシステムで、働く親としては習い事の送り迎えができないためとても助かっていました。保育園卒園後も息子は保育園にピアノを習いに。小学校高学年の時に一度だけピアノを辞めたいと言い出したので先生に相談したところ、辞めるのはいつでもできるから自分で辞めたい理由を言えるようになったら辞めましょう、とのこと。結局自分で理由を言えるようになった高校入学を機に辞めました。
2年に1回発表会があるため練習用にと電子ピアノを購入しましたが、息子がピアノをやめてからもう何年も弾くことはなくなり、上にモノを置くだけの便利なリビングボードとなっていました。最近、その表面の樹脂製の貼り物が剥がれてしまったため、捨てて新しいリビングボードに買い換えることを考えたのですが、捨てることは簡単だけど甦らせるアップサイクルデザインの道を選択しました。
アップサイクルの方法として剥がれた部分に古い着物の裂を貼ることに。選んだのは、祖母が着ていたという金茶地格子黄八丈。あれこれ裂を当ててみたところ、色あい、柄ともにこれがぴったりはまりました。いつもの経師店で裏打ちをして出張して貼っていただくことに。それはそれは丁寧なお仕事ぶりで、美しく仕上げていただきました。
仕上がった電子ビアノを眺めると、数え切れないほどの記憶がよみがえりました。
息子は何年経っても楽譜が読めなかったため耳で曲を覚えて練習していたと知り驚いたこと、私も連弾で発表会に参加できることになり小さい頃からピアノを習わせてくれた母に感謝したこと、楽器の音がする家っていいなあとしみじみ感じたこと、優しい気持ちでピアノを弾く人に罪を犯す人はいないじゃないかと考えたこと、などなどなどなど・・・。
電子ピアノを知らない世代の祖母は、自分の着ていた着物の裂が張られたことにきっと驚いていることでしょう。着物をまとった電子ビアノの室内装飾織物語です。
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