見出し画像

オリーブの本当の価値を巡る旅④ / 現代環境と皮膚。肌はありのままが良いか?

創業73年オリーブの専門家集団「日本オリーブ株式会社」の5代目 代表取締役社長を務めています、服部芳郎です。

前回記事で、
『第三の脳である皮膚をメンテナンスし、本来あるべき姿を保つことは、見た目の美しさなどではなく、人間が人間として生きるために必須』であり、
『その人間として必須の皮膚のメンテナンスに必要不可欠なものとしてオリーブが重用されてきた』
というお話をしました。

それに対して、
『でもトラブルが無ければ、肌はケアする必要なんてないのでは?』
『人間は、肌も含めて、自然なありのままの状態にしておくのが生物として正しいんじゃないの?』

など、疑問がわいてくるかもしれません。
それらについて考えていきましょう。

現代環境と皮膚

現代の環境において皮膚はどのような影響を受けているか。
まず、湿度についてみていきます。

湿度と皮膚の状態に相関があることは昔からよく言及され、専門家でなくとも「乾燥が激しい冬になったら肌が痒くなるんだよな」という傾向があることは直感的に納得がいくのではないでしょうか。

実際に傅田光洋博士、芦田豊博士、細井純一博士らの研究において、環境湿度が低下することによって皮膚が外部刺激に対して敏感になり、アレルギー性の応答が顕著にあらわれたり、痒みのもとであるヒスタミンが増えたりすることが報告されています。(出典 : 岩波書店「皮膚は考える」傅田光洋 著 )

つまり、皮膚にとって環境湿度の低下、乾燥は大敵なのです。

しかし、現代はどんどん乾燥が進んでいます
下記は気象庁HPのデータをグラフ化したものです。

気象庁HPからデータを抽出。
横軸が年度、縦軸が平均湿度で東京大阪それぞれの傾向を示している。

このグラフを見てわかるように、この数十年で日本の平均湿度は大きく下がっています。その幅は実に十数%にも及ぶほどで、この湿度の低下は急激な都市化によるものと言われます。

平均湿度の低下だけではなく、更に皮膚にとって悪いのが『湿度の急激な変化』です。

先ほど、乾燥は皮膚にとって大敵、と言いましたが、年から年中乾燥している地域に住む人が皮膚トラブルを常に起こしているか、というと必ずしもそうではありません。
何故なら、皮膚(角層)は環境に適応するからです。

外界と人体の境界である皮膚は、外界の変化にあわせてそれ自体変化します。
さきほど述べた、環境湿度が低下することによって皮膚が外部刺激に対して敏感になるという現象も、皮膚が環境に適応するまで外部に対して必死でアンテナを張る状態をつくることが原因で引き起こされます。

その皮膚を環境に適応させる時間は、少なくとも数日から一週間はかかると言われます。
つまり、数時間や半日という時間軸で急激な湿度変化が起こった場合、人間の皮膚は適応が間に合わないのです。

しかし、現代の住環境は湿度変化がいまだかつてないほど激しいつくりになっています。
「高気密・高断熱」という住宅のキャッチコピーを目にしたことがあるのではないでしょうか。
出来るだけ隙間を無くすつくりで外界の気温湿度に左右されない住居は、近年の省エネ志向、ヒートショックへの恐れから大きく支持されています。

しかし、湿度変化という観点ではエアコンのオンオフや、除湿器加湿器の使用によって、室内の湿度は外部と切り離されて急激に変化し、生活者はその急激な変化に肌をさらすことになっているのです。

縁側のある古民家。このような家は中と外が曖昧で、雨が降れば庭が濡れ、晴れた後も土からの水分蒸発で湿度変化はゆるやかに抑えられる。一方、現代のマンションでは雨が上がると同時に急激に湿度は下がる。

つまり、都市化により乾燥が年々進み、かつ住環境の変化で湿度変化が急激になっている現代では、皮膚は今までにないダメージを受けているのです。

ストレス、過度な殺菌による皮膚への影響

現代において皮膚が毀損される原因は、都市化による乾燥や住環境だけではありません。

あらゆる病につながるとされるストレスは、皮膚の健康とも密接に関わっていることは頷ける方も多いと思います。
嫌なことがあると身体が痒くなる、心の疲れがたまると蕁麻疹が出る、といったことは昔から言われることです。

これは、ストレスを受けることにより皮膚が刺激を受けることで反応を示す基準値=反応閾値が下がるという現象、ストレスを感じることで角層のバリア回復遅延が起る現象などによって引き起こされると考えられています。

そして、現代がストレス社会だということを否定する人は少ないでしょう。
コミュニケーションや生き方が複雑化した現代において、よりシンプルに生きようとする動きがありますが、これ自体、普通に生活するだけでいかにストレスフルな生活を送らなければいけないかを示しています。
このような社会で、肌が毀損されないと言い切ることができるでしょうか。

加えて、以前からあった傾向が新型感染症の蔓延に伴い一気に進んだ『過度な殺菌』という生活様式もまた皮膚にとってはダメージを与えるものです。

アルコールの刺激による皮膚へのダメージだけでなく、免疫系のトレーニングに大きな役割を果たしている常在菌まで殺してしまうことで、皮膚はその力を失っていきます。

消毒用アルコールはもはや街中で見かけないことはなくなってしまった。新型感染症への有用性は議論の余地が無いが、皮膚の健康の観点では、アルコールによる肌荒れは勿論、常在菌を殺してしまうという点でも皮膚及び免疫系にダメージを与えている。

つまり、現代環境においては、普通に生活しているだけで皮膚が毀損していく条件がいくつも重なっているのです。

動物も自然物で肌をケアする

ここまで現代環境についてみてきましたが、実は人間以外の生物のふるまいにも、肌に対する正しい考え方についてのヒントがあります。

皮膚をケアする習慣(習性)のある動物は、自然界に驚くほど多くみられます
例えば、鳥類は水浴びをする習性のある種がとても多く、サイや水牛、イノシシのヌタ場での行動をテレビで見たことのある方も多いと思います。

とりわけ象の泥浴び、砂浴びは良く知られ、日差しから身体を守るため、寄生虫を落とす為、体温を下げるため、など様々な効果をこの泥浴びから得ていると考えられています。

象の砂浴び。砂以外にも水浴び、泥浴びと、単に仲間内での遊びに留まらず、自然物で皮膚をメンテナンスするための行為が、彼らの行動の中の大きな位置を占めている。

つまり、人間以外の動物すら、皮膚を自然のままにしておくのではなく、自然物でケアすることを本能から行っているのです。
その中で、人間だけが「皮膚は自然のままにしておくのが一番」と言えるでしょうか?

ありのままでは毀損が進んでいく皮膚

ここまでで
・ 都市化による平均湿度の低下と、一日における急激な湿度変化
・ ストレス過多
・ 過度な殺菌、消毒
により、普通に生活しているだけで皮膚が毀損していく環境が揃ってしまっているのが現代という時代であり、
かつ、人間以外の動物すら、皮膚を自然のままにしておくのではなく、自然物でケアすることを本能から行っている、
ということを見てきました。

したがって、最初に挙げた
『でもトラブルが無ければ、肌はケアする必要なんてないのでは?』
『人間は、肌も含めて、自然なありのままの状態にしておくのが生物として正しいんじゃないの?』
という疑問に対しては
『そもそも、動物でさえ肌を自然な状態にはしておらず、自然物でメンテナンスを行っており、人間も例外では無い』そして
『むしろ過去のいかなる時代よりも皮膚をケア、メンテナンスすべき時が現代』
が答えです。
肌がありのままでいい、などとは到底言えないのであり
第三の脳である皮膚を正統な方法でメンテナンスすることは必須なのです。

次回以降で、この『皮膚のメンテナンス』を何をもって行っていくべきか。
最先端科学を信じるということ、について書いていきたいと思います。




↑ "オリーブの本当の価値を巡る旅"についての次記事はこちらです!

この記事が参加している募集

#企業のnote

with note pro

12,591件