こやまありこ

あの時、あの感情を織り混ぜて、詳細に記すことが好きです。作文をしている時の瞑想感がたま…

こやまありこ

あの時、あの感情を織り混ぜて、詳細に記すことが好きです。作文をしている時の瞑想感がたまりません🥰

最近の記事

塞翁が馬、佳き道へ。10

車椅子用の個室トイレに入り、私の手助けもなく用を足した母と処置室に戻ると 直ぐに看護師から声が掛かった。 「あっ荒川さん!担当した先生が着きましたのでこちらへどうぞ…」 カーテン越しにはおそらく私と同じ位の、親しみ有る表情の男性医師が待っていた。 「大変でしたね~一通り検査をさせて頂きましたので、結果を報告します」 いま冷静に振り返ると これから先は大変な異常事態が脳内などに起こっている可能性も、なきにしもあらずであった事故であったが 「頭を打ったので大きなコブがで

    • 塞翁が馬、佳き道へ。9

      処置室の簡易ベッドのカーテンの向こうで母が薄い掛け物を掛けて横になっていた。 マスクをしていて一見、わからないが 鼻をぶつけて鼻血が多く出て、外見も腫れているようだ。 「いや~心配掛けてごめん、大変な目に遭ったわ…仕事は?」 「1件目の仕事は時間ギリギリだったから入らせてもらったけど、次の訪問は責任者に連絡をして急きょ代わってもらったわ」 訪問介護のような、自分ひとりで対象者宅に回りながらの仕事ではなく、何人かで同じ場所での仕事なら 事故の連絡が有った後は周りのフォロ

      • 塞翁が馬、佳き道へ。8

        丘の上のその病院は 坂を上がりきって目の前に見えるが、入り口が反対側に有るのか、狭くて品の有る住宅街の道をぐるぐる回りながら正面入り口に到着した。 新・旧どちらかと言えば後者か、昔の作りによくある【天井の低い病院】であるため 少し圧迫感は有るが、嫌な感じはしない。 コロナ渦初期で有ったため、病院内でコロナ感染患者が出た件での詳細な説明ポスターが貼ってあった。 こんな、多くの病院が混乱しているなかで 事故が起きてから比較的早めに搬送病院が見つかるのはおそらくラッキーな方か

        • 塞翁が馬、佳き道へ。7

          二子玉川の駅に着き、タクシー乗り場を探した。意外にも駅のロータリー奥の方に有り、わかりにくい。 こんな煌びやかな駅の隅の方にタクシー乗り場を追いやるなんて、歩く事が辛い人のことを考えていないのだろうかと、今は母の方が心配なのに敢えて他人を心配して、自分の心を癒した。 昔の二子玉川駅の、庶民的な感じの方が良かったと、たまにではあるが 来る度に残念な気持ちになる。 「瀬田の日産玉川病院にお願いします、ちょーっと急いで駆け付けなくてはならないので、安全運転ながらも…道など近道

        塞翁が馬、佳き道へ。10

          塞翁が馬、佳き道へ。6

          まず、さきちゃんが驚き過ぎないように…意識は有り電話で話せたこと、身体が轢かれてしまったということは無いことをハッキリ述べた上で、病院に向かっていることを知らせた。 「ちよっ!!え!!大変じゃん!!私の方が病院に近いから先に駆け付けようか?!」 コロナ渦で病棟への見舞いも気楽にできていないと言われている昨今、意識不明などで本当に緊急事態ではない状態… 事故直後、母がとっさに電話で私に 来なくていいからと言った心境と同じだろうか。なるべく大事になりたくない気持ちも込めて

          塞翁が馬、佳き道へ。6

          塞翁が馬、佳き道へ。5

          「交通事故に遭った母に駆け付けるのに私も交通事故に遭ったなんてことになったら笑い話だよな…」 電動自転車のお陰で それほど力を掛けなくてもスピードがあがってくれるが、その独り言の通りになってしまわないように いつもよりも安全運転で自宅に帰った。 搬送された病院に直行するならば、利用者さんの家から自転車でほんの少しのところに最寄駅は有ったが、スマホふたつと仕事の記録紙、最低限の現金しか持って出ていないのでは 心もとない。 自宅に戻り、念のためスマホ充電コード2本、キャッシ

          塞翁が馬、佳き道へ。5

          塞翁が馬、佳き道へ。4

          いつも通りに無事にマンションの1階に到着…デイサービスの送迎車を待つ。 早く上司に連絡をしないと 9時から私が行くはずだった利用者さんのお宅に代わりに誰が入れるか決まらない。 何度も言うが、もちろんこれは【母の搬送先がまだ決まっていなかった・意識も有り命に別状は無い】からのことで その逆であれば、こんなことをしている場合ではないのだ。事情を話し、早急にその場を去れば良い。 ここまで来ると母の事を言ってしまうと逆に、ふたりに気を遣わせて落ち着かない空間になってしまう。

          塞翁が馬、佳き道へ。4

          塞翁が馬、佳き道へ。3

          「おはようございます!今日も宜しくお願いします!!」 私の直前の出来事は、知られても気を遣われるだけなので、ご多分に漏れず仕事人として普通通りに振る舞った。 私の対応する利用者さんは いつものようにおしゃれに支度を済ませ…娘さんとソファーに座って待っていた。 実はさっき、母が交通事故に遭ってしまってなんて言いながらのヘルパーが来たら 私が利用者だったら「帰りなさい!」って言うに決まってるし、そう言ってもひとりで4階からエレベーターの無いマンションでは下まで降りられず、

          塞翁が馬、佳き道へ。3

          塞翁が馬、佳き道へ。2

          「えー?!何処ですか?母の意識は有るのですか?!!」 あと15分で【私が行かないと下に降りられない=出掛けられない人】の家に着かないといけない私に、その電話連絡は…酷過ぎた。 それも、機械操作をしないとマンション4階から降りられない方なので、その免許を持つスタッフは限られているし、そんな間際に誰かが駆け付けるにしても遅すぎる。 私が8時25分までにその方宅に行けないと、デイサービスを休むことになってしまう。仕方ないと言えば或いはそうかもしれないが…なぜこのタイミングでと

          塞翁が馬、佳き道へ。2

          塞翁が馬、佳き道へ。1

          3月27日土曜日…朝8時7分。 6階から下に行くために、エレベーターを待っていた。 今日は休日出勤が2件。 8時25分からデイサービスへの送り出し介助、9時から排泄介助。 1件目は8時40分には終わるから、9時までの20分で?相武台から東林間まで行くのか… 電動自転車なら飛ばせばなんとかギリギリ間に合う…にしても、タイトなスケジュールにされたなぁ。 トイレ行く暇も無いな~と思いながら、苦笑いをしてしまった。 2件目は9時半に終わるから家に帰って洗濯機を回してからカーブ

          塞翁が馬、佳き道へ。1

          最終回) 作文は呼吸・瞑想

          「こやまさん…ちょっと来て 」 勤務時間終わり、フロアの主任に違う部屋…狭いエリアに呼ばれ、扉を閉められ、少し怒っているようでした。 入居者の記録ファイルを数人分、ひらいて私に差し出し 「これは何なの?正式な記録はあなたの日記帳やお遊びのノートでは無いよ!おかしいところを今すぐここで書き直しなさい!!」 おかしいところって…なにそれ? 別に全て自分の文章が正しいとは思いません。しかし私の価値観の上でのプライドを持って書き連ねている私にとって、書き直しほど悔しくて、辛

          最終回) 作文は呼吸・瞑想

          続続) 作文は呼吸・瞑想

          「西田さんの記録は読みやすいし面白いし、字が綺麗でスッと頭に入ってくるよね~…」 西田さんは、私が同じフロアで様々な意味で一番お世話になっている先は輩スタッフです。他のスタッフからも人望が有ります。 ひとりのスタッフが、私にそんな話を持ち掛けてきました。別に私に対して意地悪でも嫌みでも、私にもっと頑張れ!とハッパを掛けてきたのではないと、わかっています。 こやまさんの書いたの【も】面白いよね~というように、ついでに私を褒めたとか、そういうものでもなかったのですが…私の心

          続続) 作文は呼吸・瞑想

          続) 作文は呼吸・瞑想

          二十代~三十代…10年間、私は特別養護老人ホームで夜勤付きの仕事をしました。拘束17時間の中ではもちろん戦場の様な時間帯も有りますが、真夜中は特に何もすべきことの無い時間もそれなりに多くありました。 こんなに長い時間、仕事だ仕事だ!と気が張っていたら疲れてしまいます。ぼんやりする時間では、誰かと電話やメールをしたり、本や雑誌を読んだり、趣味の手作業などもしていても、誰も咎められませんでした。 きっと今の時代なら、器用な人はスマホやパソコンで情報発信したりさまざまなことがで

          続) 作文は呼吸・瞑想

          作文は呼吸・瞑想

          頓挫していた長編を60話のここでいったん、非公開にします。下書きは貯めてるので定期的にアップしますので読んでください。 ま、内容が深刻で暗いので…ちょっと休憩した方が良いです自分は。😅 お付き合いくださっている方々、いつもありがとうございます。そして…新たに、活動再開の際に声を掛けました方々、よろしくお願いいたします。 ☆☆☆☆ 小学3?4?年生の時、江の島への遠足の作文を16枚記しました。授業中に原稿用紙1枚、書き終わって先生の机にまた1枚を取りに行く度に、周りから歓

          作文は呼吸・瞑想

          出口の目線・48

          なんとも言い様の無い、心だか身体だか脳内のモヤモヤ感はいつからだったのだろう。 父が一定期間入院後に亡くなったら誰だって無気力になるし、母が疲れきっているその横で色々と面倒を見ていたら、一段と疲れるのも解る。 …疲れる??いや、疲れるのとは何か違う。 とにかく、何とも例えるのが難しいほどの状態になっていた。 うつ状態になったのは何度か有るが、それと同じか?気分転換をすれば改善するものなのか、よくわからなくなっていた。 日曜日、普段なら早く起きて散歩に行けるのだが、布

          出口の目線・48

          出口の目線・47

          「お義母さんから電話が掛かってきて聞きました。ようやくお義母さん精神科に行けたようでよかったです。内科では診るのも薬を処方するも限界も有りますし、今の症状ははもう、内科ではなく精神科ですね 」 医療従事者として働いている葉子さんは仕事中に毎日、母のような症状を何人も目の当たりにしているから、言葉に重みが有る。 そこで話が本題に入った。 「それはよかったですが、ちょっと何を言ってるんですか!どんな形にしろ、お義母さんがお義父さんの為に考えたことなんだから…それを覆すことを

          出口の目線・47