塞翁が馬、佳き道へ。10

車椅子用の個室トイレに入り、私の手助けもなく用を足した母と処置室に戻ると 直ぐに看護師から声が掛かった。

「あっ荒川さん!担当した先生が着きましたのでこちらへどうぞ…」

カーテン越しにはおそらく私と同じ位の、親しみ有る表情の男性医師が待っていた。

「大変でしたね~一通り検査をさせて頂きましたので、結果を報告します」

いま冷静に振り返ると これから先は大変な異常事態が脳内などに起こっている可能性も、なきにしもあらずであった事故であったが

「頭を打ったので大きなコブができていて心配でしょうが、今のところ脳内の出血は見られません!鼻血もたくさん出ましたが、これは鼻の奥の軟骨にヒビが入りその影響ですね!」

治療というよりは鼻に関してはどちらかと言うと経過観察、ゆっくり動いたりなどで刺激を与えず、もしまた出血が有り気になれば耳鼻科を受診してと指示が有った。

東北なまりの口調で少しリアクションの大きな元気な医師は脳神経内科医、科のイメージとしては気難しく話しにくい感じに思える。

しかし目の前の医師は、柔らかな雰囲気の優しそうな近所の若いおじさん、である。

そのギャップにクスッと笑い、不安な母娘を必要以上に心配させない配慮を感じた。

しかしやはり、頭を打つということは その場かぎりの安心感だけで終わりにできるものではない。

頭部を打った後に注意することが細かく書いてあるプリントを渡され、しばらくは要注意、広い意味では2ヶ月位は注意してくださいという説明で〆られた。

ひとつひとつ、安心して感謝していけば この心配も穏やかに過ぎて終わる…根拠の無い、明るい思いで医師の説明を受けた。

ネットの評価に★5個にしてレビューを書いておこう。

延ばし延ばしにして結局はやらないことが多い私だが、これだけは直ぐにアップした。

先生、読んでくれるかなぁ~

書くことは祈り。

この事をきっかけに私は、母や自分が医療機関で診てもらった後には、良かった点をレビューしてネットにアップする習慣が付いた。

続く。。

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