塞翁が馬、佳き道へ。5

「交通事故に遭った母に駆け付けるのに私も交通事故に遭ったなんてことになったら笑い話だよな…」

電動自転車のお陰で それほど力を掛けなくてもスピードがあがってくれるが、その独り言の通りになってしまわないように いつもよりも安全運転で自宅に帰った。

搬送された病院に直行するならば、利用者さんの家から自転車でほんの少しのところに最寄駅は有ったが、スマホふたつと仕事の記録紙、最低限の現金しか持って出ていないのでは 心もとない。

自宅に戻り、念のためスマホ充電コード2本、キャッシュカードやクレジットカード、その他もろもろを大急ぎで鞄に詰め直して改めて家を出る。

弟には取り敢えず病院に着いてから連絡しよう、まずお金を下ろそう。加害者とは既に警察と話してるからひき逃げではないので保険は降りるだろうけど…

今日は治療費は一先ず自費払いだろうから…手付金としてでも5万位は用意すれば大丈夫かな?とにかく私の方で立て替えておこう。

焦ってる中でも現実的な事を考えられる方が、病院に着いたら母も笑って私を迎えてくれそうだから、なるべくそういう形に気持ちを持っていった。

後で母も含め、何人かに言われたが よくそんな、5万取り敢えず用意すれば良いかな?とか冷静に思えたよね?と不思議がられた。

他人の行動、みんなできるかまでわからないが、玉川病院という これから駆け付ける病院は 不思議な位に閑静な住宅地に有るのは、知っていた。

二子玉川駅からタクシーでも10分少しはかかり、病院の周りにはコンビニひとつ無さそうな 静かな場所だ。

言わずもがな、銀行も…後で考えると病院の隅にATM位は有るかもしれないが、私の家の近くの銀行で降ろしておけば 後がラクだろう。

小田急線でまずは相模大野に出る。そこから江ノ島線で中央林間へ、田園都市線…急行がうまく来てくれれば良いな。

そう考えながら、なぜか夫よりも先に電話をしようと思い付いた、いとこのさきちゃん…母の姉の子、母にとっては姪だ。

そして本来、このコロナ渦では無ければ 玉川病院のそば、自転車で10分ほどの場所に住んでいるし 私よりも早く駆け付けてほしいのだが…

「さきちゃん突然ごめん、ちょっと伯母さんにも伝えてほしいんだけど…」

続く。。



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