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第6話 私は自由なんだって

〜前回までのあらすじ〜
高校二年生のさと子さんはパンが大好き。パン作りが趣味なおばあちゃんと二人暮らしをしています。同い年で起業をしようとしてるでっちゃんに、一緒にパン屋をやるとは言ったものの、悩み始めてしまって…


一度ドツボにはまってしまった思考というのはいつまでもいつまでも続くらしく、でっちゃんとパン屋をやる話をしてから、気づけば2週間以上経っていた。


今日は休日。なんとなく近所を散歩している。さっぱりと晴れた空は、太陽のご機嫌さをありありとあらわしている。

「考えるな、感じろ。」

「ロケットが離陸するときみたいに、新しいことを始めるときは最初が大変。」

「やる前から可能性捨ててどうすんだよ」

「やりたいかやりたくないか。純粋にそれで決めればいい。」

「覚悟はあるのか。本気なのか。」


自分の頭の中で、色んな言葉が反芻してる。でもそれらは言葉でしかなくて、言い換えるならば頭の中を飛び回る活字でしかない。

まして最終決定権をどれかの言葉が持っているわけもなく、ではだれが最終決定権を持っているのかと聞かれたら わたし と答えるほかにないのだけど、では わたし とは何かと聞かれたらもうお手上げである。

これらの思考がどれほど無駄かは分かっている。でもきっと思考そのものが好きなのだ。だから私は思考する。

しかし、私の思考好きを差し引いたとしても、こんな時代で、悩まない方がおかしいのではないか。
時代のせいにして自分を正当化するのは悲劇のヒロインかと突っ込みたくもなるが、それにしても、最近はちょっと生き方が多様化しすぎてやいないか。

小学生の男の子が2人、自転車に乗って駆け抜けていった。車輪に反射する光はとても眩しく見えて、まるで彼らが輝いているのかと思えた。
5.6年生くらいだろうか。
私よりも5つも下の彼らは、どんな道を進んでいくだろう。なんて私が考えてても、彼ら自身はきっと何も考えていない。どうやらこれから友達の家でカードゲームをするようで、そんな話をしている。

…今までの、良い大学に行き良い会社に入り結婚をして子供をもうけてマイホームの1つでも買って、幸せな老後を送る。
このルートが崩れ始め、生きる道を自分で決めていける時代になってきているのは "幸せ" なことなのだろうか。

もし仮にそうだというならば、これが幸せだと言われてきた時代は、"不幸"だったとでも言うのだろうか?

きっとどの時代にも不幸な人がいて、どの時代にも幸せな人はいるのだろう。
その差を生むのは、適応力の有無なのか、たまたまその人の好みの時代に生まれられたらラッキーなのか、自分を幸せに導ける精神力の有無なのか。
私は、どれか1つ選べと言われたら、自分を幸せに導ける精神力の有無に1票を投じよう。

だとしたら、私は自転車に乗る彼らに、カードゲームをやりに行く彼らに、自分を幸せに導ける精神力があると信じたい。
頑張るんだぞ。なんて思ったりして、自分は何様のつもりだろうか。


ものすごく簡単に今の自分を例えるならば、
「問題集の何ページから何ページまでといてくるのが宿題です。」と毎日言われていたのに、ある日突然、「あなたは自分にとって一番良いと思える方法で勉強してきてください。」と、急にポーンと投げ出されて、何をしたらいいかわからなくなっている感じだ。

もっと簡単に一言で言うのなら、自分が自由であることに気づいて困惑している感じだ。

そのことに、
「やろうよ。さと子のパン屋さん。」というでっちゃんの一言で、気づかされてしまったのだ。

なんとなく信じていた、こう進むんだろうなという将来は、自分の意思でどうとでも変えられるのだと。考えようによっては自分の可能性は無限だということを、肌で感じてしまったのだろう。


良い感じの公園に辿り着き、ベンチを見つけたのでそこに座る。
ちっちゃい男の子がこちらを見ていたので会釈をしてみたら、男の子も会釈をしてくれた。
これが挨拶だって分かってるのかな?可愛い。
男の子のお母さんらしい人も、会釈をしてくれた。

私は、持ってきていたパンを出した。もちろんおばあちゃんが作ってくれたパン。クロワッサンの上にチョコとナッツがかかっている。チョコは少しだけ溶けていた。
甘い。甘いよ、おばあちゃん。




つづく

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パンをこよなく愛する高校2年生のさと子さん。パンを作るのが趣味なおばあちゃんと二人暮らし。それが、ある日、パン屋さんをやることに…?!気まぐれ更新中🍞

望月遥菜が書く初の小説です。

「さと子のパン屋さん」一覧はこちら

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私もだーいすき!読んでくれてありがとう!
8
自由気ままに書いてます。ほんとはもちょっと精査したい。
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