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短編エッセイ100本ノック

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記事一覧

『逃飛行 〜ギャップイヤーに思うこと〜』

『逃飛行 〜ギャップイヤーに思うこと〜』

ギャップイヤーはシャイな奴

ここ2年で大学に行ったのは、恐らく両手、もしくは片手で収まるほどの回数だろう。すでに、大学1・2年生の時は足繁く毎日のように通った学校から、物理的にも精神的にも少しずつ距離が離れていった実感がある。よく、片道2時間もの通学路を通い続けたものだ。授業よりも片道の通学の方が長いなんてこともしばしばあった。それでも先日、無事?卒業認可が実家に届き、僕の卒業が決まった。

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『The Sense Of Wonder 〜センスオブワンダー〜』

『The Sense Of Wonder 〜センスオブワンダー〜』

Rachel Carsonという海洋生物学者、兼、作家の女性がいる。僕は存じ上げなかったが、環境に関心のある人にとっては、言わずと知れた存在なのかもしれない。もしくは、書に知識のある人にとって。
彼女は、文章を通じて自然の美しさを伝え、その自然を犯す環境破壊に一石を投じた著書『沈黙の春 ~Silent Spring~』を残した。そして、53歳という若さでこの世をさった。この書、『The Sense

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『アナログの逆襲 −旅行記』 後編

『アナログの逆襲 −旅行記』 後編

15.Jan.21xx(☀︎ →☔︎)の続きを読み進める。

15.Jan.21xx(☀︎→☔︎→☀︎)
 海岸に着く私たちを、遠くから見つめる彼ら。その目は、私たちを流木同様に自然の一部として捉えているようだった。だが、エイリアンではなく、あくまで同じ星の物体として捉えていたように思う。なぜなら、彼らの姿勢や動向に焦りは見えず、あたかも迷い込んだ子羊を迎え入れるかのように、ドッシリと構えていたか

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『アナログの逆襲 −旅行記』前編

『アナログの逆襲 −旅行記』前編

21xx年を生きた人物の旅行記をゆっくりと読み進める。

13.Jan.21xx(☁︎) 世の中は恐ろしく透明になった。
 何もが透けて見えるくらいには、至る所に監視の目がある。衛星システムのレベルが格段に上がり、2000年代前半に発展途上国と呼ばれていた国々が、衛星システムやそれらを用いた情報技術の業界において、発展しすぎて困るほどのレベルに達した。無論、監視の目を背けるための情報バリア技術も非

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『最後の喫煙者』を読んで

『最後の喫煙者』を読んで

現実と非現実とファンタジー。大まかに分けると物書きは書き物をこの三つに分類しているのではないかと思う。

こんなことを考え始めたきっかけは、筒井康隆の短編小説『最後の喫煙者』を読了したことにある。

筒井康隆の世界に、靴を脱ぐための玄関はない。
いわば、土足で出入り可能な世界なのだ。入口を抜けるとわかるが、その世界は土足でないと通りきれないほど、不真面目なアトラクションに満ちている。なんなら、マウ

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『スビックの野良猫』

『スビックの野良猫』

「野良猫に餌やり禁止」

ここ最近、そんな看板を見ることが増えた。別に野良になりたくて野良になったわけではないのに、と思いつつもその公園からは少し距離を置く。

最近気に入っていた公園だったのに。

その公園は日当たりが良い。特に端っこに置かれた黄色いベンチは、昼寝にもってこいの特等席だった。人間も全く来ない。都会の喧騒の中、人間にほとんど会わずに済む場所は珍しかった。

だが、「野良猫に餌やり禁

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『ハッピーアワー』

『ハッピーアワー』

カールスバーグ(Carlsberg)は、デンマークで生まれたビールだ。サッパリとした味と喉越しの良さが特徴で、日本のビールとよく似ている。

このカールスバーグを求めて、足早にコペンハーゲン大学のミーティングルームから飛び出すものがいる。そいつは大のビール好きだが、酒に弱いらしい。いつもハッピーアワーで安くビールを飲んでは、顔を真っ赤にしている。

ハッピーアワーとは、基本的に19時くらいまでお酒

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『雲に立ち向かう船』

『雲に立ち向かう船』

旅に出ると、まず最初に興奮するポイントとして飛行機の窓から見える景色がある。大体の場合、青と白のコントラストを見て「綺麗だな〜」という感想に終わる。だが先日の東北行きの飛行機の車窓から見える空の景色は、少し違った。

そこには、一台のタンカー船がいた。

空から見る船は、まさに雲という巨大な壁に立ち向かっている最中だった。「船がぶつかる!」

そんなわけないことは分かっている。だが、雲と海が一続き

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短編エッセイ100本ノック

短編エッセイ100本ノック

つくづく、自分で始めた何かを最後までやり切るのが苦手なんです。気づけば、終わっているんです。
雨の日をきっかけにランニングが。バイトを終えるのが遅い日をきっかけに自炊が。挙げ始めると、キリがない。

そんな自分に喝を入れようと始めるのが、この短編エッセイ100本ノック。きっとエッセイ以外の何者かが登場する機会も多々あるだろう。

ただ、正直にいうと、書くことは頑張らずとも好きで続けられるのではない

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