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フェミニスト練習帳

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#フェミニズム

種はまかれていた

種はまかれていた

 日本がどんどん戦争をする国になっていて怖い。他の国の戦争や虐殺は対岸の火事ではないし、他の国のことでも多くの人が殺されたり人権を侵害されたりしている状況に恐怖を感じる。この瞬間にも、家で暴力を受けている人や家がない人もいる。私の生き方や仕事は何ができるんだろうと思う。いろいろなことがあまりに早く変わり、知識や積み上げてきたものが追い付けない。 

研究したことが身に染みてきたのは、大学を卒業して

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なぜ分断されるのか 山内マリコ『あのこは貴族』

なぜ分断されるのか 山内マリコ『あのこは貴族』

 読み終わったあと、「私は」と語り始めたい気持ちでいっぱいになった。「私は」に続くことばは、私はこうだった、私はこう思う。きっと多くの人が、この小説を読み終えたときに自分の経験を言葉にしたいと思うのではないだろうか。

 榛原華子と時岡美紀という、全く違う環境で育った2人の物語だ。華子は、渋谷区松濤で、親が整形外科医をしている裕福な家で育った。結婚を望み婚活をしている。物語は榛原家が帝国ホテルで迎

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この「日常」が見える?—映画『アシスタント』

この「日常」が見える?—映画『アシスタント』

 若い女性が朝早く仕事に向かう。まだ誰もいない職場でコピーを取る。出勤した同僚にあいさつしながら資料を配る。気遣いも忘れずに。会長の机に水を運ぶ。重役が散らかした机を片付ける。届いた会長用の注射器やトイレットペーパーを棚に補充する。会長の妻からかかってきた電話―誰も出たがらない―を受けるのも彼女。その後、余計なことを言うなと会長から脅しの電話がかかってくる。彼女は謝罪のメールをする。男性の同僚らが

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「ジェンダー」について学びたいけど何読めばいい?ジェンダー研究6年目、私の本の探し方

「ジェンダー」について学びたいけど何読めばいい?ジェンダー研究6年目、私の本の探し方

「ジェンダー」について知りたい、学びたい。でもどこから始めればいいのだろう?何を読めばいいのだろう?

「ジェンダーを学ぶのにおすすめの本はありますか?」

 文学とジェンダーの授業の初回。学生の質問に、先生は「たくさん、本当にたくさんあります」と困ったように言っていました。そう、本当にたくさんあるのです。長年研究してきた先生はそれこそ膨大な量の本を知っているでしょう。でも質問した学生の気持ちも

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バズ・ライトイヤーと父と私

バズ・ライトイヤーと父と私

 『バズ・ライトイヤー』を観に行った。最高でした。『トイ・ストーリー』シリーズはディズニー、ピクサー作品の中でも渋いストーリーが多いように思うが、『バズ・ライトイヤー』も20を過ぎた人に刺さりそうだった。
というか、今の私に断然刺さった。これは『バズ・ライトイヤー』評ではなく、映画を観て思い出した私の話だ。先に、素晴らしいフェミニズム映画だったことは言っておきたい。ディズニーは時代をいつも映してい

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フェミニズムと文学~今こそ読みたい『スウ姉さん』

フェミニズムと文学~今こそ読みたい『スウ姉さん』

 『赤毛のアン』や『若草物語』に比べるとそこまで有名ではない、気がする。でも確実に今響く、ジェンダーをテーマに扱った小説がエレナ・ポーター『スウ姉さん』だ。河出書房新社から村岡花子の訳で日本語版が出ている。

「原作者のことば」はこんな出だしから始まっている。『スウ姉さん』の主人公は「スウ姉さん」と呼ばれ、家族全員から頼られている女性、スザナ・ギルモアだ。父は銀行家であり裕福な家庭だったが、スキャ

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抗うためのポップな盾 チョーヒカル 『エイリアンは黙らない』

抗うためのポップな盾 チョーヒカル 『エイリアンは黙らない』

 アマゾンやツイッターが「おすすめ」してくることに馴れてから数年。でもやっぱり偶然に会う本や映画も好き。偶然というより、本に引き寄せられている感じがする。そうして買った本がたくさんある。
 意味のないイベントに出かけほとほと疲れた日の帰り、駅近くのショッピングモールで『エイリアンは黙らない』を見つけた。

みて、この目に飛び込んでくる蛍光色とデザイン。

表紙にも、「本文より」にも、岩井勇気と犬山

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『クイーンズ・ギャンビット』と「女ことば」とフェミニズム批評

今日は国際基督教大学ジェンダー研究センター主催のイベント『フェミニストとして書き、訳し、出版する』をZoomウェビナーで視聴した。話し手は作家の松田青子さん、翻訳家の小澤身和子さんとフリアナ・ブリティカ・アルサテさん、エトセトラブックス代表の松尾亜紀子さん。

 内容は4人が翻訳・執筆・出版を通して感じ考えたフェミニズム、それぞれの経験や日本の文学・出版をめぐる問題点について。まだまだ、フェミニズ

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フェミニズム本すごろく(2020/8/19更新)

フェミニズム本すごろく(2020/8/19更新)

ジェンダー、セクシュアリティ、フェミニズムに関する本を「すごろく」の形式で紹介します。オンラインでやるので綺麗なすごろくの形にはなりませんが。これは以前『天然生活』がやっていた特集を真似しました。

この順番に読んでも、読まなくても、逆流しても、横から見ても下から見ても。暴力(DV、性暴力)虐待などへの言及、描写を含む本のタイトルの横には*(アスタリスク)をつけています。

1. 性自認、性的指向

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各地のフェミニスト本屋リスト(2023.07.31更新)

各地のフェミニスト本屋リスト(2023.07.31更新)

2020年に書いた、「フェミニストとしておすすめする本屋6店」に加筆しています。閉店してしまった本屋もありますが、記録として残しています。また、フェミニズムに特化した本屋でない本屋も入れていますが、店の発信する情報や置いている本からみて好きなところを選びました。

2020年当初書いていた文-----

フェミニストとしておすすめする本屋て何か、というと、フェミニズム・ジェンダー・セクシュアリティ

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