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アメリカの文系博士課程ってどんなとこ?

こういう疑問、皆さんありますね?ありますよね?あるって言うんだ。

こんにちは、Harryです。

というわけで今回はアメリカの文系博士課程について、日本と比較しながら紹介してみようと思います。



というかそもそも日米問わず文系の博士って何してるとこなのよ?

簡単に言うと週に何コマか授業/ゼミに出て、残った時間は院生同士で飲み会したり、BBQしたり、旅行したり、スポーツしたりするすごく健全なところです。

よく学びよく遊ぶ。

現代社会に残された最後のエルドラド!

さあみんなも博士課程へ行こう!!!!




ごめんなさい、冗談です。

仕切り直しましょう。



<日本の文系博士課程>

まず日本の文系博士課程ですが、人によって異なりますが、大体5-9年くらいで課程を終えます

博士論文という論文を書いて、その審査に合格すれば、晴れて博士号を授与されます。

また、博士号を得るために単位を取得する必要があり、授業/ゼミを取ることになります。

私のいた大学院では、博士の人は大体週に2コマくらいゼミをとっていました。

そこでは、教員のシラバスにしたがって、様々な本や論文などを読んでプレゼンやディスカッションをします。

授業時間は1時間半ですが、ゼミによっては長い場合もあります。

一つのゼミにつき、毎週大体英語で50~100ページくらい読むと思います。


その他の時間では、まず自分の研究をしています。

個人のテーマに沿って博士論文へとつながるような論文を書いたり、研究発表したり、読書したりしています。

日本の文系アカデミアの就職に特徴的なのは、博士号を取得する以前に最低3本の査読付き論文を出版しなければ、常勤職を得にくいという点です。

基本的に、私の分野では、その内最低1本は英語論文である必要があります。

これ実際結構しんどいです。

論文を出版する媒体の数が少ないし、査読も厳しいし、泣きたくなっちゃうよね。

アメリカだとこういうことはなくて、ほとんどの人はpublicationなしで博士号を取得し、その後からキャリアを形成していきます。


そして日本の博士課程の大学院生にとって最大の問題がお金です。

これを得るために日夜アルバイトに精を出すことになります。

実家の太い院生以外みんなお金ないんだよ。学食は食い飽きた。

実際、学振を取るまで、私は週4日で予備校のアルバイトをしていました。

学振というのは、日本学術振興会特別研究員の略で、採用されれば2~3年間月額20万円の生活費と研究費が割り当てられる博士課程向けの、マジモンの、返済不要の奨学金です。

みんな喉から手が出るほど欲しいやつです。

倍率は高いですが当たればでかい。

あと国立大学だと学費免除申請というのができて、多くの大学院生は、私も含め、独立生計にして親の扶養から外れることで免除を受けていました。

私立大学はガッツリ学費取られます。最近は免除制度のある大学もあるようですが。

また、国立大学は学生寮を持っており—京大の吉田寮が有名です—、私も類にもれず寮に住んでいました。

シャワールーム、キッチン共有、水光熱費含んで大体1万円くらいでした。なお上の吉田寮は月400円の模様。

実家が大学まで通学圏内にある人は羨ましい。

そうでない人は必死で金策に時間を費やします。


また、私の場合は博士から教職を1から取り始めたので、週に12コマくらい授業が入っていました。

若いからできたなぁ。今じゃ無理。

でも教育実習とかほんと楽しかった。

英語の免許でしたが、パラメーターカンスト状態で母校凱旋できるので、好き放題できました。

余談ですが、あれだけチンピラしかいなかった母校が、大きく様変わりしていたのには驚きました。

みんな真面目で優しい!体育の授業に飛び入り参加しても接待プレイしてくれる!先生は嬉しいよ。

現役の頃、素人舐めプしていたイキリサッカー部は絶対許さないよ(ニチャア)


そんな感じで日本の文系博士の学生は、お金をせっせと稼ぎながら、安い家に住み、安い飯を食べて、寝る間も惜しんで研究をしています。

昔ながらの苦学生。貧しくも美しい姿ですなあ。これからも低コスト高品質の日本の未来を背負っておくれ。

っていう清貧イデオロギーは社会問題だと思うので、なんとかしてくれ。まじで。



<アメリカの文系博士課程>

一方アメリカの文系博士ですが、基本的には6年で終了します。

延長もできますが、その間は大学から何もファンディングが受けられなかったりとかなり厳しいので、お金に余裕がある人以外は、6年以内に博士号を取ります。

最初の3年間はコースワークといって、授業を取って博士号取得に必要な単位を揃えます。

うちの大学の場合は72単位。一つの授業が4単位なので、3年間に18個授業を取る必要があります。

クオーター制なので、1クオーターに2つ取れば、3年で取り終わる計算ですが、大抵の場合は2年で取り終わります。

3年目は博士候補生(Ph.D. Candidate)になるための試験があるので、そちらに集中するためです。

ちなみに、日本で取った大学院レベルの単位をアメリカに移すこともできます。

私はこの制度にかなり助けられました。


で、気になるアメリカの大学院の授業ですが、めっっっっっっっっっっちゃしんどい

日本の比じゃない。さすが物量の国です。

予習で大量に読ませる。とりあえず詰め込む。限界まで追い込む。

もちろん中にはゆるーい授業もあり、オアシスになっていますが、それ以外は砂漠です。

中でもこちらに来て最初の授業が今でもトラウマです。

毎週2-300ページくらい読んで、授業1日前までに課題に対して1000words以上の応答を書いて提出、授業では発言しないと出席点を与えない、mid termとfinalで5000words以上のペーパー。

ペーパーに関しては、ネイティブ、ノンネイティブ関係なく書き直しを食いました。

担当教員に研究者を育てるのだという使命感と学生への愛は確かにあった。

しかし容赦はなかった。

君たちの書く文章はおよそ大学院レベルに値しないとか平気で言われました。

ちなみに私はfinal paperの出来が悪すぎて、次の学期が始まる直前まで書き直していました。

給食全部食べるまで昼休みに入れない小学生みたいな心境でした。

地獄だったなぁという話を同期とよくします。


で、コースワークの終わりにComprehensive examとかQualifying examと呼ばれるものがあります。

これを突破すると晴れて博士候補生となり、博士論文を書くことが許されます。

この試験は大学によって内容は多少異なりますが、大体きついです。

私の大学の場合、3年生の秋学期に30-50ページくらいの論文試験用の論文を書きます。

で、冬学期と春学期に試験用のリーディングリストにある本を最低100冊読みます。

ラノベなら余裕ですが、研究書なのでバチくそ時間がかかります。

そして最後に春学期の終わりに筆記試験と口頭試験があります。

筆記試験は4時間が2回。口頭試験は1回で2時間です。

これもやっぱり過酷すぎて思い出したくない出来事ですね。



で、最後にアメリカの大学院生の懐事情ですが、やはり貧乏です。

が、ある程度のレベルの大学なら博士の学生にはTAなどのファンディグが用意されています。

ファンディングがないところは博士であっても彼らを資金源としか見てない場合があります。要注意です。

ある程度以上の大学であれば、博士への支援は大学の評判を高めるための投資であると考えられています。

彼らが将来いい仕事をすれば、その出身大学の評価も上がるというわけです。


で、TAとはティーチング・アシスタントの略で、学部生相手に語学やアカデミックライティング、基礎科目の授業を行ったり、専門科目で教員の補佐などをします。

大体50%TAというのを割り当てられますが、これは週20時間の労働を意味します。が、みなし労働なので実働はこれよりも少ないです。

私の大学の場合50%TAで、授業料免除と月22〜23万円程度の給与が支払われます。

アメリカの公立大学の博士課程で、TA等のファンディングがない場合、フルブライトなどの奨学金がなければ、留学生には年間4~500万円くらいの授業料がかかってきます。(私立の場合は話が違います)

また、給与も一見十分なように見えますが、カリフォルニアは家賃や生活費がバカ高いので、実際はそうでもありません。

私の大学付近の家賃相場はStudioで1500〜1700ドル、1B1Bで2000ドルです。

実際は友人とシェアなどをしており、家賃はこれより低く抑えられますが、それでもやはり高い。

外食は大体一回10ドル以上。

これに加えて、本など必要なものを買う必要があるので、生活はほとんどカツカツです。

しかも夏は大学が休みなので、その間は給与が支払われません。

早く大学教員になってこの極貧生活から抜け出したい、と多くの大学院生が願っています。


とこのように、アメリカの文系博士もまあまあお金に苦労しながら勉学に励んでいるわけですね。

しかし入学の段階で、ある程度のファンディングが約束されており、勉強にさける時間も多いので、相対的に見て、私はアメリカで博士号を取る方が経済的にも精神的にも良いのではと感じています。

また日本人留学生は日本学生支援機構(JASSO)からの返済不要の奨学金にも申し込むことができるので、採用されれば生活が楽になります。

学振の採用率が15-20%な一方で、JASSOは30%程度のなので、こちらの方が若干通りやすいです。

そして何よりアメリカで博士号を取って日本に帰った際、日本のアカデミアのジョブ・マーケットにおけるアドバンテージはでかい。

こういう理由から個人的にはアメリカをお勧めします。


一見暗い話題だったように思えますが、いいことも色々あります。

例えば?ん、色々だよ、色々。言わせんな恥ずかしい。

さーて、希望に満ち溢れてきたところで今日はおひらき!

さあ、みんなも博士課程に行って、博士号をとって、日本の未来に貢献しよう!!!!!





え?私がどうやって生活しているかですか?

そらもうMaryにおんぶに抱っこですよ。

いや、これについてはいずれ詳しく説明させていただければと思います。

我々夫婦は円満です。



Harry





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