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播磨陰陽道

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#心霊現象

近世百物語・第七十一夜「ゲーム会社の怪」

近世百物語・第七十一夜「ゲーム会社の怪」

 ビデオゲームの会社へ通っていた頃、よく社内で心霊現象に遭遇することがありました。
 当時、私はゲームセンター用のゲーム機を開発する仕事をしていました。いわゆる〈ゲームクリエータ〉と言うやつです。
 会社では企画とかゲームデザインとか色々なことをしていました。人手不足だったので何でもやらされていました。それこそデザインから半田付けまで出来ることは何でもです。
 もちろん夜中までのデータ打ちは当然の

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近世百物語・第六十三夜「あれこれの心霊写真」

近世百物語・第六十三夜「あれこれの心霊写真」

 世の中には〈心霊写真〉と呼ばれるものがあります。その多くは錯覚ですが、中には錯覚とは言いがたいものもあります。自分で心霊写真を撮ることは少ないですが、職業柄、心霊写真の判定やお祓いを頼まれることが多いです。
 『怖い話のウラ話』第10話にも書きましたが、心霊写真は自動プリント・マシンが発明されてから世の中に増えました。それまでは写真屋さんが手作業で現像していましたので、奇妙な写真はおおぴらに現像

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近世百物語・第六十夜「お遍路さん」

近世百物語・第六十夜「お遍路さん」

 子供の頃、よくお遍路さんを見かけました。四国の八十八ヶ所を歩くあのお遍路さんです。行くところへ行けば珍しい姿ではないのでしょうが、なにせ十勝平野のことです。北海道には弘法大師の霊場などあろう筈もありません。それどころか寺や霊場すらあまり見かけません。お遍路さんたちの姿は、いつでも必ず、祖母の家の近くでのみ、見ていました。しかも夕方か夜にしか見たことがありません。
 お遍路さんどころか、虚無僧の姿

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怖い話のウラ話・第17話「コップ酒の悪霊」

怖い話のウラ話・第17話「コップ酒の悪霊」

 ある番組で、自称霊能者の方が、
「コップにお酒をついで、部屋の真ん中に置いておくんです。翌日、お酒の味が落ちていたら悪い霊が入っているので……」
 と言いました。
 おいおい、悪い霊が入っている酒を味見するなよ。誰が考えるんだろうねそんな非常識なこと。仮に、もし悪霊が入っているお酒を飲んだとしたら、体内に侵入しますから……。悪霊を確かめるくらいのことで、人生が終わりになる可能性もあります。しかも

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近世百物語・第五十九夜「太陽が隠れる時」

近世百物語・第五十九夜「太陽が隠れる時」

 日蝕は太陽が隠れる現象です。古くから不吉なものとして考えられていました。『古事記』の中にも日の神がお隠れになって後、

——神々、手足の置きどころなく、萬の厄、ことごとく起これり。

 と伝わっています。

 いつだったか日蝕の時に亡霊を見たことがあります。街に溢れるような不気味な黒い人影の集団だったので、もしかすると亡霊ではなかったのかも知れません。その時は、たくさんの不気味な気配がして騒がし

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近世百物語・第五十七夜「目をそむける人々」

近世百物語・第五十七夜「目をそむける人々」

 何年も前のことになります。大阪の福島駅構内で昼間に幽霊を見ました。私は友人と改札を出て、ふと、妙なことに気づきました。改札前を歩く人々が、ある場所を避けるように流れていたのです。かなり混雑した時間帯にもかかわらず、すべての人がある一箇所を見ないように歩いています。
——何だろう?
 ふと、見ると、若い女の子が立っていました。まわりの人全員が女の子を避けるように歩いているように見えました。
「なん

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近世百物語・第五十六夜「溺れた時のこと」

近世百物語・第五十六夜「溺れた時のこと」

 雨を降らせることを〈雨乞い〉と言います。雨乞いは、必ず河魄に願うと知ったのは、まだ中学生の頃でした。
 祖母の言葉に河魄の正体を知り、
——では、祈ってみよう。
 と思いたち、河魄の像を粘土で作って祈ることしばし、やがて、たいへんな雨が降り出しました。河魄とは、いわゆる河童の霊のことです。しかし、河童そのものではありません。河童に似ているので、キュウリを置いて祈ります。キュウリの断面は牛頭天王の

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近世百物語・第五十五夜「虫の知らせ」

近世百物語・第五十五夜「虫の知らせ」

 世の中には、奇妙な虫たちがいるものです。そして、時々、奇妙な飛び方をして人の世に何かを知らせようとするようです。
 この虫たちの行動は、昔から〈虫の知らせ〉と呼ばれています。虫の知らせは、死ぬ人々が死ぬ前に、遠くの人々に別れを告げに来ることです。
 祖母は、良く、
「虫が妙な飛び方をする時、虫の知らせが起きる」
 と言っていました。

 ある時、窓を完全に閉め切っているのに、まるでガラスを突き破

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近世百物語・第五十四夜「黒い穴」

近世百物語・第五十四夜「黒い穴」

 ある時、和歌山県の自殺の名所に、友人たちと旅行したことがあります。別にそこへ行きたかったのではありません。たまたま目的地付近の観光地が、自殺の名所だったのです。その時、岸壁を歩いて洞窟のような場所に行くことになりました。すると、私の目の前に野良猫がやって来て、足元で脅すような唸り声を上げました。何やら不気味な唸り声は、とても不思議な感じがしました。
 ふと、気がつくと、野良猫が座っている後ろに小

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近世百物語・第五十三夜「デ・ジャブ」

近世百物語・第五十三夜「デ・ジャブ」

 良く〈デ・ジャブ〉と言う言葉を耳にします。デ・ジャブはフランス語です。これは一度も経験したことのない出来事を夢で見たりする現象のことです。
 子供の頃は、未来に行く場所とか、出来事とか、会う人の夢を先に見ていました。かなり頻繁に見て記憶していたので、自分の未来をある程度は知っていました。大人になってからはそう言った夢を見ることは少なくなりました。それでも時々は見るものです。
 デ・ジャブは夢でし

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近世百物語・第五十二話「コロポックル」

近世百物語・第五十二話「コロポックル」

 祖母がまだ幼い頃、
「何度も化け物に出会って、その度に、おじぃが退治してくれた」
 と話してくれました。化け物を退治したのは、祖母の父ではなく、祖母の祖父のことでした。
 祖母の祖父は、若い頃に内地から逃げて来たので、随分、苦労して開拓したと言っていたそうです。明治政府は陰陽師を禁止し討伐隊まで出しました。

——陰陽師は、徳川幕府の威光を笠にきて、諸国を自由に行き来するので、断じて禁ずるべきで

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近世百物語・第五十一夜「祖母のお客様」

近世百物語・第五十一夜「祖母のお客様」

 何度か百物語にも書きましたが、幼い頃、私は祖母の家に預けられていました。母が病弱であったこともあり、私が祖母の家を気にいっていたこともあり、幼児期の記憶のほとんどは祖母の家での出来事です。祖母は不思議な人でした。もちろん、私に播磨陰陽道を伝えてくれた人です。しかし、それ以外にも、色々と不思議なことをしていました。
 何度か鳥や動物たちと話しているのを見たことがあります。単に話しかけていたのではあ

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近世百物語・第五十夜「常世春の国」

近世百物語・第五十夜「常世春の国」

 第四夜で書いた姉のような優しい幽霊たちが、最近、夢に現れます。もう私の年令は、彼女たちの死んだ歳よりずっと上になってしまいました。あの場所に帰ると私は子供に戻るようです。いつも同じ場所、いつもと同じく暖かく迎えてくれる優しい家。たとえ幽霊屋敷であっても、時々、ふと懐かしい想いがして帰りたくなります。
 彼女たちが夢の中で語るには、
「生きている人たちが常世春の国と呼んでいる場所にいる」
 そうで

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怖い話のウラ話・第15話「百物語のこと」

怖い話のウラ話・第15話「百物語のこと」

 よくある百物語をしたと言う実話だと称する体験談。百人が各々ローソクを持ち寄って一話ごとに吹き消すそうですが、ちょっとおかしくありませんか?
 たとえば、あなたが百物語に参加したとします。真夏の夜のことです。少し暗くなった頃ですので、だいたい夜の七時半くらいでしょか?
 まず、最初のひとりが恐怖体験を語り出します。次の人が、更に怖い話を語ります。そうやって何人か語り終わるたびに、ローソクを吹き消す

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