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摂食障害の長い長いトンネルを抜けて~元摂食障害当事者からのメッセージ~253


「う~ん、何だろ、ただおいしかった。それだけ」

口直しに、氷で薄まってきているアイスコーヒーを飲んだ。まだ微かに残る苦味が、パフェの甘さと濃厚さとの、絶妙のコントラストを感じさせた。

しばらく、ぼお~っとしてしまった。空のパフェグラスを、見るともなく眺めていた。本当に、おいしかった。ただそれだけだった。

「冷たくて、甘くて、クリーミーで、それでいて爽やかで、おいしかった」

この暑い中、木陰とはいえ公園のベンチに座っていたので、思った以上に疲れたのかもしれない。それとも、久しぶりにお店でパフェを食べて、ただただおいしかったことに感動したのかもしれない。とにかく、動こうという気が起きなかった。トイレに行かなきゃとか、吐かなきゃとか、そんなことを目まぐるしく考える気力がなかった。身体も頭も、思うように動かなくて、ただ椅子に座っているのが今の私の精一杯だった。

「でも、それでいいんだよね。そんな日があってもいいんだよね。暑い中、街中歩き回って、ろくなお昼も食べないで外で過ごして、やっと休めたのだから。やっとまともに食べられたのだから。しかも『おいしい』しか思い浮かばないくらいおいしかったのだから。私だって、いつでも超高速で、瞬時にあれもこれも判断出来る訳ではないのだから。たまにはぼお~っとして、座ったまま動けなくてもいいんだよね」

これからどうしよう……まだまだ食べられる気もするし、まだまだ食べたいものもある気がするけれど、この後電車に乗って家へ帰ることを考えると、何だか疲れてしまった、というか面倒くさい気がした。アイスコーヒーも飲んでしまったし、とりあえずこのお店は出ることにした。

「食べることに対して『面倒くさい』なんて、今までの私からしたらあり得ないよね。何だかおかしい」

何だか今日は、自分で自分のことを『おかしい』って思うことばかり。そのことすら、何だかおかしかった。


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