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#小説

小説 『ステイザナイト』 7/2文章会より

こんにちは。 今日は7月2日に行われた「文章会」(小説や詩を持ち寄り、評価・感想を交換する会)で提出された橋内日向さんの作品『ステイザナイト』の全文を公開いたします。 文章会のテーマ『夏』『深海魚』にあわせ、社会のアングラ=深海の水圧のなかでしか生きられない若者たちの姿を、その狭間で揺れる主人公の刹那的な視点から描く一夏の物語です。 橋内さんは、11/20の文学フリマで頒布される東京大学文学研究会の機関誌『駒場文学96号』でも、小説『花火が、枯れるまでは』『私がときどき憎む

四半世紀。四半世紀。

子供の頃、何故か半世紀という言葉が好きだった。世紀という言葉にはそこまでの魅力を感じなかったけれど、半世紀とか四半世紀とか。何かよく分からないけど好きだった。 多分、世紀という言葉の色合いが藻というか、明るい抹茶色のイメージだからか。まあ、これも私の世界から見た色彩なのだけれど。 半世紀という言葉はオフホワイトのような。歴史の書かれた書物が綺麗に保たれて白を遺しているような。あの初秋に図書館の隅で見つけた古びた書物の、少しだけ黄ばんだ紙の色に似ている。 人生が百年時代に

華子の日記「マコトくんとヨウちゃん」backnumber

私は夫が旅立って音楽が聴けなかった。 夫がいなくなって「なぜだかわからない。」というしているのか。 記憶を閉ざそうとしているのか。わからない。 恥ずかしい話だけど。 女性風俗の世界を知って心も扉を開いたのか。青春時代の曲を聴き始めた。 そして子供たちがよく言聞いていたbacknumberを最近聴くようになった。 子育て真っ最中の時は耳にも入ってこなかったバンド。 きっかけは忘れたけど。 マコトくんが「いいよね。backnumber。」と言ってからますます曲を聴くようになっ

架空想日記 7日目

 夜風を浴びる。夏の深夜、誰にも見られずに街を歩く。見知った道を歩く。目的も無く。ただ足を進める。 その先に何があるのかは知らない。どうでも良いことだから。  上を向く。満天の星とまではいかないが星々がきらついている。遠すぎて宝石には見えないな。そんな感想が出る。街灯の方が輝き白く、眩しい。人工の光の方が強くて、自然の星々は遙か彼方。 私のことなど誰も見る気が無いようで、偽物だけが私を見つめる。その光景がなんだか笑えた。  下を見る。コンクリートの道がまっすぐ伸びている。

超短:ホスピス

息子と同じく、生後すぐNICUに入院していたお友達、翔太君がホスピスに入ったそうだ。来月2歳になる。病名は違うがうちの子も重い病気を持って生まれ、NICUでは母親同士辛い気持ちを共有していた。うちの子は心臓病で、手術で寛解したが、翔太君は頭の中に腫瘍があるそうで、手術も出来ず日々悪くなってきているとは聞いていた。明日の命を不安に思っていたあの頃とは違い、生きているのが当たり前になっていた。一気に半年前までの不安な気持ちを思いだしている。だから私には、元気になってねとか、治った

掌編小説301(お題:しゃべるピアノ)#ショートショートnote杯応募作品

ド、レ、ミ。 鍵盤を人差し指で叩いて、亜乃ちゃんは驚きました。 「おねえちゃんのピアノ、おはなしするんだ!」 お姉ちゃんは宿題のプリントから目を離さないまま、つまらなそうに答えます。 「ピアノは『鳴っている』っていうの」 「しゃべってるよ」 「それは『音』っていうの」 ミ、レ、ド。 もう一度人差し指で鍵盤を叩いて、亜乃ちゃんはお姉ちゃんのほうをふりかえりました。 「いまのはね、ミ、レ、ドっていったの。あのにはわかるよ。へんなことば!」 お姉ちゃんはぎょっと

『しゃべるピアノ』☆彡

「おーい!今日は弾かないのかい?」 部屋の隅から、古びたアップライトピアノが声をかけてくる。 何年もほったらかしにされていたことに業を煮やしたのか、ある日突然しゃべり始めたかと思ったら、毎日自分を弾くようにとうるさく言ってくるのだ。 俺が無視していると、ピアノはさらに声を張り上げた。 「聞こえないのかな?もしもーし!」 しぶしぶピアノの前に座り、楽譜を開いた。子犬のワルツを弾き始める。ずっと調律していないせいで、微妙に音程がずれている。 「また同じ曲?」 うんざ

第49話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

一冊の本が音もなく落ちた。静寂すぎる図書館は余計な音さえも吸収するように消した。僕は本を拾い上げると、脚立の上に立つ女性へ手渡した。女性が慌ててお礼を言ってきた。 僕は女性の声を聞いて、微かな記憶を思い返す。ノイズのない綺麗な音域で構成された声。僕の耳にはそんな風に聴こえた。それは幼かった僕が覚えていた声と一緒だった。 無意識で僕は女性を見つめていた。あの頃より短めのポニーテール。切れ長の目に、薄い唇が二つ重なった小さな口。きめ細かい肌は艶やかな滑らかさを醸し出していた。

【小説】ピアノの音を奏でたとき

monogataryで小説を書きました(^^) #omoinotake #告白 に応募中です! https://monogatary.com/story/176137 是非お楽しみください♪

ブラックピアノ 修正版第一話 ゼロから始めるピアノ最終回 だいたい毎日投稿 四日目

 加藤凛斗は妹の加藤凛音とともにピアノの練習をしておりあと一か月あるかないかぐらいになったー あと曲の発表まで残り22日。 (最後の仕上げに取り掛からないと。) 俺はいつも道理家に帰って凛音に笑顔を見せてから練習に取り掛かった。 俺は二週間ぶりにピアノを弾いた。 「じゃあ、お兄ちゃん、ここ、弾いてみて。」 「ああ。」 全て完璧にひけた。 「これであと時を待つだけだね。」 22日後ー 今日はトルコ行進曲、発表の日。希美からは「放課後に音楽室にきて。」と言われ

【短編小説】かたすみのピアノ

(※画像は「みんなのフォトギャラリー」からお借りしたものです。) けたたましい音を立てて、電車がホームについた。人々はいつもと同じように流れを作り、流されながら改札をくぐり街へと繰り出してゆく。 雪子はいつも通りの道を行きながら、いつもと違うことを考えていた。先週亡くなったある友人のことである。その人はかつて雪子にこう言ったことがある。 「自分一人がいなくなったって世界は何の変化もなく、回り続けると思うんだ」 その言葉に何と返事をしたか、雪子は覚えていない。「そんなこ

怪談・笑うピアノ|短編小説

 青鳥学園には、「笑うピアノ」という七不思議が存在する。  筋はこうだ。昔の青鳥学園にエミコという女子学生が在籍していた。とても気質の良い明るい子で、先生に急な頼まれごとを任されても、テストで悪い点をとっても、エミコはいつも笑っていたらしい。そんなエミコは学年では大層な人気者だった。  しかし、それをよく思わない生徒がいた。その生徒はいつも笑っていたエミコをどうにかして悲しませようとあれこれ手を回したが、何をしてもエミコはずっと笑ったままだった。それでとうとう、エミコを夜の音

「逆行 太宰治」【5/29執筆】

↑青空文庫なので0円で読めます、オススメ 太宰治の「逆行」を読んだ。タイトルが謎である。 「逆行」とは、ものの順序や流れにさからう方向に進むこと。なるほど、この小説は四遍が逆行して進むのではないか。仮説を立てて読み進めた。 蝶蝶は死ぬ間際、盗賊は大学時代、決闘は高校時代、くろんぼは少年時代、時代が逆行しているのだろうか。 だがしかし、ここでまた疑問が浮かび上がる。「逆行」は、四遍を繋げて読むのか、別々に読むのか。四遍に明確な関連性が認められず、盗賊は帝国大学新聞に、そ

音楽室

「夢の中でおれは一回死ぬ。」 「正確には、夢という概念の中の深くに入り込んだおれはつまり死んでいることになるのだ。その際、だれかがおれの代わりに生きているはず。ということはつまり、その者のためにおれは死んでいることになるのだ。地球は反転する。それと同様に、生死も夢を機に反転する。」 そういう思いに急激に憑りつかれ、そして苛まれながら、おれは地球儀を回していた。 クルクルと勢いよく回る地球儀はおれの手に従ってまわり続けているのだが、おれからするとその状態がまたどこか寂しく