【小説】見えないものには蓋をするんだよ
「見えないものには蓋をするんだよ。」
僕が中学生の時に先生が授業中に言っていた言葉だ。
その先生は白髪と白髭を生やしていて、
いつも藍染の作務衣に下駄という風貌だった。歳は70歳らしい。その出立ちで颯爽と廊下を歩く様子が雲に乗って移動している仙人のようだと、生徒から仙人先生と言うあだ名を付けられていた。
仙人先生は、やっぱり見た目通りで、
僕たちに日本史を教えてくれていた。
僕は、いかにも歴史上に出てきそうな風格ある先生から繰り広げられる日本史の授業が大好きだった。