いしや

読書が好きです。

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最近の記事

グルグルコンビニ

車でコンビニに来た。 駐車場はいつものように、やや端に止める。ここは、邪魔じゃない場所。いつも居やすい。 コンビニの中を回る。グルグル、と入念に。他の人より、長く居座る。迷惑より、欲が勝つ。良くない、良くない。 ヨーグルト、牛乳。少し高いが、買いやすい。 店内を一回り、二回り、だいたい回ることが出来た。上出来、上出来。 グルグル回る、グルグルと。 ふと、思う。 ぼくはいつも、同じところをグルグルと回っているのだろうか。安全だから、それがいい。 よく、「勉強しよう」とか、

    • 3人

      うつ向いて歩いていた。暗いトンネルの中のようだ。気分が滅入る。歩くときに右足を出すのは、どういう感覚だっけ。と、うろ覚えになる。1歩、2歩。そういうことを考えている間に歩いた距離は、相当になった。 右手にコンビニがある。どうしようか。通り過ぎようか、何かひとつ買い物をしようか。そう考えていると、どうでもよくなって、通り過ぎた。周りが暗すぎる。明るい所に行こう、と思った。 ふと、右後ろを見ると、人が歩いているような気配を感じた。暗いので怖い。しかし、そちらを見るが誰もいなかった

      • 浮沈ありし王者生還

        物事の通りとは、いかなる時も無残であるべし。 もし、仮にであるが、あなたがこの世に生を受けた当初から、あらゆる叡智・権力を所有していたとしよう。 さうした時、あなたは、あらゆる万物を越え、功を為すとするであろうが、そこに意味は存在し得ない。 なぜなら、当然の達成であるに過ぎないから。 「当然」は人の心を動かさない。 そう言ったものを、一度として外さずとも、誠心誠意ものごとに精進し、自らの反対側からの使者とも和解し、こちらのあるべきものを伝え、ゆったりとした流れの中で

        • 傷有り、横たわりにより、彼盲目、女知らず

          知らない。知らん。知りたくない。知る?でも、知りたくないような……。そうは言っても、そう思うこともぼくの我がままなのか? このように、ぼくは、ぼくの中での言い訳を並べ立ててみたが、それでも、ぼくには理解できない。 彼女の体の、心の、島のようにも見える傷。ぼくの目には一際、目立つ。最初から、それしか目に入らないぐらいに。 でも、その傷は氷山の一角。見えていた部分は、ただの一握りでしかなく、ごく一部の材料だけでしかなかった。 ぼくは彼女が苦しそうに見えるから手を差し伸べた。

        グルグルコンビニ

          懺悔(ざんげ)

          寒い、と思ったら、部屋の中だった。 誰もいない。そう思う。 でも右側を見ると、ひとりだけいるみたいだった。 もう、ぼんやりしてほぼ見えない。見覚えがあるような、ないような。元気に見えるような、元気がないような。苦しんでいるような、苦しんでいないような。 私の手は、もうすでにしおれていて、力を入れようとしても、できなかった。左手も、足もやってみたが、ひとつも力が入らなかった。 この前、目が開いたとき………。一昨日だったかな、今見た人とは別の人が、それも何人かいたような。その記憶

          懺悔(ざんげ)

          我が一角

          苦心3年目にしてやうやく花開く。 苦しみの果ての途中に、何かをつかんだか、本人もいざ知らず。ただただ、思いの果てに手だけを握りしめていた。 動揺する本心とは裏腹に、心の表向きは、実にあっさりとしたものだった。 盲目なる戦士よ。 あなたの出身は何処か。 はたまた、彼の母はまだ存命か。 私はあなたを、ただのこれ一つさえも、知る由もないが、あなたの卓越した所以、その過程の苦しみだけは、あなたの手を通して伝わったのだ。 私の野望はただ一つ。平和の統一なるが、あなたの手はすでに平

          我が一角

          逃走と闘争

          洞察、盲殺、掘削し、頭部朦朧。混乱に乗じ、頭上へと高く舞い上がった。お前はもう、2、3歩先を行く……。 今度は……、 ハイブランドなお前を、空中から……、心から見下してやる。 したり顔な“お前”は、すぐさま右側の頬だけが上がり、引きつったような顔になった。 男にくっ付くのが(男にくっついているところを見られるのが)、大好きな“お前”は、今頃どこを『彷徨っている』? 怪人二十面相もビックリだ。 優と劣を感覚として、把握する。 「メリットは、これと、これとで……。デメリットは

          逃走と闘争

          車椅子

          車いすをそっと漕ぎ、いつの間にか傍にいた。 あなたのうつろな目は何を意味しているのだろう。いつもよりも認知症で、いつもよりも不自然な顔。苦しそうなのを我慢している顔。いつも苦しいだけだから、それよりももっと苦しい顔。 見ていられず、顔を背けたら、車いすに乗っているはずの動くことのない足までも震えていた。 長年の経験とは、自分の直観とは裏腹に、自然と体に直帰するもののようで、あなたの体はすっかりと不自然さを仰ぎ切っていた。どうやらあなたは、いつもより悲しい感情だと、いつも

          僅かな真実

          あなたは偏(ひとえ)に何と言うの 手を引かれて連れて行かれた先は眩しい 「ただ……」と思うがままに 苦しむあなたの右手 戸惑う僕の足を見、 あなたは背中を見せつけるが、苦い様子 細い眼を見ると思い出した 昔の僕は、そうなるはずだった、と 神経質なあなたはあなた自身の体の虜 待ち続ける、それは自分の自由の犠牲で あなたと共に戸惑うはずの僕は あなたが来た、と思ったら残像で 必要以上に思い続けるばかりか あなたの行方はいつも夢の中へと紛れ込む あなたの行方は何処。しかし感謝す

          僅かな真実

          ある戦士の歌

           「難しい。」と、頭の中が混雑する日は、我が人生において、ひとしおである。  「ぐう」と、あちらこちらから握りしめ続けられているような時間、あるいは期間というのは、食材に対し、塩をひと降りするようなもので、過ぎ去れば意外と人生のアクセントであったのだった。  今、現在のあなたの頭の中に、アクセントをアクセントと捉える技能、そして懐の奥深さ・引き出しの種類や数は有り余っているのだろうか。はたまた、拵(こしら)えている途中であるのだろうか。  苦しさの中にある時は、その気温、そ

          ある戦士の歌

          重たいあなたの心は、どうやら温かかったらしい

          あなたが思うこと、それは、あるいは、重たいことでしょうか。 ぼくは、自分自身の思考で、自分自身を、深く・深くまで追い込むのだが、かつてのあなたは、ぼくと同じのでしょうか。あなたのあなた自身を思い浮かべるその顔は、、、どうやら、その表情をする、あなたは、ぼくと反対側の暗い辺たりにいたらしい。 牢屋に入っている囚人を思い浮かべたことがある。 その時、その彼は両手首を、「上」に繋がれていた。 繋がれていると、鉄の錆びたような「音」と「匂い」がぼくの心を物臭さにつかむようで、頭が重

          重たいあなたの心は、どうやら温かかったらしい

          あなたは今、何を思うのだろうか

          「ぐっと手を握るんです。そうすると、じわじわーっと掌から湧き出てくる。それをそーっと取り去って、そのあとにもう一度、手を握りしめます。爪が食い込む音。それを、海辺で波がさざなうように耳元で聞く。じーっと聞く。そうすると何かが見えてきます。その見えてきたものは、遠い幻の島のようで、あるいはどこか遠い遠い国のようで、はたまた宇宙の果ての名前も知らない惑星のようでもある。それが見え始めたとき、パンっと弾けるような音がします……」 目が覚めると、いつもよりも頭がすっきりとしていて昨

          あなたは今、何を思うのだろうか

          才能④

          「どうしたの?」 それまでの彼女と反転して、ふいにぼくに対して優しさが注がれた。それは、それまで棘のついた言葉しかなかった中に、突然手を差し伸べられた瞬間だった。急に投げかけられる棘の外された言葉に対して、ぼくの頭はついていけなかった。 でも、感じたのは、少なからず彼女は「棘を取った」のではなく、「棘をつけることができなかった」ということ。それは彼女が意図せず出した助け舟に等しく、彼女の部分的な優しさを意味していた。 それでもぼくは、今日のそれまでの彼女との過程において

          才能③

          久しぶりに会った彼女は、やたらに赤い服を着ていたんだ。 それは目にとても映える赤。反射した光が想像以上に眩しい。それに加えて彼女のショートヘアがきっちりと決まり過ぎていて、まるで小さいものがだれかの攻撃に過敏になって、襲われないように威嚇しているみたいだ。 だれかが誰かを威嚇するとき。それは事前の攻撃の集積という必死に集めたデータの中で、その人がその人自身の判断で敵が近くにいる、と指示を下した結果であった。 そんな彼女の語尾に注目して、彼女から発せられる言葉の数々を聞い

          才能②

          あの子の名前をぼくは覚えられない。 誰かに彼女の名前を聞かれたときに彼女の名前を想い出そうとすると、毎回のように「あれ、なんていうんだっけ。」となってしまう。 なぜ、そういう現象が起きてしまうのか。 ぼくは彼女に声を掛けるとき、彼女の名前を呼ばない。 では、ぼくがいつも彼女を呼ぶときはどうしているか、というと、それはその日によって違うのだ。 彼女には、その日ごとのあだ名がある。 それはときに「ぴこぴこ丸」であったり、ときに「出家侍」であったりする。 それを聞いた

          才能①

          人間において、「才能の差」というのは、少なからずあるのかもしれないと思う、今日この頃。 たとえば、あの子が眠るとき。 そのときは静かにスッと訪れ、彼女はいつの間にか眠りに落ちている。 知らぬが仏というように、周りの恐慌を知らぬ純粋無垢なあの子の寝顔は、あの子自身の眠りの深さをさらにさらにと手繰り寄せる。 では、ぼくはどうだろうか。 ぼくはそんな彼女の眠りを毎回見届けている。それはぼくの役目であり、それはぼくにとってはあまり価値が無いことのように感じる。 それは横断