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脱喪失

元あったものが、無くなるのは非常に寂しい。
無くしたものが、思い入れがあるものであればあるほど、悔しいような心に穴が開いたような気持ちが、浮き出ては消え、浮き出ては消えする。ものを思い涙する他人もいるだろう。寂しさの境地とはいかなるものであるのか。
手を握って砂をすくう。そうした時に、さらさらと指の股から、落ちゆくものがある。さらさらとし過ぎていて、すくえないのか、手にはすくえない、義理だったのか。どうにか、こうにかわからんが、目にすると、とても儚いものである。
横を自動車が通り過ぎる。無造作に通り過ぎる、慌てて通り過ぎる。非常に機械的であり、好ましくない。
震災があった。その後を見た。景色は無い。面影がない。見るも無残である。相当に悲しい。
元あったところに、元のものがない。違和感を覚える。その違和感を伝えようと試みるが、あまりに拙く、これまた、機械的なのである。