いしや

読書が好きです。

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脱喪失

元あったものが、無くなるのは非常に寂しい。 無くしたものが、思い入れがあるものであればあるほど、悔しいような心に穴が開いたような気持ちが、浮き出ては消え、浮き出…

いしや
19時間前

グルグルコンビニ

車でコンビニに来た。 駐車場はいつものように、やや端に止める。ここは、邪魔じゃない場所。いつも居やすい。 コンビニの中を回る。グルグル、と入念に。他の人より、長…

いしや
2週間前

3人

うつ向いて歩いていた。暗いトンネルの中のようだ。気分が滅入る。歩くときに右足を出すのは、どういう感覚だっけ。と、うろ覚えになる。1歩、2歩。そういうことを考えてい…

いしや
4週間前

浮沈ありし王者生還

物事の通りとは、いかなる時も無残であるべし。 もし、仮にであるが、あなたがこの世に生を受けた当初から、あらゆる叡智・権力を所有していたとしよう。 さうした時、あ…

いしや
2年前
2

傷有り、横たわりにより、彼盲目、女知らず

知らない。知らん。知りたくない。知る?でも、知りたくないような……。そうは言っても、そう思うこともぼくの我がままなのか? このように、ぼくは、ぼくの中での言い訳…

いしや
2年前
3

懺悔(ざんげ)

寒い、と思ったら、部屋の中だった。 誰もいない。そう思う。 でも右側を見ると、ひとりだけいるみたいだった。 もう、ぼんやりしてほぼ見えない。見覚えがあるような、な…

いしや
2年前

我が一角

苦心3年目にしてやうやく花開く。 苦しみの果ての途中に、何かをつかんだか、本人もいざ知らず。ただただ、思いの果てに手だけを握りしめていた。 動揺する本心とは裏腹に…

いしや
2年前

逃走と闘争

洞察、盲殺、掘削し、頭部朦朧。混乱に乗じ、頭上へと高く舞い上がった。お前はもう、2、3歩先を行く……。 今度は……、 ハイブランドなお前を、空中から……、心から見…

いしや
2年前
1

車椅子

車いすをそっと漕ぎ、いつの間にか傍にいた。 あなたのうつろな目は何を意味しているのだろう。いつもよりも認知症で、いつもよりも不自然な顔。苦しそうなのを我慢してい…

いしや
2年前
1

僅かな真実

あなたは偏(ひとえ)に何と言うの 手を引かれて連れて行かれた先は眩しい 「ただ……」と思うがままに 苦しむあなたの右手 戸惑う僕の足を見、 あなたは背中を見せつける…

いしや
2年前
1

ある戦士の歌

 「難しい。」と、頭の中が混雑する日は、我が人生において、ひとしおである。  「ぐう」と、あちらこちらから握りしめ続けられているような時間、あるいは期間というの…

いしや
2年前

重たいあなたの心は、どうやら温かかったらしい

あなたが思うこと、それは、あるいは、重たいことでしょうか。 ぼくは、自分自身の思考で、自分自身を、深く・深くまで追い込むのだが、かつてのあなたは、ぼくと同じので…

いしや
2年前
1

あなたは今、何を思うのだろうか

「ぐっと手を握るんです。そうすると、じわじわーっと掌から湧き出てくる。それをそーっと取り去って、そのあとにもう一度、手を握りしめます。爪が食い込む音。それを、海…

いしや
3年前
3

才能④

「どうしたの?」 それまでの彼女と反転して、ふいにぼくに対して優しさが注がれた。それは、それまで棘のついた言葉しかなかった中に、突然手を差し伸べられた瞬間だった…

いしや
4年前
1

才能③

久しぶりに会った彼女は、やたらに赤い服を着ていたんだ。 それは目にとても映える赤。反射した光が想像以上に眩しい。それに加えて彼女のショートヘアがきっちりと決まり…

いしや
4年前
1

才能②

あの子の名前をぼくは覚えられない。 誰かに彼女の名前を聞かれたときに彼女の名前を想い出そうとすると、毎回のように「あれ、なんていうんだっけ。」となってしまう。 …

いしや
4年前
1
脱喪失

脱喪失

元あったものが、無くなるのは非常に寂しい。
無くしたものが、思い入れがあるものであればあるほど、悔しいような心に穴が開いたような気持ちが、浮き出ては消え、浮き出ては消えする。ものを思い涙する他人もいるだろう。寂しさの境地とはいかなるものであるのか。
手を握って砂をすくう。そうした時に、さらさらと指の股から、落ちゆくものがある。さらさらとし過ぎていて、すくえないのか、手にはすくえない、義理だったのか

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グルグルコンビニ

グルグルコンビニ

車でコンビニに来た。

駐車場はいつものように、やや端に止める。ここは、邪魔じゃない場所。いつも居やすい。
コンビニの中を回る。グルグル、と入念に。他の人より、長く居座る。迷惑より、欲が勝つ。良くない、良くない。
ヨーグルト、牛乳。少し高いが、買いやすい。
店内を一回り、二回り、だいたい回ることが出来た。上出来、上出来。
グルグル回る、グルグルと。

ふと、思う。
ぼくはいつも、同じところをグルグ

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3人

うつ向いて歩いていた。暗いトンネルの中のようだ。気分が滅入る。歩くときに右足を出すのは、どういう感覚だっけ。と、うろ覚えになる。1歩、2歩。そういうことを考えている間に歩いた距離は、相当になった。
右手にコンビニがある。どうしようか。通り過ぎようか、何かひとつ買い物をしようか。そう考えていると、どうでもよくなって、通り過ぎた。周りが暗すぎる。明るい所に行こう、と思った。
ふと、右後ろを見ると、人が

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浮沈ありし王者生還

浮沈ありし王者生還

物事の通りとは、いかなる時も無残であるべし。

もし、仮にであるが、あなたがこの世に生を受けた当初から、あらゆる叡智・権力を所有していたとしよう。

さうした時、あなたは、あらゆる万物を越え、功を為すとするであろうが、そこに意味は存在し得ない。

なぜなら、当然の達成であるに過ぎないから。

「当然」は人の心を動かさない。

そう言ったものを、一度として外さずとも、誠心誠意ものごとに精進し、自らの

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傷有り、横たわりにより、彼盲目、女知らず

傷有り、横たわりにより、彼盲目、女知らず

知らない。知らん。知りたくない。知る?でも、知りたくないような……。そうは言っても、そう思うこともぼくの我がままなのか?
このように、ぼくは、ぼくの中での言い訳を並べ立ててみたが、それでも、ぼくには理解できない。

彼女の体の、心の、島のようにも見える傷。ぼくの目には一際、目立つ。最初から、それしか目に入らないぐらいに。

でも、その傷は氷山の一角。見えていた部分は、ただの一握りでしかなく、ごく一

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懺悔(ざんげ)

懺悔(ざんげ)

寒い、と思ったら、部屋の中だった。
誰もいない。そう思う。
でも右側を見ると、ひとりだけいるみたいだった。
もう、ぼんやりしてほぼ見えない。見覚えがあるような、ないような。元気に見えるような、元気がないような。苦しんでいるような、苦しんでいないような。
私の手は、もうすでにしおれていて、力を入れようとしても、できなかった。左手も、足もやってみたが、ひとつも力が入らなかった。
この前、目が開いたとき

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我が一角

我が一角

苦心3年目にしてやうやく花開く。

苦しみの果ての途中に、何かをつかんだか、本人もいざ知らず。ただただ、思いの果てに手だけを握りしめていた。
動揺する本心とは裏腹に、心の表向きは、実にあっさりとしたものだった。

盲目なる戦士よ。
あなたの出身は何処か。
はたまた、彼の母はまだ存命か。
私はあなたを、ただのこれ一つさえも、知る由もないが、あなたの卓越した所以、その過程の苦しみだけは、あなたの手を通

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逃走と闘争

逃走と闘争

洞察、盲殺、掘削し、頭部朦朧。混乱に乗じ、頭上へと高く舞い上がった。お前はもう、2、3歩先を行く……。

今度は……、
ハイブランドなお前を、空中から……、心から見下してやる。
したり顔な“お前”は、すぐさま右側の頬だけが上がり、引きつったような顔になった。
男にくっ付くのが(男にくっついているところを見られるのが)、大好きな“お前”は、今頃どこを『彷徨っている』?
怪人二十面相もビックリだ。

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車椅子

車椅子

車いすをそっと漕ぎ、いつの間にか傍にいた。

あなたのうつろな目は何を意味しているのだろう。いつもよりも認知症で、いつもよりも不自然な顔。苦しそうなのを我慢している顔。いつも苦しいだけだから、それよりももっと苦しい顔。

見ていられず、顔を背けたら、車いすに乗っているはずの動くことのない足までも震えていた。

長年の経験とは、自分の直観とは裏腹に、自然と体に直帰するもののようで、あなたの体はすっか

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僅かな真実

僅かな真実

あなたは偏(ひとえ)に何と言うの
手を引かれて連れて行かれた先は眩しい
「ただ……」と思うがままに 苦しむあなたの右手
戸惑う僕の足を見、 あなたは背中を見せつけるが、苦い様子
細い眼を見ると思い出した 昔の僕は、そうなるはずだった、と

神経質なあなたはあなた自身の体の虜
待ち続ける、それは自分の自由の犠牲で
あなたと共に戸惑うはずの僕は あなたが来た、と思ったら残像で
必要以上に思い続けるばか

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ある戦士の歌

ある戦士の歌

 「難しい。」と、頭の中が混雑する日は、我が人生において、ひとしおである。
 「ぐう」と、あちらこちらから握りしめ続けられているような時間、あるいは期間というのは、食材に対し、塩をひと降りするようなもので、過ぎ去れば意外と人生のアクセントであったのだった。
 今、現在のあなたの頭の中に、アクセントをアクセントと捉える技能、そして懐の奥深さ・引き出しの種類や数は有り余っているのだろうか。はたまた、拵

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重たいあなたの心は、どうやら温かかったらしい

重たいあなたの心は、どうやら温かかったらしい

あなたが思うこと、それは、あるいは、重たいことでしょうか。
ぼくは、自分自身の思考で、自分自身を、深く・深くまで追い込むのだが、かつてのあなたは、ぼくと同じのでしょうか。あなたのあなた自身を思い浮かべるその顔は、、、どうやら、その表情をする、あなたは、ぼくと反対側の暗い辺たりにいたらしい。

牢屋に入っている囚人を思い浮かべたことがある。
その時、その彼は両手首を、「上」に繋がれていた。
繋がれて

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あなたは今、何を思うのだろうか

あなたは今、何を思うのだろうか

「ぐっと手を握るんです。そうすると、じわじわーっと掌から湧き出てくる。それをそーっと取り去って、そのあとにもう一度、手を握りしめます。爪が食い込む音。それを、海辺で波がさざなうように耳元で聞く。じーっと聞く。そうすると何かが見えてきます。その見えてきたものは、遠い幻の島のようで、あるいはどこか遠い遠い国のようで、はたまた宇宙の果ての名前も知らない惑星のようでもある。それが見え始めたとき、パンっと弾

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才能④

才能④

「どうしたの?」

それまでの彼女と反転して、ふいにぼくに対して優しさが注がれた。それは、それまで棘のついた言葉しかなかった中に、突然手を差し伸べられた瞬間だった。急に投げかけられる棘の外された言葉に対して、ぼくの頭はついていけなかった。

でも、感じたのは、少なからず彼女は「棘を取った」のではなく、「棘をつけることができなかった」ということ。それは彼女が意図せず出した助け舟に等しく、彼女の部分的

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才能③

才能③

久しぶりに会った彼女は、やたらに赤い服を着ていたんだ。

それは目にとても映える赤。反射した光が想像以上に眩しい。それに加えて彼女のショートヘアがきっちりと決まり過ぎていて、まるで小さいものがだれかの攻撃に過敏になって、襲われないように威嚇しているみたいだ。

だれかが誰かを威嚇するとき。それは事前の攻撃の集積という必死に集めたデータの中で、その人がその人自身の判断で敵が近くにいる、と指示を下した

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才能②

才能②

あの子の名前をぼくは覚えられない。

誰かに彼女の名前を聞かれたときに彼女の名前を想い出そうとすると、毎回のように「あれ、なんていうんだっけ。」となってしまう。

なぜ、そういう現象が起きてしまうのか。

ぼくは彼女に声を掛けるとき、彼女の名前を呼ばない。

では、ぼくがいつも彼女を呼ぶときはどうしているか、というと、それはその日によって違うのだ。

彼女には、その日ごとのあだ名がある。

それは

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