コロナが流行して間もなく、自宅での子育て時間が一気に増えた人も多かった。ある建築士は、家族がストレスなく過ごせるように引っ越しを決意。こだわったのは、子どもも親も、双方が自宅の時間をストレスフリーで楽しめるような“おおらかな空間づくり”。設計から施工まで自分たちで行うHandiHouse project(ハンディハウスプロジェクト)を創立した、建築士の自宅を訪ねてみた。
夫婦が一目ぼれ 都心でも自然と一体化した物件
坂田さんの家は、珍しい作りのテラスハウスだった。外階段を上った先にある玄関を入ると、広めの書斎と浴室。2階へ上がると、広いワンルームの真ん中には中庭が。奥へ進むと、木々が生い茂る大きな庭が広がる。傾斜地に立てられているため、最上階と庭が繋がっている面白い作りの物件だった。それにしても、東急東横線沿いの駅から徒歩10分ほどの街中にあり、緑豊かな広い庭付きの家とは、なんとも羨ましい。
小さな子どもと楽しむ暮らしを優先順位の上位にしているため、玄関一つでもこうした視点が取り入れられている。玄関と同じ階には浴室もあり、汚れたものをすぐ洗えるようになっているのも、家族のニーズに合っている。
子どもと親のニーズ 双方が折り合う空間でストレスない暮らしを実現
そもそも2年前、当時妊娠中の久美子さんと4歳だった娘さんが、コロナで外出できずに自宅にこもる日々を送った経験が、この物件の購入を後押しした。
そんな久美子さんの思いもあって、坂田さんは、子どもの年齢に合わせた家づくりを目指した。設計やデザイン、キッチンの造作は自身が手がけ、2階の壁の左官と床のオイル塗装は娘や妻も一緒にDIYした。
今のこの家のコンセプトは、「6歳と2歳と暮らす家」
将来のことは考えず、今の子どもの年齢や家族の状況に合わせた家づくりをすると、親も子もストレスフリーで自宅での時間を楽しめると夫婦は話す。
コンセプトに繋がる工夫の一つが、子ども部屋の床をベニヤ板にしたこと。汚れたり、飽きたら貼り替えられるように、敢えて安価なベニヤを使った。子どもたちは、床で絵具を自由に使ったり、創作活動などを熱心にやっているという。また、配線をいつでも変えられるように、リビングの天井はビスで止めるだけにして、空間に余白を残した。
家づくりは子どものニーズに合わせるだけではなく、自分たち大人もリラックスできる空間にすると、より生活を楽しめると坂田さん。
浴室は、既存のユニットバスを撤去し、在来工法で自然由来の素材を取り入れて自分好みの場所につくり変えた。
すべて新しいものに変えず、古くても良いものはそのまま取り入れる
坂田さんの家は、ピカピカに新しくつくり変えたリノベーションではなく、何年も前から住んでいたかのような趣がある空間だった。以前も来たことがあるような、なんとも落ち着く気持ちになり居心地がよかった。要所要所に使われた、年季の入った家具や材質の効果もあるのかもしれない。
どういう暮らしを望んでいるのか 細かい点も建築士と話すことが大切
建築士のお宅を拝見して、参考になる点が多々あり今後の自宅改修の夢も膨らんだ。さて、家づくりを依頼するときには、どういう点を建築士に伝えるのが良いのだろうか?
家にも、自分にも、家族に対しても、“おおらかさ”というのは日々の暮らしに必要不可欠なのかもしれない。家に対して寛容になることで暮らしがもっと豊かになる。住む人も作る人も一緒に家づくりをすることで家への理解が深まる。ハンディハウスプロジェクトが大事にしていることが、坂田さんの自宅でも体現されているように感じた。