プロローグ
白くしなやかな手が金属製のペンを革へと滑らせる。
じゅう、という音を立て、なんともいえない匂いが立ち上る。
部屋の中はちょっとした工房と言える風景だ。
染めの終わった革は吊るされて今か今かと出番を待っている。
棚には革がぎっしり詰められている。
しかし、けして乱雑とも言えない詰め方だった。
「ふぅ…」
白くしなやかな手の持ち主は顔を上げて、メガネの位置を直した。
髪の毛を後頭部でまとめ、シュシュでさらにまとめている様子を見ると、
おそらくかなりの長髪だと伺うことが出来た。
「終わったかい?くーさん」
男性の声が工房に響く。
「うん。とりあえず当面は大丈夫」
くーさんと呼ばれた女性が応えた。
女性の名前はクー。
男性の名前はカズー。
クーが作業していた机から革製の札をまとめ、もち上げた時だった。
「御用でござる!!」
少年とも少女ともつかない声が工房に響いた。
1 来客
2 この世界の仕組み
3 あの日の天災
4 来客の依頼
5 移動手段
6 ようこそ赤城村へ
7 事件現場
8 異常事態
9 万能じゃない
10 能力の代償
11 ヒント
12 解決の糸口
13 事件のあらまし
最終回 エピローグ
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