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2 この世界の仕組み

きぃきぃとわずかに音を立ててカズーが来客に近づく。
来客はこの時初めてカズーが車椅子くるまいすに乗っていたと気が付いた。

「はい、ちょっとマテ茶」
「ちょっとまてちゃ?」
「飲むと落ち着いて、ちょっと待てるから、ちょっとマテ茶」

マテ茶にそんな効能こうのうなどあっただろうか?
一口飲むと、なんとも言えない渋みが鼻に抜けていく。

「…ちょっと待てそう…です」

気が付くと、そんな言葉が来客の口をついて出てきた。

「…ひらめいた!マテ貝のスープも同じ効能があるかもしれないな?!」

クーが話しながらテーブルに歩いてきた。

「クーさん、ここ群馬」
「だが、あの時以来地理関係はめちゃくちゃだ、どこかを探せば…」

「…ちょっと待てそ…いや、待てない!」

いつも通りと言わんばかりの会話に来客が言葉を挟む。

「なんでウサギに角が生えてるんですか?!」

クーとカズーが目を点のようにして、同時に来客に顔を向けた。

「そっちかぁ…」

カズーがため息交じりに言う。

「…トニカクを知らない?もしや、コトナリも?」
「コトナリ?」
「…あの日の天災も…?」

クーと来客が言葉を交わすも、来客は変わらず疑問の顔を張り付けている。

「おそらく貴方あなたがここに来た理由もあるだろうから説明しよう」

一拍置いて、クーが話を始める。

「異なる意味のものが、言葉から一つにまとまり、事象、つまり事を成す」

クーが視線を隅っこで座っているウサギに向ける。

「他にも意味があるが、結果、不思議なことが起こった…それがコトナリ」
「そんなことが…」
「実際こいつはここにいる」

ウサギはその存在を主張するように手をピシッと上げた。

「とにかく、という言葉があるだろう?」
「はい、たしか漢字で書くと、『兎に角』…あっ!」
「そういうことだ」

「では…あの日の天災…とは?」

テーブルの脇にいたカズーがちょっと困った顔をし、
クーはため息をついた。

「あまりいい話ではないから心して聞いてくれ」



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イラスト:https://twitter.com/ano_ko



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