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8 異常事態

「これは…」
「倒れている…いや、寝ている、かな?」
 
クーとカズーが赤木に確かめる。
赤木はこくりとうなずいた。
 
「全部で8人…全員、息はあるようです」
 
よく見ると子どもたちの胸や肩は上下している。
時折誰かのうめき声が聞こえる。
そして、巨樹きょじゅの根元に一人。
 
「あの子が中心…つまりあれがご神木で合ってるか?」
「そうです」
「とりあえず、近づいてみないと分からないな…」
 
覚悟かくごを決めたような面立おもだちでクーがつぶやく。
 
「コトナリに間違いないな?トニー」
「アイアイサー!」
「その返しは間違っているぞ…カズー、あれを」
「ほいさ」
 
懐からカズーが取り出したのは、小さな貝殻のようなものだった。
 
「トニカクのツノ。これを手にして…」
「それも魔法のアイテムなんですか?」
「眠気が来たら、痛みで我慢する」
「はぁ」
 
当然のようにクーが言う。
赤木は小さくため息をついた。
 
クーが一歩中心に近づく。
 
「みんな寝ている…が、熟睡じゅくすいという感じじゃない…?」
 
呟いてまた一歩進む。
ふと、何かに気づいたように顔を上げる。
 
「くーさん?」
「何か聞こえたような…」
「え?…ホントだ。…歌?音楽?みたいな…確かに説明の通りだね」
 
クーはご神木の目の前まで歩みを進める。
足元には子どもが寝ている。
 
「…ん?何か握りしめて……っ?!」
 
そう呟いたクーの体がぐらりと揺れた。
 
「クーさん?!」
「くーさん一回戻って!」
 
「いや、大丈夫だ」
 
よく見るとクーの手からはひとすじの赤い液体が落ちている。
 
「だが…たしかにこれは異常事態だな」
 
 
 
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イラスト:https://twitter.com/ano_ko

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