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5 移動手段

「ところで赤木さん」
 
店から一歩出たところでカズーがたずねる。
カズーを挟んでクー、赤木が立つ。
 
「どうやってここに来たんですか?」
「そうだ、私も不思議だった。」
「ここに来るまでモンスターがいたと思いますけど」
 
赤木がちょっと困った顔をする。
 
「えっとそれは…その…トニーでしたっけ?」
「こいつか?」
 
クーがウサギを指さす。
今はクーの腕の中にちゃっかり納まっている。
 
「はい、その子が連れてきてくれたといいますか」
「礼なら無用だぜぃ!」
「そういうヤジは要らない」
 
そう言いつつも、クーはトニーのおでこをでる。
 
「二人で途中のトニカクを振り切ってきました。」
「へぇ…こいつがねえ」
「まぁ、色々…ツッコミどころ満載まんさいでしたが…」
「コトナリなんてそんなものだ」
 
「それで…どうやって赤城村まで行くの?」
 
カズーがショルダーバッグを肩にかけながら言った。
 
「ここはシルフで行こう」
 
その言葉を聞いてカズーの顔が引きつる。
 
「しるふ…?」
「風の精霊せいれいだ」
「へぇ、空中散歩ですか。優雅ゆうがですね…え?」
 
ふとカズーの顔に気が付いた赤木が言葉を止める。
 
「どっちにしても試運転は必要だろう」
 
ごそごそとクーが腰のあたりを探り、革製の札を出した。
 
「せ、せめて店長のアイテムにしようよ」
「そうも言ってられない。あれは貴重きちょうなんだ」
「あの…そんなに危ないものなんですか?」
 
その言葉にカズーが赤木を見る。
もはやカズーは青というか赤というか、という顔色だった。
 
「スカイダイビングしてる人の動画って見たことないですか?!」
「ああ、たしかに服とかはためいたり…」
 
はた、と赤木が何かに気が付いた。
 
「顔の肉がべろべろ…みたいな…」
 
赤木の額にじわじわと汗がにじむ。
 
「なぁに、アカギの加護かごがあるさ」
「ちょちょ、心の準備が出来てないよくーさん…うわ?!」
 
足元から強風が巻き起こる。
 
「ただの力技じゃないですかぁああああああああ…」
 
赤木が叫び、その声が遠くなる。
その様子は飛ぶ、というより飛ばされるという表現方法が正しかった――。





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