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エピローグ

「えー?じゃあうたたねって歌う種じゃないの?」
 
アタルは無邪気むじゃきにクーと言葉を交わしていた。
 
「そうだ。うとうとと、座ったまま寝てしまうような様子のことだ」
「なーんだ、新しい植物なら、僕の図鑑ずかんに書けたかもしれないのに」
 
ちょっと残念そうにアタルは言う。
2人ともなんとか『オキタナ』の木から降りてきていた。
村はちょっとした大騒ぎだ。
しかしご神木のそばに生えた木。
切り倒されることは無さそうだった。
 
「そもそもキミが持っていたのは本当にたねだったのか?」
「うーん、分かんない!」
「はぁ…」
 
子どもたちの『歌う種』というコトナリと、アカギの加護かご
そういう複雑な経緯けいいで事件は起きたのだった。
 
「アタル!良かった…!!」
「あ、お母さん!」
 
アタルは母とおぼしき人の元へけていく。
あの様子なら怪我も無さそうだ。
 
「起きた菜…定着しちゃうのかな…」
「赤城村という神域的なコロニーだからな…何があるかは分からない」
 
事件の大まかな特徴を記録していたカズーはくたびれた様子だった。
その後ろからトニーが付いてくる。

「ちなみにオキタナの効能は?」

クーが尋ねるとトニーが前足で顔をこすりながら答える。

「食してみたでござるが、ちょっとした苦みで目が覚めるで候」
「まさに起きた菜だな…」

子どもたちは各々迎えに来た家族と再会を果たす。
その様子を少し離れた所で二人と一匹は見守っていた。
 
「それに、あの子もそのままでいいのかな」
「子どもは七つになるまでは神、という言い伝えがある」
「安定すると力が薄くなるかもしれない、と」
「それに…身の回りの人と急に離される想いは私たちだけで良い」
「…そうだね」
 
その日の夜、ささやかな宴が開かれ、二人と一匹は店に帰った。
 
 
 
一週間後。
 
 
「荷物でござる!荷物でござる!!」
「赤木さんから荷物が届いたんだけど」
「赤城村名産、ウタタネのハーブティーとオキタナの青汁…」
「なんていうか…したたかだね」
 
 
 
 
 
―終―
 
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イラスト:https://twitter.com/ano_ko

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