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3 あの日の天災
「約3カ月前…4月1日。日付から『エイプリルフールの天災』とも言われる」
クーはひとつひとつ言葉を確かめるように話し出す。
来客もそのまとう雰囲気からゴクリとつばを飲んだ。
「その日、嘘がホントになって欲しいという願いが、沢山集まった。」
ひとくち、クーがマテ茶をのどに流し込む。
「結果、願いが叶い、天災が起こった。」
「願いが叶うって、一見いいことのように思えますが…」
「だが『死にたい』という願いもあれば『生きたい』という願いもある」
「例えば、医者は生かしたくて、患者は死にたいかもしれないですよね?」
カズーが補足説明をする。
その顔はやはりちょっと困った顔だ。
「そして、全国各地で自然災害も発生した。」
「この辺は地盤沈下でした。」
「それは聞いたことがあります…。台風並みの豪雨もあったとか」
「…そうか」
ため息に近いクーの吐息がまた宙に消える。
「つまり沢山の願いが叶う瞬間と、その後の自然災害で大量の死人が出た」
「それが天災…」
「いや、そんな単純なものでもなかった」
まだあるのか、と来客は目を見開く。
今までの話だけでも十二分に複雑だ。
「崩壊世界で残ったのはコトナリと、願いが叶った者とわずかな例外」
来客が部屋の隅のウサギに目をやる。
ウサギは器用に後ろ足で顔をかいていた。
その額にある角は下手をすれば人も殺せるだろう。
「願いが叶った者は、大体が能力者になった。」
「その能力者を中心にコロニーと呼ばれる団体が出来たんですよ。」
「じゃあこの建物の横の病院もですか?」
「…そうだな。」
「でも、ここも…患者もスタッフも、死人が沢山でした。」
それならばこんな空気にもなる。
来客は納得に納得を重ねたという顔をしていた。
「そして、能力者の一部はコトナリと共生し、研究している。」
クーはマテ茶をテーブルに置いて、来客に向き直る。
「改めて、私はコトナリ研究所附属商店副店長のクー。」
「助手のカズーでぇす。」
「そしてこいつはトニカクのトニーだ」
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