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スタートアップじゃない組織が、新規事業成功に向けて取り組んだ「メンバーが楽しんで働ける環境づくり」

みなさんはじめまして。Hamee株式会社Hamic事業部マネージャーの山本洋平と申します。

Hamic(Happy Mobile IoT Communication)は、IoT機器によるコミュニケーションを通して、皆さまの幸せに寄り添いたいという思いを込めた新規事業です。

これまでに、未就学児~小学校低学年児童を対象にした音声メッセージロボット「Hamic BEAR(はみっくベア)」、本格的なスマホデビューを控えた、小学生のためのプレスマホ「Hamic POCKET(ハミックポケット)」(2021年2月発売)などを開発しました。

今回はHamicシリーズを進化成長させるために創設されたばかりのHamic事業部の組織運営について、お話させていただきます。

新規事業ではあるがスタートアップではない

私も新規事業に携わるようになった最初の頃は成功したスタートアップの事例やリーンスタートアップのような書籍を参考にして進めており、実際多くのことを学び、実践してきました。

しかし、中には企業風土的にも組織体系的にもマインド的にも今の自分たちが実践するには現実的ではないものも少なくありませんでした。

なぜなら、Hameeはスタートアップ企業ではなく上場企業だからです。(上場企業であることが新規事業を成功させるのに有利か否かについては、今回のテーマから少しズレるので一旦置いときます)

Hamic事業部の創設メンバーの大半はプラットフォーム事業コマース事業など、既存事業に深く携わってきたメンバーで構成されています。また、Hamic事業部への異動の理由もさまざまであり、必ずしも提供するサービスやプロダクトに共感して、集まったメンバーばかりではありません。

なので、スタートアップのように、やりがい、張り詰めた空気、高い士気のもと、顧客の課題を解決することだけに目を向けて、ぐんぐん前に進めるなどと淡い期待を抱いていると、空回りする恐れがあります。

本当は新規事業を成功させるためにもプロダクトやサービスの進化成長だけに注力したいところですが、それぞれのバックボーンが違い、かつ新規事業に対する心構えや熱量もバラバラの状態で足元の組織運営を疎かにすると統制がとれなくなり、内部崩壊する可能性があります。

では、どうすればメンバーがやりがいとか関係なしに、パフォーマンスを発揮できるのでしょうか?事業への共感?それとも、インセンティブやストックオプションのようなものでしょうか?

もちろん、インセンティブやストックオプションのような類は一定の効果は見込めると思います。しかし、これらの取り組みは本質的な課題をうやむやにしたまま、強引にパフォーマンスを引き出すための苦肉の策であり、恒久策とはなりえません。

いきつくところは楽しいか・楽しくないか

私たちは自分の趣味に没頭している時、信じられないほどの集中力とクリエイティブ力を発揮しています。その時間を得るために、お金を払うことも惜しみません。そこにあるのは「楽しい」というシンプルな快感です。

「楽しい」という感覚を仕事に乗せたい。それこそがメンバーのパフォーマンスを最大限まで引き出すための根本的解決であり正当な策であると考えました。

私は新規事業をある種の育成ゲームと仮定し、メンバーであるプレイヤーの方々に飽きることなく、最後まで楽しんでもらうためには、どうするべきかを考えてみました。

そうすると、いわゆる一般的な会社組織の体制や求められるマインドは仕事を楽しむことを阻害するノイズが多く、多くの課題を抱いていることに気づきます。

よくある会社の組織体制では業務を部やチーム単位で細分化し、各領域の担当者が専門分野で作業します。組織はピラミッド構造になっていて、最終的には上長に判断を仰ぎます、上長には各領域の情報が集まってくるので、それを元に総合的な判断をくだします。

組織という観点で考えると、この仕組みは効率的で無駄がなく良い感じです。しかし、メンバーからすると自身の作業領域にしか興味を持つ必要がなく、事業全体への関心は薄れがちです。

なによりも最終的な判断は自身でなく上長に任せるという儀式は多かれ少なかれ、自分ごととして事業に取り組むマインドを弱め、本質的ではないところでの不要な駆け引きやわだかまりを生み出す温床になります。そして、これらは楽しいという感情にじわじわとダメージを与えていきます。

前置きが長くなりました。

要するにHamic事業部は、
メンバーが共通の進化目的を見据えた上で、各々仕事を楽しむ→仕事が楽しいと作業に没頭することができるのでアウトプットも意思決定も深いレベルのものができる→結果として、事業を成功に導く確率が高い、と仮説を立てました。

そのための具体策としてティール組織やホラクラシー組織の考え方を取り入れ、純粋に仕事を楽しめる環境づくりを目指しました。

今回はその中でも、3つのことに絞って話をさせていただきます。
 ・フラットな組織下でのロール駆動による運営(ホラクラシー組織)
・ 徹底した情報の見える化に基づくロールでの意思決定(セルフマネジメント)
・本来の自分の姿で仕事に挑むことを是とする組織文化の形成(ホールネスの醸成)

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(出典:ホラクラシー組織を知っていますか 役職や上下関係が存在しない新しい組織の形を解説|創業手帳

フラットな組織下でのロール駆動による運営

まず組織上の部署やチームをなくし、事業部直下に全てのメンバーを配置しました。そして、各メンバーの適性や要望を踏まえた上で、ロール(役割)を定義しました。

一見、従来のやり方と同じことのように思えますが、役割をもった組織に人を配置するのではなく、人に役割を付与することで、主体を組織から人にもっていき、日々状況が変わる新規事業の中で臨機応変に対応しやすくしています。

例えば、開発とマーケの兼任も部署で区切られている場合はどの部署に配置するのかという問題が発生しますが、ロール駆動の場合は開発とマーケの2つの役割を付与すれば良いだけです。

また、それぞれのメンバーは対等であり、各ロールの意思決定も現場で完結する仕組みにすることで、相手への忖度や合意形成の根回、意思決定プロセスの複雑さを解消し、あまり楽しくない仕事を減らします。

徹底した情報の見える化に基づくロールでの意思決定

事業を進めていると正解のない厳しい決断を迫られることもあります。しかし、そういう難しい判断は別として、普通に考えれば正解が限られているところで、明らかに不正解としか思えない意思決定が下されることがあります。なぜそのようなことが起こるのでしょうか?

これは意思決定者に能力やセンスがない場合よりも、上がってくる判断材料が足りない(または情報が偏っている)場合によく起きる気がします。

意思決定者である上長に情報を集約し、最終的な意思決定を委ねるのが従来のピラミッド型組織のでやり方ですが、これだと上長に広い情報収集力と多くの意思決定が集中し、絶えず決断を迫られることで、上長の精神状態によっては判断の質が不安定になることがあります。

それでも、現場の判断は担当領域だけの視点で下された判断になりがちなので、最終的には多くの情報を持った上長が総合的に判断を下すというのが、定石でした。

しかし、情報のオープンを徹底し、普段から追うべき指標を共有されていれば、自分のロールの判断は自分で完結したほうが、間違いは少なく、意思決定を分散することで、1つ1つの判断の質も上がります。
正しい情報が行き届き、きちんと考える時間と平常心があれば、1人の人間が多くの意思決定を行うより間違いは減ります。

ただし、意思決定する人はなるべく最小人数で行い、ロールの責任範囲も可能な限り明確にするよう注意してください。

意思決定の所在が曖昧だったり、判断するメンバーが大人数だったりすると、自分ごととして捉える意識が欠如し、集団浅慮(グループシンク)※に陥いる可能性があります。

※集団で合意形成をすることによって、かえって不合理な結論や行動を引き出してしまうこと。

本来の自分の姿で仕事に挑むことを是とする組織文化の形成

私たちは仕事とプライベートで別の顔を持っています。
これは生活のために働かなければならない中で、自己防衛に近い形で生み出されます。

上司の命令に従うため、同僚に迷惑をかけないため、歯車として余計な感情を殺すため、自身が会社の規範となるため。色々な要素から労働者としてのペルソナは形成されます。

それがうまく機能しているうちは良いのですが、プライベートの人格とのギャップが苦痛になってくると「仕事は生活のため仕方なくやっているが、何一つ楽しくない」という感情が生まれます。

本当は趣味のゲームを仲間とする時と同じマインドでやれたほうが、雑念なく仕事に没頭できるし、プライベートで会う人たちと同じ距離感で接した方が気楽です。

また、働く環境も自分がリラックスできる環境で、好きなものに囲まれながらやったほうが、楽しいです。

弊社会長の樋口はついに自身の執務室を茶室にしたのですが、これも仕事を楽しみながら没頭するという観点で生産性を高める素晴らしい取り組みだと思います。

国内の労働人口が徐々に減り続ける一方、同時にルーティンワークはAI(人工知能)による自動化によってなくなる流れが起きています。そのような中で人が働く時に求められるモノも、集団の歯車としてパフォーマンスを発揮することから、自身のクリエイティブ力を発揮することにシフトしつつあります。

そして、クリエイティブ力を発揮するために効果的な労働環境やマインドは、かつての歯車として効果的に機能するために用意されたモノとは違います。

Hamic事業部は新しい時代の流れを見据え、公私融合によって心理的安全性を高めながら事業の進化成長を推進していきます。

さいごに

今回はHamic事業部の組織運営について、どちらかといえば、実践的な部分より、基本的な考え方を中心にお話しさせていただきました。

まだ始まったばかりで色々と手探り状態ではありますが、事業の状態と情報が広く可視化されることで、メンバー一人ひとりが事業目線で物事を捉え、色々な施策を遠慮なく提案し、実行することが増えた気がします。

私自身も役割として、仕事を楽しむことを妨げるノイズを排除し、業務に没頭できるよう、今後もサポートしていけたらと思っています。

……とはいえ、肝心の事業内容に全く興味がなければ、仕事を楽しむのは難しいかなと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

また現在、Hamic事業部ではエンジニアを募集中です。私たちの事業に興味があり、一緒に仕事を楽しみたいと思った方はふるってご応募ください!

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PROFILE:山本 洋平(やまもと・ようへい)
Hamic事業部 マネージャー

ティール組織のマネージャーという自己矛盾した「ざんねんないきもの」。
Hamee(当時StrapyaNext)にエンジニアとして入社。ECの売上をスマホで確認できる「どこでも店長」、楽天の店舗URLからiOSアプリを自動生成する「ポケ店」の開発を経て、間接型物々交換サービス「Spirale」を立ち上げる。また、副業でレンジでチンする冷凍ドッグフードも製造/販売している。世の中を変えるようなプロダクトを生み出したい。

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