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僕の好きな詩について 現代詩 日本編

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僕の好きな詩について、言いたいことを言うnoteです。日本人の近現代詩に絞ってます。画像はネットから。問題があったらすぐ消しますので教えてください。
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#感想文

僕の好きな詩について 第四十一回 吉原幸子

僕の好きな詩について 第四十一回 吉原幸子

こんばんは。お寒いですね。風邪など召さないよう。。

僕の好きな詩について書くnote、第四十一回は「吉原幸子」さんです。

ではどうぞ。
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「驟雨」吉原幸子

それでも 愛してさえゐればいいのに
ふるさともない かみさまもない あたしたち
なぜ 立ちつくしてはいけないの
こんな黄いろい暗がりのまへに
けもののやうに
ここにゐるひとと 身をふれあって
つつましく

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僕の好きな詩について 第四十回 粕谷栄市

僕の好きな詩について 第四十回 粕谷栄市

こんばんは。僕の好きな詩について、第四十回は、散文詩の名手、粕谷栄市氏です。

ではどうぞ!
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「世界の構造」粕谷栄市

私は、「世界の構造」と言う書物を愛読している。もうずっと以前、田舎町の古物屋で、柄のとれた火桶と一緒に買わされたものだ。
ぼろぼろの表紙の分厚い本で、作者も、出版された所も判らない。ただその活字の形から、大体百年位昔のものと推定できるだけ

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僕の好きな詩について 第三十九回 石原吉郎

僕の好きな詩について 第三十九回 石原吉郎

おはようございます。僕の好きな詩についてお話しするnote、第三十九回は石原 吉郎氏でございます。

まずは詩をどうぞ。
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「伝説」石原吉郎

きみは花のような霧が

容赦なくかさなりおちて

ついに一枚の重量となるところから

あるき出すことができる

きみは数知れぬ麦が

いっせいにしごかれて

やがてひとすじの声となるところから

あるき出すことができる

きみ

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僕の好きな詩について 第三十八回 白石かずこ

僕の好きな詩について 第三十八回 白石かずこ

僕の好きな詩を紹介するノート、第三十八回は白石かずこさんです。

第三十一回で登場した北園克衛氏https://note.mu/hally10031003/n/nfe8d2899877d
が開催していたVOWのグループの一員で、流石の奔放さです。

では詩をどうぞ。
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「虎」白石かずこ

すると
虎は 彼でもなかった
私の 胸の部分の昨日から今日へと
山脈がよこたわり

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僕の好きな詩について 第三十七回 清水昶

ご無沙汰してます!忙しく中々更新できないでいた僕の好きな詩についてお話しするnote、第三十七回は清水 昶(しみずあきら)氏です。

まずは詩をどうぞ。
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「少年」清水昶

いのちを吸う泥田の深みから腰をあげ
鬚にまつわる陽射しをぬぐい
影の顔でふりむいた若い父
風土病から手をのばしまだ青いトマトを食べながら
声をたてずに笑っていた若い母
そのころからわたしは

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僕の好きな詩について第三十六回 田村隆一

僕の好きな詩について第三十六回 田村隆一

こんにちは!僕の好きな詩について語るnote第三十六回は田村 隆一氏です。
偉大なる詩人、だけではなくエラリー・クイーンやアガサ・クリスティの翻訳もされた方です。

ではどうぞ。
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「見えない木」 田村隆一

雪のうえに足跡があった
足跡を見て はじめてぼくは
小動物の 小鳥の 森のけものたちの
支配する世界を見た
たとえば一匹のりすである
その足跡は老いたにれの木

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僕の好きな詩について 第三十四回 新川和江

僕の好きな詩について 第三十四回 新川和江

こんにちは!僕の好きな詩についてお話しするnote、第三十四回は、新川和江(しんかわかずえ)さんです。

たおやかで、勁い美文を堪能してください。ではどうぞ。
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「母音――ある寂しい日私に与えて」
新川和江

信じていなさい
おまえののどとくちびるの温かさを
おまえが〈あ〉と言う時
どこかの暗い沼のふちの
葦のあいだで
澱んだ水が
〈あ〉
一万年にたったいちどの水泡(み

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僕の好きな詩について 第三十三回 最果タヒ

僕の好きな詩について 第三十三回 最果タヒ

こんにちは!僕の好きな詩を紹介するノート、矢継ぎ早の第三十三回は、今をときめく女性詩人「最果タヒ」さんです。

少し前に最新刊「天国と、とてつもない暇」を上梓されていました。

今回ご紹介するのは少し前の詩です。では。
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「光の匂い」最果タヒ

夜のあいだは、この都心の大気圏を、巨大なナイフが、羊羹みたいに切り離している。すきまに、宇宙からこぼれてきた透明の光が挟

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僕の好きな詩について 第三十一回 北園克衛

僕の好きな詩について 第三十一回 北園克衛

僕の好きな詩についてお話するnote、第三十一回は北園克衛です。

シュールでお洒落な北園ワールドをどうぞ。
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「黒い装置」北園克衛

黄いろい三角

黒い
真昼であつた

青い四角

黒い
孤独であつた

赤い円筒

黒い
距離であつた

黒い四角

黄いろい
朝食であつた

黒い円筒

赤い
散歩であつた

黒い三角

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僕の好きな詩について 第三十回 高見順

僕の好きな詩について 第三十回 高見順

僕の好きな詩についてお話するnote、第三十回は、高見順氏です。

小説家でもある氏の、詩をどうぞ。
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「電車の窓の外は」高見順

電車の窓の外は
光りにみち
喜びにみち
いきいきといきづいている
この世ともうお別れかと思うと
見なれた景色が
急に新鮮に見えてきた
この世が
人間も自然も
幸福にみちている
だのに私は死なねばならぬ
だのにこの世は実にしあわせそうだ

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僕の好きな詩について 第二十九回 八木重吉

僕の好きな詩について 第二十九回 八木重吉

こんばんは!僕の好きな詩について語るnote、第二十九回は、八木重吉氏です。

氏の詩は抜群に短いので、今回はたくさん掲載します。では。
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【美しい 夢】八木重吉

やぶれたこの 窓から
ゆふぐれ 街なみいろづいた 木をみたよる
ひさしぶりに 美しい夢をみた

【心 よ】

ほのかにも いろづいてゆく こころ
われながら あいらしいこころよ
ながれ ゆくものよ
さあ

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僕の好きな詩について 第二十八回 長田弘

毎週台風が来て、今年はあまりにも激しいですね。。皆さん大丈夫ですか?雨や風の実害もさることながら、気圧の変化でこころが安定しづらいように思います。

さて、僕の好きな詩について話すnote第二十八回は長田弘(おさだひろし)さんです。

それでは早速、詩をどうぞ。
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「最初の質問」長田弘

今日あなたは空を見上げましたか。
空は遠かったですか、近かったですか。

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僕の好きな詩について 第二十六回 宗左近

僕の好きな詩についてお話しするnote、第二十六回目は、宗 左近 氏です。

谷川俊太郎さんが若い頃好きだったと仰っていたので読んでみたら、なるほどなるほど、となりました。

では詩をどうぞ。
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「ひかり」宗左近

おぼえていておくれ坊や
あなたのお父さんが見つめている
ご近所のおばさんがそのおばさんのお子さんが
そして知らないおねえさんがかけよって
そしてみんな吸いこま

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僕の好きな詩について 第二十五回 大手拓次

僕の好きな詩について 第二十五回 大手拓次

僕の好きな詩について語るnote、第二十五回は大手拓次です。

ハードな雰囲気の詩がかっこよい詩人なのですが、あまり知られていないように思います。

ではまず詩をどうぞ。

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「黄金の闇」大手拓次

南がふいて

鳩の胸が光りにふるへ、

わたしの頭は醸された酒のやうに黴の花をはねのける。

赤い護謨のやうにおびえる唇が

力なげに、けれど親しげに内輪な歩みぶりをほのめか

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