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僕の好きな詩について 第四十一回 吉原幸子

こんばんは。お寒いですね。風邪など召さないよう。。

僕の好きな詩について書くnote、第四十一回は「吉原幸子」さんです。

ではどうぞ。
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「驟雨」吉原幸子

それでも 愛してさえゐればいいのに
ふるさともない かみさまもない あたしたち
なぜ 立ちつくしてはいけないの
こんな黄いろい暗がりのまへに
けもののやうに
ここにゐるひとと 身をふれあって
つつましく

突然に来て街を覆ふ ああ
まひるの夕やみ
春のゆふだち

遠い高台に
いくつものちひさな人生を充満して
いくつもの四角い建もの
陽がのこる そこにだけ
まるで地球の裏側から

あわただしく灯をともす 影のなかの窓々

いま
すさまじく
雨はすさまじく 音たてて降る
なぜ 信じてはいけないの こんな時
ここにゐぬ人の肌を感じて

生きてゐることを
生きてゐることを

吸ひこむ しぶきの冷たさと
白濁と

いのちは死にあふれてゐる
知りたい
死はいのちにあふれてゐるだらうか

うつくしいものたちは 似てゐるだらうか
愛と 不吉とが似てゐるやうに
あらしと 無言とが似てゐるやうに

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吉原さんは新川和江さんと組んで「ラ・メール」という女性詩人をフィーチャーした詩誌を発刊し、宮尾節子さんなどの才能を世に出しました。

ラ メールとはフランス語で「海」です。女性が全ての始まり、命にとっての始まりは海です。

その言葉のような包容力や、ある種の不可知な恐怖をもった詩人です。

他の作品も是非読んでみてください。
類い稀な魅力に出会えると思います。


#詩 #現代詩 #吉原幸子 #感想文 #驟雨

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