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僕の好きな詩について 第三十一回 北園克衛

僕の好きな詩についてお話するnote、第三十一回は北園克衛です。

シュールでお洒落な北園ワールドをどうぞ。
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「黒い装置」北園克衛

黄いろい三角

黒い
真昼であつた

青い四角

黒い
孤独であつた

赤い円筒

黒い
距離であつた

黒い四角

黄いろい
朝食であつた

黒い円筒

赤い
散歩であつた

黒い三角

青い
太陽であつた

黒いそれら

黒い
それら


「ガラスの環」北園克衛

白は四角
である
それはモロッコの朝
の薬
である

白は円
である
それはチュニスの太陽
である

白は三角
である
それはエジプトの夜
の祈祷
である

白は円錐
である
それはアリグザンドゥリアの悲劇である
すこし

である

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もう、真似できない世界です。

北園氏は詩人を下記の三つのタイプに分けています。

A 詩を進化させるために書く詩人
B 自己の趣味として、あるいは詩によって何かしら自己の感情を排出するために書く詩人
C 大衆、あるいは自分のグルウプの賞賛を得るために書く詩人(原文ママ)

そしてその中でAをもっとも尊敬と真の賞賛に値する存在とし、BとCは間接的、直接的にAを妨害する、としています。

中々耳の痛い話ですが、北園克衛氏のしてきたことを見れば、納得せざるを得ません。

北園氏は1902年(明治35年)の生まれ。日本ではじめてシュールレアリスムを標榜した詩人で、様々な実験的な詩を残しました。さらに、植物の和名など難しい漢字を使用した明治らしい・日本らしい詩や叙情的な詩も多数残しています。

下記の詩なんかも素敵です。

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「午前の肖像」北園克衛

太陽のガラスは
ニッケルの手摺に沿って光り
小さなポケットのなかの
僕のコイルは軟らかに
ほぐれてゆく朝

金網にもたれて
シシリイの海と
新しいイオンを思ひ
僕の踵は
ナフタリン球のやうに光る

Terebra toroquataの如き
思考の線は

僕のタイプライタアの上の
石膏の眼に属している

磨かれた日の雲のように
古典に近い釦のような人よ
水滴の
思ひとともに


僕はシャボンとコップを
タイルに置いた
純粋な日々のやうに
軽いプロペラアの響きにみちて

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お洒落、、

「午前の肖像」は昭和16年(1931)の発表なのでおよそ90年前の作品ですが、未だに色褪せない光を放っています。

デザイナー、装丁家、画家、写真家、図書館の館長と多岐にわたる活躍を残した北園克衛氏。

今僕のなかでもっとも熱い詩人です。

#詩 #現代詩 #感想文 #北園克衛 #黒い装置 #午前の肖像

いつか詩集を出したいと思っています。その資金に充てさせていただきますので、よろしければサポートをお願いいたします。