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僕の好きな詩について 第三十九回 石原吉郎
おはようございます。僕の好きな詩についてお話しするnote、第三十九回は石原 吉郎氏でございます。
まずは詩をどうぞ。
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「伝説」石原吉郎
きみは花のような霧が
容赦なくかさなりおちて
ついに一枚の重量となるところから
あるき出すことができる
きみは数知れぬ麦が
いっせいにしごかれて
やがてひとすじの声となるところから
あるき出すことができる
きみの右側を出て
ひだりへ移るしずかな影よ
生き死に似た食卓をまえに
日をめぐり
愛称をつたえ
すこやかな諧謔を
銀のようにうちならすとき
あるきつつとおく
きみは伝説である
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石原吉郎氏はH氏賞選考委員もされるほどの戦後詩を代表する大詩人の一人ですが(もちろんご本人もH氏賞受賞者)、あまり世間一般に知られていないような気がするのは僕だけでしょうか。僕も最近好きな詩人さんが好きだと言っていたので知りましたが、それまではお名前の字面を見たこともありませんでした。
石原氏は終戦の年から8年間、シベリア抑留を皮切りに、ソ連での勾留と労働を強制されます。氏の作品はそこで起きた様々な悲惨な出来事を背景にし芸術に昇華させるというもので、文学がなければ均衡が取れなかった精神であるようにしか見えません。
ところで、今なおジャンルに「戦後」がつく芸術って、詩と小説以外、他に何があるでしょうか。「はだしのゲン」を戦後漫画、と言うでしょうか。それだけ言葉は戦争を、時代を、表現しなければいけない重責を負っているのでしょうか。震災の際も無数の詩や文学が生まれました。言葉とは、人の心の衝撃を和らげるものなのでしょう。(台詞や歌詞も)
言葉は傷つけることもできるけれど、庇い、護り、癒すこともできる、音楽や絵画よりも(少なくとも僕ら日本人には)ダイレクトに心に塗ることができるガジェットなのかも知れません。
忙しいものよ皆、詩を書こう!と僕は訴えます。読むだけでなく書くことでも言葉の力は発動しますから。短く書ける詩を、心のために、お薦めします。
#詩 #現代詩 #感想文 #石原吉郎 #伝説
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